『文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜』

 異世界生活百七十日目 場所コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)


「それじゃあ……覚悟はいいか?」


 全員の首肯を確認すると同時に聖達に向かって【冥府之神】の即死耐性貫通即死を発動し、痛みを覚える間も無く命を奪う。

 全員の死体が屋敷の一室に転送されたのを確認し、ミントに俺を除く全員の魂が神界に揃っていることの確認と、転生の行程の再確認をした。


「…………さて、色々と対策を講じておかないとな。〝空間の隔たりを超えて干渉し交換せよ〟――〝空間交換エリア・チェンジ〟」


 屋敷から出た後、屋敷の上空に巨大な魔法陣が出現し、そこにヴァルジャ=ラ迷宮が周囲の土と共に転移してきた。

 ちなみにヴァルジャ=ラ迷宮があった場所にはミスリル製の鉱石盤を埋めたので崩落することはない。


「【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】」


 そして、そのまま空中に飛翔し、屋敷とヴァルジャ=ラ迷宮を周囲の森ごと虚数空間に閉じ込めた。


「【迷宮創世】、【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】! 我が求めに応じ、大迷宮を顕現せよ!!」


 そして、屋敷とヴァルジャ=ラ迷宮を取り込んだ地下大迷宮millefeuilleを超える巨大な迷宮を顕現し、俺はその最奥部――聖達の遺体が保管されている屋敷の一室とヴァルジャ=ラ迷宮の最奥部を融合した部屋へと転移した。


「さて……とりあえず、最後まで書きますか」


 旅の途中からこの異世界カオスでの旅の思い出を忘れないために書き綴ってきた名も無き物語。

 そこに最後の物語を綴り終えると、【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】で捕食し、もう一冊の名も無き物語を纏めた分厚い本を高槻斉人の手記が置いてあった場所に置く。


「高槻さん、貴方の願いは叶えましたよ……。さて、俺も願いを叶えたいが……その前に、【色慾ト強慾之淫魔神】!!」


 【色慾ト強慾之淫魔神】で分身体――カタリナ=ラファエルを作成する。


「それじゃあ、悪いがこの迷宮の管理と墓守を頼む」


「畏まりました……草子さん、私の分も地球での生活を楽しんでください」


 これから、カタリナ=ラファエルは超越者デスペラードに至り、この大迷宮を守るという算段になっている。

 彼女も俺とはいえ、随分大変な仕事を押し付けてしまったな……ってか、日給いくら払わないといけないのか? それが何年分??


「それじゃあ、帰るよ。後は頼んだ」


「畏まりました。さようなら、もう一人の私」


 【即死無効】を自分の意思で無効化し、【冥府之神】を発動する。

 異世界カオスの迷宮で命を落とした俺の魂は神界へと導かれ、そこで聖達と再会した――。



 〜数ヶ月後〜


「今回の実力テスト。一位は能因らしいぜ……って分かっていたけどさ。なんだよ、∞点って!!」


 異世界カオスから帰還してから数ヶ月後に行われた実力テスト。自重することなくテストを受けたら何故か∞点という点数を叩き出してしまった……というか、∞点って何!?


 ちなみに、クラスの上位十名の成績だが……。


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一位:能因草子 ∞点(満点を取った上で各教師が裏に書かれた問題に担当教諭が正解できなかったため)

二位:薗部美華 五教科合計496点

三位:逢坂詠 五教科合計495点

四位タイ:白崎華代 五教科合計490点

四位タイ:高野聖 五教科合計490点

六位:常若とこわか直葉すぐは(リーファ=ティル・ナ・ノーグ) 五教科合計486点

七位:相沢秀吉 五教科合計480点

八位:御先おさき稲荷いなり(クリプ) 五教科合計465点

九位:吉岡よしおか虹花にじか(アイリス=メージュネルト) 五教科合計460点

十位:薄荷はっか姫華じゅりあ (ジューリア=コルゥシカ)五教科合計463点

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 ……うん、なんか俺のパーティだった奴が全てを占めているんだが……ってか、クラス全員+αが転移したんだから、そりゃそうか。


