ユェン〜生きたがり仙人な七賢者〜 その2
異世界生活百七十日目 場所ラグナ・ヴァルタ島、ヴァパリア黎明結社本部
【三人称視点】
「来て、エレメンタル=ウンディーネ。力を貸して!!」
『リーファさんがそれを望むのなら!!』
顕現したウンディーネが無数の小さな青い輝きとなってリーファの中へと吸収されていく。
それと同時にリーファの衣装がスリットの入った扇情的な青のマーメイドドレスへと切り替わった。
「『――
「『――
顕現した一振りの西洋剣を振りかざすと同時に九つの激流が虚空から吹き出す。
宛ら蛟のように畝りながら水流がユェンに迫った――リーファの先制攻撃である。
「歪空珠――疾ッ! 混元珠――疾ッ!!」
対するユェンは水を自在に操る水晶玉型の
「『その程度の力に負けないわ!!』」
暫し拮抗していた力も、混元珠にヒビが入り始めた時点で完全に均衡が崩壊し、混元珠が砕け散った瞬間に九頭竜の如き水流がユェンに襲い掛かった。
「混元傘――疾ッ!!」
だが、ユェンは執念深い男だ。この程度のことでは諦めず、希少な
ユェンは敵の攻撃を倍にしてはね返すことができる混元傘を歪空珠から顕現して、九頭竜の水流を跳ね返した。
引き換えに混元傘は砕け散り、九頭竜の水流がリーファへと殺到する……が。
「『無意味な
リーファはウンディーネの力で九頭竜を霧散させ、自らに迫っていた攻撃を無力化した。
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・山河社稷図
→無数の蛇が空間を食らい、通常の0.1秒が一時間に感じられ且つ五感も奪われた状態の空間に閉じ込めるよ!
・斬仙剣
→振るえば音速の太刀筋を出すことができる剣だよ!
・陰陽鏡
→鏡を無数に生み出す鏡だよ! 無数に浮かべられた鏡による光線の屈折と反射を利用した攻撃ができるよ!
・梱仙縄
→敵を縛り付けて動きを封じる縄だよ!
・番天印
→巨大な判子だよ! あらかじめ空中に押印してそこを必ず射抜くよ!
・落魂鐘
→魂魄に直接ダメージを与える不協和音を鳴り響かせる銅鐘だよ!
・乾坤圏
→
・風火輪
→両足の下に着ける環だよ! 高速で空中移動ができるよ!
・火尖槍
→青い炎を吹き出す棒だよ! 槍として扱うよ!
・三尖刀
→三つ叉に分かれた槍だよ! 直接攻撃と共に、三条の衝撃波を放つよ!
・哮天犬
→増殖する漆黒の猟犬だよ!
・莫邪宝剣
→光の刃をもつ剣だよ!
・鑽針釘
→どんな硬いものでも貫ける強力な釘だよ! 手裏剣のように敵に投げつけるよ!
・霧露乾坤網
→水で編んだような巨大な網だよ! 広がって敵を包囲して静かなる攻撃を仕掛けるよ!
・呉鉤剣
→月のような刀身が反り返った曲刀だよ! 投げつけるとハサミの形になって敵を襲撃するよ! 両手に持って接近戦もできるよ!
・開天珠
→術者の意志に従って飛び、接触したものを爆破する球だよ! 球の推進力により飛行も可能だよ!
・劈地珠
→大きな水晶玉だよ! 大地を操るよ! 大地の力を借りて味方を回復することもできるよ!
・青雲剣
→青い龍の意匠が刻まれた剣だよ! 一振りで幾重にも刃が現れて敵を切り刻むよ!
・黒琵琶
→黒い琵琶だよ! その音により敵の神経を撹乱して同士討ちをさせるよ! 精神力の高い者には効かないよ!
・万里起雲烟
→弓だよ! 複数の光の矢を撃ちだすことができるよ!
・火鴉壷
→赤い宝玉だよ! 巨大な炎の鳥をとって敵を襲うよ!
・万刃車
→円盤状の飛び道具を飛ばす剣だよ! 不規則な動きで敵を翻弄して切り刻むよ!
・化血神刀
→高速で回転しなから敵を襲う刃だよ! 麻痺毒による痺れの効果があるよ!
・火竜標
→ブーメランだよ! 投げると岩をも溶かす火炎を発するよ! 使用者の意志により自在にその軌道を変え、不規則な動きで敵を翻弄するよ!
・太陽針
→一瞬で無数の針を飛ばして敵の秘孔を突いて体の自由を奪うよ!
・五火七禽扇
→真っ赤な扇だよ! 五種の炎を起こして焼き尽くすことができるよ! 衝撃波を放って広範囲の敵を攻撃することもできるよ!