 中学生とか異世界人とか高校レベルに対応できる知識を持ち合わせていないメンバーについては一人ずつ勉強を手伝った訳だが、まさか聖とかここまで成績が上がるとは思わなかったよ……。


「ちっ、平和ボケ日本人だけではなく小娘にまで負けるとは」


「……逢坂さん、私も一応元大学生で高校教員用の教育実習もしたんですよ? そして、貴方も今は高校生です」


 まあ、社会人と大学生なんだから高校のテストくらい楽勝だろう。……しかし、インフィニット。転生してからも噛みついているな。


「…………ちっ」


 ちなみにイケメンや美少女が増えて一気に有名になった? うちのクラスの中で、結構インフィニット……じゃなかった、逢坂詠も他クラスでは人気みたいだが、本性を知っているこのクラスの生徒や瀧野瀬や氷鏡のような先輩には本気で面倒くさい奴だと思われるようで突っかかる愚か者はいない。


「まあいい……平和ボケ日本人。腹が立つから死ね」


「おいおい、ここ日本。殺人は罪なんですけど!!」


 テストの答案用紙を使った鉄筋コンクリートすら両断する究極挙動を躱し、そのまま究極挙動で手刀を放つ。

 ……おっ、と、やべえ。ついつい本気を出して殺気を撒き散らして机と椅子を散乱させてしまった……こりゃ、騒ぎになるな……とっとと机と椅子を直すか。


 ――ビビッ!!


「風紀が乱れているぞ! 学校の中では暴れるな。二人ともそこに直れ」


 銀の笛を吹いて俺と逢坂を正座させようとしたのは、「風紀」と書かれた腕章を嵌めた黒羽くろばね莉里清りりすことリーリス=ヴリュエッタだ。

 リーリスは転生後の世界で新設させら風紀委員会の委員長となり、その融通の利かなさから「風鬼委員長」と呼ばれている……まあ、基本的には破廉恥な改造が施された制服に赤面しながら注意しているだけで、よっぽどのことがなければ他のことで生徒を注意したりはしないんだが……というか、これって俺が悪いの? 正当防衛じゃない??


「……リーリス、よくあんな中に入っていけるわね。二人の戦いとか異次元の領域だから武器なしでは止められないわ。……それに、インフィニットの方は無視して行っちゃったし、草子君だって守らなかったら今頃死んでいたんだから注意するのは可哀想だわ」


 そんな莉里清の手綱を握るのが風紀副委員長兼ストッパーの黒咲くろさき星奈あすなことアストリアリンド・ダル=ノーヴェ……まあ、基本的にはカオスにいた時とあんまり変わっていないな。


 そんな莉里清も嫌味を言いながら散乱した机を直すのに協力してくれた。

 他に星奈、答案用紙を持って褒めてもらいにでもきたのだろう聖と直葉、まさかの“熾天大天使地母神”様と朝倉、北岡と虹花と稲荷も黙々と机を直して……。


「…………おのれ、能因草子! 貴様、白崎さんにまで雑用を押し付けるなんて!!」


「やめろ、春彦!! 頼むから草子君に絡むのをやめてくれ!!」


「そうだ、頼むからやめてくれ。下手に睨まれたら秒殺で返り討ちにされるぞ」


「白崎さんは草子君のことが好きで、手伝いたいから手伝っているんだから、それを止めるのは春彦君の自己満足……余計なお世話よ。それに……春彦君のことが好きな雫さんのことも少しは考えてあげてほしいよ!」


 なんか春彦に睨まれて、その春彦を宍戸、雫、天宮――稲妻関係の恋する三人組が必死に止めているんだが……ってか、お前らまだ決着ついていないのか。


「…………あのハーレム男! 白崎さん達はボク達といる方が幸せなんだ。なのに、あの男は……白崎さん達を侍らせた挙句、誰かを選ぶ訳でもなく……」


「そうよ……一ノ瀬さんこそ、全ての女の子を救済する聖女様、そしてあの草子という男こそ、全ての女の子に不幸を与える元凶なのよ! 大体なんなのよ、あのヘタレは。どうせ誰かを選ぶ度胸もないチキンなのよ、チキン。しかし、なんで一ノ瀬さんの側にいるのに未だにその魅力に気がつかないのかしら? 早く目を覚ましてあげないと!!」