・五光石
→巨大化する五つの玉石だよ! 投げれば必ず命中するよ!
・紫綬羽衣
→紫色の羽衣だよ! 広範囲に毒蛾の粉をまき散らすよ! 飛翔も可能だよ!
・歪空珠
→大きな水晶玉だよ! 空間を歪曲させて水晶玉に触れたものを無限に出し入れできるようにするよ!
・如意金箍棒
→神珍鉄製で両端に金色の箍がはめられた棒だよ! 持ち主の意に従い自在に伸縮するよ!
・觔斗雲
→乗ることができる雲だよ!
・九本歯馬鍬
→九本に枝分かれした馬鍬だよ! 灼熱の嵐を纏わせることができるよ!
・降妖宝杖
→月の裏の桂の樹で作られた杖だよ! 魔を払う力があるよ!
・芭蕉扇
→芭蕉の葉で作られた扇だよ! 一煽ぎすれば大風が起こり、二煽ぎすると雷雨が降るよ!
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既にユェンは二つの
「さて……そろそろ身体も温まってきたことですし、少々本気を出しましょうか。――ィィィィィィィィィィヤァァァァァァァアッ」
ヴリル=プラナの白い輝きがユェンの身体を薄い膜状に包み込み、慓悍ここに極まれりといった面構えとなって咆哮した。
◆
「例え相手が雷であろうとも、私に凍らせられないものはありません! 【氷之女帝】――【エターナル・アブソリュート・アイシクル・ブリザード】!!」
通称、
『なかなかやりますねェ』
金髪に色黒のイケメンで片目に稲妻型の傷を負っている細マッチョの姿に擬人化した雷公鞭は、見た目からは到底創造のできない粘着質な声で雪乃の攻撃を評価しつつも、一方で雪乃を嘲笑うかのように容易く雪乃の攻撃を回避した。
「【霹靂多発雲掌握】」
霹靂を多発させる雷雲を大量に発生し、戦場に広がっていく。
そこから発せられる雷撃は魂魄体ですら焼き尽くすことが可能という驚異的な威力を誇るものだが……。
「…………最強の
絶対零度の視線を雷公鞭に向けると、雪乃は手を部屋の天井を埋め尽くす雷雲に向け、絶対零度すら超えた超低温の冷気を解き放った。
この万物を凍結させる埒外の冷気は雪乃の超越技……ではない。
雪乃が、【氷之女帝】の力を極めた末に辿り着いた、物理法則を逸脱した極寒――類似したものに《
「そういえば、まだ超越技を見せていなかったわね。……これが、私の超越技よ!!」
そう高らかに宣言しながら作り出したのは一振りの青い薔薇の彫刻が施された青い氷の剣だ。
『な、なんですか? そんな剣で私を倒せるとでも??』
超越技と聞いて身構えていた雷公鞭は、それをハッタリと判断し、再び霹靂を多発させる雷雲を発生させる。
「【エターナル・アブソリュート・アイシクル・ブリザード】」
雪乃は三度、絶対零度すら超えた超低温の冷気を解き放ち、雷雲を凍結させる。
そして――。
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇ」
青い薔薇の彫刻が施された青い氷の剣を雷公鞭の胸あたり目掛けて勢いよく投げた。
『――何!?』
これには流石の雷公鞭も驚き、素早く剣を躱して逃げる……が。
「そうはいかせないわ!!」
【氷之女帝】によって作り出された雪乃の分身が、青い薔薇の彫刻が施された青い氷の剣を素早くキャッチし、逃走する雷公鞭の背中に向かって勢いよく投げた。
『ど、どうなっている!? な、何故……そ、そんなバカ……な…………』
青い薔薇の彫刻が施された青い氷の剣が突き刺さったところから雷公鞭の体を侵食するように次々と氷の結晶が生え、瞬く間に成長している。
雷公鞭が驚いたのは雪乃の氷が自らを凍結させたから……ではない。電子雪崩すらも丸ごと凍結させるという規格外の凍結能力であれば、超越技の力で作られた生身の身体の身体が凍結させることなど造作もないことは、雷公鞭にも容易に想像がついた。
だが、雪乃の超越技は雷公鞭の予想を上回った。雪乃の氷は雷公鞭の魂すらも凍てつかせたのである。
超越技――
「これで終わりです!」
雪乃が指を鳴らした瞬間、擬人化した雷公鞭が粉々に砕け散り、後には雷公鞭が顕現した雷公鞭だけが残された。
「これは、草子さんへのお土産にしましょう! もしかしたら草子さんがショタを愛でることを許してくれるかもしれません!!」
脳内バラ色雪女は、絶対に訪れない未来を想像してルンルンになりながら自分では使えない雷公鞭をルービック・ボックスの中に仕舞って、ルンルンと新たな獲物を探し始めた。
◆
「「「おらおらおらおら!!」」」
「てりゃぁぁ!!」
「どりぃゃゃゃゃゃゃ!!」
「それぇぇぇぇぇぇぇ!!」
相対するは太極図――アルビノのような白い少年の左半身と闇が溶け出したような真っ黒な右半身を持つ少年である。
『…………厄介だね』
通常なら物理一辺倒の脳筋ということで、同じ
太極図は物理以外のあらゆる攻撃を無効化し、そのエネルギーを使って傷ついた物を敵味方・生物非生物問わずに回復させる対非物理のエキスパートだ。
魔法や属性と言った非物理攻撃は全て太極図に無効化されるが、物理攻撃だけはどうしても無効化できない。
つまり、進藤達は太極図の唯一とも言える弱点を突けるまさに打って付けの手札ということである。参謀を任せられていたリーファは、ステータスを確認して真っ先に進藤達に「何も考えず太極図を倒せ」と指示を下したのも納得のいく話である。
「「「超越技――豪熱闘魂」」」
スキルを使わずに攻撃する際と、感情が高ぶっている際に威力を上昇させる進藤達
『【崩拳】ッ! 【横拳】ッ! 【化勁】ッ! 【化勁】ッ!! 【劈拳】ッ! 【炮拳】ッ! 【化勁】ッ! 【化勁】ッ! 【鑚拳】ッ! 【発勁】ッ!!!』
槍で突き刺すように拳を打ち出す【崩拳】、拳にひねりを加えながら、内から外へ半月上の軌道で打ち払う【横拳】、鉈を振り下ろすように拳を打ち込む【劈拳】、片方の腕を上段受けのように上に引きながら、もう片側の拳で突く【炮拳】、錐のように拳を突きあげてひねり込む【鑚拳】――【五行拳】を【化勁】と【発勁】を交えながら仕掛けてくる太極図だったが、動物的な野生の勘を持つ進藤達に効果はなく……。
「てりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「どりぃぇゃゃゃゃゃゃゃゃ!!」
「それぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
進藤を狙って【発勁】を打とうとした太極図を進藤、久嶋、大門の三人が一斉に槍を突き刺し、剣を振りかざし、三人の同時攻撃を受けた太極図はダメージに耐えきれず無数の光の粒となって消え失せた。
◆
黒の着物を纏った黒髪金眼の超乳の美女――どこかの駄竜人族を彷彿とさせる見た目だが、一切ドM要素はなく、対する織田に一切の考察の暇を与えることなく容赦ない攻撃を仕掛けているのは、金蛟剪だ。
『さて、どうするのじゃ?』
顕現した金蛟剪と【仙竜招来】で、生み出した火竜、水竜、雷竜、岩竜、嵐竜、氷竜、毒竜、光竜、闇竜を織田に殺到させながら、金蛟剪は不敵な笑みを浮かべ、織田の動向を窺う。
「至高天に浮かぶ薔薇の如く、万天斬り裂く光、吹き荒み渦巻きて、燦嵐となりて敵を討て――《
織田は自身を中心に青い光の刃を無数に展開させ、顕現された竜に向かって放つ……が、実体のある岩竜や氷竜には効果覿面なものの、火竜や雷竜などのプラズマ由来のものや水竜、毒竜、嵐竜といった不定形のものに形を与えたもの、光竜や闇竜といった属性を擬竜化した個体には効果が薄く、ダメージを与えてもすぐに回復されてしまう。
「ならば、直接本体を叩くまでだ!! 全天で最も輝く星の輝きよ、我が正義の心に宿りて、悪に堕ちたる愚鈍を断罪せよ――《
『ほうほう……なかなか積極的ではないか。だが、そうそう思い通りに事が運ぶほど世の中は甘くないのじゃ』
金蛟剪は火竜と雷竜を盾にして織田の勇者固有技から身を守り、【竜神顕現】の効果で黒竜の姿を取った金蛟剪が【
「収束して迸れ、魔を滅する聖剣技――《
織田は対抗するように勇者固有技を発動し、収束した青の光の奔流を解き放った。
【
そもそも真正面からの撃ち合いになった時点で、
なんとかギリギリで【
苦痛に顔を歪めながら
『そんな猶予、本気で与えると思ったのかのう?』
火竜、水竜、雷竜、岩竜、嵐竜、氷竜、毒竜、光竜、闇竜――金蛟剪の顕現した九体の竜が顎門を広げて織田に殺到し、金蛟剪の放った【
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