 そして、あっちも定期だな……一ノ瀬梓と白鳥しらとり珠璃じゅりことジュリアナ=スワン。


「……全く、二人とも自分達が矛盾したことを言っていることに気づいていないのかしら? 一ノ瀬さんもジュリアナさんもハーレムを築こうとしているけど、今の言い方では草子さんのハーレムは許さないってことになるし……私が好きだった一ノ瀬さんはそんなこと言わない人なんだけど……やっぱり草子さんと白崎さんが絡むと一ノ瀬さんはダメになるわよね。……ジュリアナさんは男性恐怖症を理由に男の人を排斥しようとしているし……とにかく、草子さん達に迷惑をかけないようにこの二人をどうにかしないといけないわね」


「一ノ瀬さんは逆恨みもいいところですからね。……一ノ瀬さんは優しい人だと思います……嫉妬深い、欲張りなところさえなければ。確かに僕達を大切にしてくれますが、全ての人が一ノ瀬さんに愛されたいと思っている訳ではない……みんなそれぞれ好きな人がいて、その人に愛されたいと、愛したいと頑張る――そういうものだと思います。……それに、僕達ではなく白崎さんにばかり視線が向いているのも、もう僕達のことはどうでもいいみたいで、悲しいです」


「…………前は本当にこの人のおかげで前を向くことができるようになって思った。この人になら弱さを見せてもいいって思った。……でも、最近の一ノ瀬さんを見ていると時々アズールと重なって見える……もし、私達を捨てれば白崎さんを手に入れることができる……なんてことになったら一ノ瀬さんは私達を簡単に捨ててしまうのかしら……流石にそんなことはないと思うけど」


 そんな一ノ瀬と白鳥に辟易しているのは、なんなかんやでそれでも一ノ瀬のことを愛しく思っている蒼井あおい麗蘭れいらことゼラニウム=レーラと汐見しおみうみこと汐見しおみかい黒貂くろてん心紺ここんことコンスタンス=セーブル――一ノ瀬のハーレムメンバーである女子高生三人組・・・・・・・だ。

 彼女達は暴走する一ノ瀬と白鳥の襟首を掴むとなれた手つきで引っ張っていった……お疲れ様です。


「みんなありがとう……すまんな」


「……また将軍さんに絡まれたんだよね、仕方ないよ。ところで、ねえ、これ見て! あたし頑張ったよ!!」


「草子さん、見てください! 百点取りましたよ!!」


 聖と直葉が嬉しそうに答案用紙を掲げている……まあ、確かに二人とも、というかリーファに関しては物によっては小学生レベルから勉強してのこの結果だから本当に凄いよな。

 ちなみに、薗部美華と冬休みのほとんどを投じてカオス組と年少組を高校レベルの勉強についていけるようにして、その後いつのまにか白崎達にセッティングされていた『草子先生の地獄の考査対策講座』に教師役として呼ばれて実力テスト対策を参加者全員分しないといけなくなったんだが……白崎とか成績いいのになんでこんな企画を立ち上げたのだろう。……なんか、白崎達に懇願されて、浅野教授に無理を言ってうちの高校の志望者を全員連れて行くことになった旅行企画「『源氏物語』〜青表紙本を巡る旅〜」の終わった辺りからみんなの目の色が変わった気がするんだが……気のせいか?


 しかし、吊り橋効果は異世界カオスという名の吊り橋が無くなった時点で綺麗さっぱり消える筈なんだが……カオス組に慕われるのならともかく、なんで白崎達まで混ざっているのか。


「なんで白崎さん達まで混ざっているのか、吊り橋効果は終わっただろ! って言いたげな表情をしているよね、草子君。……本当は分かっていると思うけど、好きっていう気持ちは環境が変わっても変わらないんだよ? 草子君、一位おめでとう……やっぱり元大学生の私でも勝てなかった。まあ、勝てるなんて思う方がおかしいよね。――そういえば、私草子君と同じ大学の日本文化研究学部の方を目指すことにしたから。前回は歴史で今回は文学――歴史の視点から文学を考察してみるってことをしてみるつもりだよ」


「それは楽しみですね。ところで……何故それを今?」


「……草子君、鈍感系主人公のフリもほどほどにね」


 ウィンクして嬉しそうに帰って行く美華……しかし、鈍感系主人公のフリとは一体? 俺はモブキャラ……いや、ただの男子高校生になんだが。


「草子君、あたしも草子君の目指している大学を目指すことにしたよ! 怪談で論文を書いてみようと思うんだ」


「そうか……怪談系は沼だからな。まずくずし字を勉強しないといけないし。丁度くずし字のテキストも持っているからそっちの勉強も早めに一緒に進めるか」


「うん♪」


 全く……これで背後に回って脅かす悪癖さえなければ白崎にも匹敵するスーパー美少女だと思うんだが……ってか、そういえば最近誰かを脅かすの減ったな。


「「「リーファさん頑張れ! 腐女子仲間として応援しているわ!!」」」


「……腐女子じゃないけど応援しているわよ!」


 進藤、久嶋、大門の脳筋ズの絡み合う絶対にあり得ない薄い本を描いていた志島、薫、眞由美の三人に辟易しながら、安堂あんどう美羅みらことミュラ=アンディルサントが直葉に声援を送っている……なんの声援?


「草子さん! 私も聖さんや美華さんと同じように草子さんと同じ大学の日本文化研究学部を目指そうと思います!」


「そうか…………日本文学でBLってあったか? 『とりかへばや物語』……にはそういう展開はないし……」


「BLは趣味だから関係ないですよ! 私は草子君と同じように文学研究をやって、もっともっと草子さんのことを知りたいんです」


 へぇ…………うん、全く動機説明が意味不明だ。


「…………聖さんもリーファさんも美華さんも、みんな凄いな」


「華代も、ほら早く行かないと! 気持ちを伝えないとあいつは理解していてもなかったことにするからな」


「そうよぉ……でも、個人的には白崎さんには草子君のことを諦めてもらいたいわぁ。だってライバルが一人消えるもの」


 友情ではなく個人の利益? を選んだ北岡が豊満な胸を俺に押し付けて「当ててんのよ」をしてくる……勿論、あらぬ誤解を持たれると面倒なので不可視を使って隙を見て脱出した。


「…………不可視だな」


「不可視ね。……ところで、影介君、デートってどこにいくはぁと


「何故そもそもデートに行くことが決定事項に!? というか、いつの間に!? ここは戦略的撤退!!」


「逃がさないわよぉ〜♡ 例えクラスのみんなが影介君に気づけなくても私だけは君を見つけられるわぁ♡」


 ……本当に仲良いな、あの二人。色付き空気と空気キャラって対極に位置すると思っていたけど……これはこれでいいカップルかも。うん、お幸せに。リア充爆裂せよ!!


「あらあら、草子君って本当にシャイね」


「――は、破廉恥だ!!」


「シャイではなく、北岡――お前眼中にないアウトオブ眼中なだけリプ!!」


 稲荷に縮地と共にスカートのまま回し蹴りを決められながらも、謎の耐久力で吹き飛ばされるのだけは免れた北岡だが、破廉恥は許さない警察な風鬼委員長に捕縛されて連れていかれた。


「…………自業自得だ」


「こ、今回は北岡さんを弁護するのは無理かな」


 友情よりも自分の欲望を優先した北岡のことは聖人君子な白崎にも流石に許容できなかった


「「「「「……私達って草子君から散々ビッチって言われたけど、どう考えても北岡さんの方がビッチよね!?」」」」」


「……いや、あれは雌犬ビッチじゃなくて淫魔サキュバスだからな。それと、柴田さん達に対するビッチ発言だけど謹んで謝罪するよ」


「……よくそこまで聞こえていたわね。……謝る必要はないわ……実際に転移前の私達って相当わがままでみんなに迷惑をかけていた訳だし」


 ちなみに、柴田、岸田、八房、高津、常盤の五人だが、夢咲と新田に誘われて七人組アイドルグループとしてデビューすることが決まったらしい……なんか俺にプロデューサー兼作詞作曲を依頼してきたんだけど、「素人にプロデューサーは無理だろ!!」ってことで五、六曲くらい楽曲提供するだけで勘弁してもらった。

 ……夢咲と新田に「これ、お金が取れるレベルよね!? いいの!? 冗談だったのに!!」と言われたが……その時は「冗談だったのか!?」と内心ツッコミを入れてしまった。あれだ、異世界カオスで觱篥奏輔の楽器店で販促のために一緒に楽譜とかも売ったんだけど、その時についでだからって作詞もしてそこそこの値段で販売しようって話になったんだ。だから、自分はプロだみたいな妄想が膨らんでいたんだろう……本当はただの素人なのにさ。反省反省。天狗の鼻のように伸びた自分の鼻はセルフでへし折るに限る。


 ちなみにその後、「近日デビュー予定の『七人組アイドルグループ・レインボゥ』ファンクラブ会員ナンバー一番を君になら譲ってもいい」と堰澤と吉祥寺が何故か「嬉しいだろ?」みたいな顔をして言ってきたが丁重にお断りした。(というか、現時点では身内にしか知られていない情報だから広めるなよ)。

 全く……俺はアイドルとかよく分からないって言っているだろ?


 そういえば、柴田達も俺と同じ大学を目指すとか言っていたっけ? アイドル活動ア●カツに受験に大変だな……おまけに柴田は読者モデル読モを継続、高津は茶華道の家元を継ぐために本格的に修行を始めるみたいだし……お前ら過労死すんぞ。ってマジで言いたい。……まあ、俺も執筆業に、論文書きに、浅野教授の手伝いに、結構色々なことをしているから人のことは言えないんだが。


「さて、アイリス……いや、今の君は吉岡虹花か。早く君も想いを伝えつつ褒めてもらってきなよ」


「そうだね。ありがとう、クリプ」


 何故か稲荷に背中を押され、嬉しそうにこっちに来る虹花……おいおい、さっきからなんなんだ。


「本当に、なんで草子君ばっかり。同じオタクなのに俺達は見向きもされないし」


「……あれ、異世界行ったらハーレムだぜ! って話だったよな。結局、そんな状況には一度もならなかったし……あいつだけ狡い」


「本当にそうだよね……まあ、ケモミミな女の子を見れたり、美人なエルフさんを見られたり悪いことばかりでも無かったけど……」


「全員俺達じゃなくて草子君の方を見ているんだよな……はぁ」


「…………なんなの!? 俺不良なのに常識人枠継続なの!! おいおい、織田君、後田君、楠木君、犬吠埼君、草子君はそれだけのことをしてきたんだ。そんな風に慕われるようなことを織田君達はしたの? そもそも下心を持って接すれば当然そうなる。草子君は損得勘定無しに、ただ助けたいと思ったから助けた……そうやって慕われていったんだ。積み重ねもなしに、成果を得ようとか。成果を得たいから人助けをしようとか、それじゃあ本末転倒なんだよ!!」


 ああ、オタク達にツッコミを入れる不良(常識人)は健在か。暴走しがちなオタクを不良が止めるとか、異世界転移前じゃ絶対にあり得ないよな。

 しかし……俺はお前達が言うようなモテモテハーレム野郎じゃねえぞ? 相も変わらずこいつらが吊り橋抉られせているだけだ。


「木村君の言う通りだわ。……そんな簡単に慕われることはない。異世界でも、地球でも」


「姉御と言う通りだぜ!!」


 ああ、そこに佐伯達不良? チームが加わったか。

 結局、佐伯凛であることを選んだ佐伯だが、かといってお淑やかなキャラになるということはなく、普通に不良少女スケバンになった。

 といっても、前みたいに暴力を振るっている訳ではなく、あくまで不良みたいに振る舞っているだけらしい。丑寅、栗栖、畠山、赤城が取り巻きなのも相変わらずだが……分かりやすく、この四人、本気で凛のことが好きになったらしい……あっ、恋愛的な意味の方でね。常時は凛の取り巻きとして振る舞っているが、一度凛が居なくなると火花を散らしている。

 あっ、木村は凛の取り巻きから解雇されたようです。……つまり、不良じゃないな。完全なオタクストッパーな常識人です。お憑かれ様です。


「草子さん、九位取りましたよ!!」


「おめでとう……髪の毛以外にも熱を入れることってあるんだな」


「勿論です! 私も草子さんと同じ大学を目指します。そして、楽しいキャンパスライフと髪の毛採集を行うのです!!」


 ………….こいつ、多分いつか伊勢いせ瑠牙りょうがことイセルガ=ヴィルフィンドや氷麗つらら雪乃ゆきのこと氷麗=スノーワイト=雪乃みたく逮捕されるぞ。ちなみに、あのレベル五の変態はそれぞれ女子小学生と男子小学生を拉致しようとした罪で現在服役中。……いつかやると思ったけど、まさかこっち来て二日目に俗世シャバとバイバイすることになるとはな……はあ。


 ちなみに、身元引受けは面倒なので放置です。というか、関係者だと思われたくない。


「…………まあ、ほどほどに、ね」


「アイリス……本当にお前はお馬鹿さんリプ。……折角のチャンスを」


 ……ほら、稲荷に呆れられているぞ。


「翠雨君、十一位おめでとう……仕方ないよ、相手が悪過ぎる」


「そうだね……まあ、草子さんに勝てるとは端から思っていないし。……ただ、草子さんに教えてもらったのに、これじゃあ申し訳が立たないなと思って」


「そんなことはないだろ? やっぱり翠雨は凄いぜ。……俺なんて四十位くらいだぞ!」


「照次郎君……それ、自慢できないと思うよ」


「まあ、それはそれ、これはこれだ。……翠雨、草子に報告して褒めてもらってきたらどうだ? 羨ましそうに聖さん達のことを見てただろ?」


「……流石にそんなキャラでもないからね」


 性別とか年齢とかプライドが邪魔をしてなかなか甘えられないってのはよくあることだからね。……素直に甘えられる聖達を羨ましく思うのも当然だと思うよ……というか、お前ら、羞恥心というものを持ち給え。


 まあ、後でお祝いの言葉を贈っておこう。十一位も凄いからね……というか、俺の点数がおかしいだけだし。


「草子……我、十位取りき。ご褒美もがな」


 おいおい、また素直に甘えられるタイプがなんか解答用紙持ってきたぞ……白崎、タイミングを逸してプルプル震えているんだが、どうすればいい??


「お、おう。何が欲しいんだ?」


「食ひ放題にぐしゆかなむ」


「おっ、おう。いつも通りだな……店潰れないかな??」


 こいつの胃袋ブラックホールは健在だからな。しかも、ちびっ子のままで太らない体質も健在という……しかし、栄養が胸にいくこともなく、一体どこに行っているんだか?


 ちなみに姫華は普段バイトと賞金の出る大食いで稼いだお金を全て食費につぎ込んでいる……本当に食べるために生きているって感じだよな。

 そういえば、姫華も俺も同じ大学を目指しているんだっけ? 確か古典をやりたいって言ってたけど……まんまやな。


 ちなみに今挙げていない異世界カオスに行った面々の近況を挙げていくと、南雲は図書委員会の仕事でクラスにいない、姫川と氷岡は性別を入れ替えて転生しそのまま年中無休で人目も憚らずイチャついている、平城山と山田は成績を見に行っているが、中途半端な成績で面白い反応ができていない感じだな。


「……可もなく不可もなく……こないなのが一番反応ができん」


「そうですね……まあ、僕は平凡タイプなんでいつも通りですが」


 白鷺も成績を確認している……思った以上に良かったのか嬉しそうだな。……自分にご褒美とかで何か買うのかな?


「…………よし、この成績なら勉強を一旦置いといてSAS●KEに向けてトレーニングをしても大丈夫そうね」


 ……マジか。そっちかぁ……って、分かるか!? 全く、女心はよく分からぬ。


 そして、相沢と太田おおた惠璃瀬えりぜことエリーゼ=ヴィーゲルトは……。


「…………ちっ、この天才である僕が七位、だと!?」


「やっぱり相沢さんは凄いです! 私には絶対にそんな高い順位は取れません!!」


「そうか……そうか!! やはり僕は天才だ!! 惠璃瀬、お前もよくやったぞ!!」


「ありがとうございます、相沢さん!!」


 自分が天才だと信じて疑わない某数学的天才よりもタチが悪い男だと思っていたけど、嫁さん得てからなんかコントにしか見えなくなったよな。まあ、本人が幸せそうだからいっか。


 他の大黒壬、栗花落佳奈、船橋ふなはし玄理げんりことケリー・ブランクス、星祭ほしまつりエドことサー・エドワード・ブリアーズ、銀島ぎんじまだいだいことシュゼット=ルモワーニュ、愛田あいだ流華るかことリュドミラ=コシェレワ、竜胆りんどういさおことリィゥ昌勲チャンシュン金城きんじょうこうは苛立ちを隠そうともしない逢坂の付近に固まっている。超帝国組は仲良いな……おおっと、金城が逢坂に絡んで一触即発……おいおい、やめろよ。


 ちなみに逢坂達は少し前から一ノ瀬と相沢を巻き込んでこの国の天下を取るために動き出したらしい……来たる第三次世界大戦を回避するために、こちらから宇宙に宣戦布告するつもりだそうだ……やめろ。

 一ノ瀬は「内閣総理大臣になってハーレムと同性婚を認める法律を制定する」……つまり政治家として国家の支配を目指す、逢坂達は「この世界の自分達にコンタクトを取りつつ、世界中の軍部を掌握し、第三次世界大戦を回避するための戦力を整え、雨中に打って出る」……つまり、防衛省や軍部から支配を目指す、そして相沢と惠璃瀬は官僚として潜り込み、一ノ瀬達と逢坂達協力する……もしそうなったら確実にこの国、終わるな。というか、世界が終わるな。


『内閣総理大臣、一ノ瀬梓君』


 ……うん、有り得ねえ。


「おーい、有栖。お前もこっち来いよ」


「……本当に、いいのかしら?」


 そして、俺達と共にこの世界に転生した幻夜げんや有栖ありす……この娘も第二の人生を謳歌している……んだよな。かなり一人ぼっちでいることが多いんだが。まあ、俺もぼっち君だし、たまに声をかけるようにはしているんだよね。

 ちなみに、芳山の方は俺達と同時に転生している……今頃、深町翔に告白して、二人で未来に旅立っている筈だ。芳山充はこれまでの芳山家の人間と違って、運命を変える力を異世界カオスで得ているからな。祖母と母が叶えられなかった悲願を今頃叶えている筈だ……流石に振られるとは思えないし。


「それで、白崎さん。どうしたんだ?」


「…………私のことも褒めて欲しいなって」


「いや、高嶺の花を褒めるとか、何様って感じだよ」


「…………好きで高嶺の花になった訳じゃないよ。それに、もう私は誰かの理想じゃない、草子君に愛してもらいたいと思う一人の女の子なんだから」


 ……まあ、そこまで言うなら仕方ないか。


 途端俺に対するヘイトが膨れ上がり、それを上回るヘイトを向けた者達に対する殺気が教室を埋め尽くした…………怖え!!


「四位おめでとうございます、白崎さん!」



 その後、俺達は高校三年間を過ごし、その後の大学受験で見事日本文化研究学部に合格する訳だが……まあ、そこまでは語らなくてもいいだろう。もし機会があれば、またそこから語ることになるだろうから。


 異世界カオスに召喚され、最初は地球に帰りたいと必死に頑張ってきた訳だが、改めて考えてみるとあの旅は、異世界カオスでの出会いは多くのものを与えてくれた。


 俺はあの日、大迷宮に残してきた異世界カオスでの旅の記録を物語として残すことにした。

 まあ、小説を書くのは榊翠雨の方が遥かに上手いだろうけど……俺の専門は文学研究だけど。それでもこの物語は俺の手で綴らないといけないと思うから。


 題名はどうしようか? な●うの流行りに乗って長文の説明的な題名にすると……『文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜』とか?





























































 ……うーん、なんかやっぱりしっくりこないな。別の、もっとスマートな奴を考えるとするか。

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