能因草子パーティメンバー、それぞれの休日③

【三人称視点】


 異世界生活百六十五日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー、魔界中央図書館


「ここが、魔界中央図書館……異世界カオスで最も本が集まる図書館」


 聳え立つような叡智の宝庫に、瀧野瀬、氷鏡、南雲の三人は思わず息を呑んだ。


 魔王領エーイーリー、以前から叡智の都市として知られ、かつては魔王軍幹部ヴァルルスが支配していた。

 現在は国家同盟の重役となり、教育関係の部署で教育機関設立に尽力しているため、この地域の支配者はいない。


 かつて、魔族の知識人達が議論を重ねていた場所には、今や人間、エルフ、ドワーフ、獣人、海棲族、魔族……様々な種族の者達の姿がある。


「――以上の点から、『デルフィア英雄譚』には叙事詩『常若の島々』の影響を指摘することができると思われます」


 中でも目を引くのはカタリナ=ラファエルを信仰する天上大聖女教の信徒と、エルフの里の若い研究者達だ。ここに、エリシェラ学園の学生や教員を加えた者達が新世代の文学研究を担う者達――草子流三派などと呼ばれている。

 魔界中央図書館で開かれた学会に参加したジェレミド達旧時代の学者達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


『すまんが、魔法薬に関する棚がどこにあるのか教えてくれぬか?』


『はい……えっと、四番台ですね。初めての方ですか?』


『うむ……最近、魔法薬の業界もとんでもない速度で発展していてのぉ。……全く、あの時の若者がまさか魔法薬学を発展される異端児となるとは……まあ、初めて会った時から規格外な奴だとは思っていたが』


『こちらが四番台になります。いくつか草子様の著書もあります。他ですと、セリスティア氏やルルード氏の著書もありますね』


『ほう、【宵闇の魔女】に【薬師の聖女】の著書まであるのか……これは魔女仲間にも伝えなければならないな』


『本の貸し出しのためのカードはカウンターで作ることができます。最大十冊で一週間借りることができますので、お好きな本を選んでからカウンターまでお越しください』


 魔界中央図書館で扱われているのは文学だけではない。グレーテルのような魔法薬関係者の他、様々な分野の者達が図書館を訪れ、それぞれの目当ての書物に目を通したり、議論を重ねている。


「こんにちは。当図書館の利用は初めてでしょうか?」


 とりあえずカウンターに向かった三人。受付を担当していた鳥魔人ハルピュイアの男は瀧野瀬達の物珍しそうに辺りを見回す姿から初めて来館したのだと解釈したのだろう。

 慣れた手つきでパンフレットを取り出し、三枚の書類と共に瀧野瀬達に差し出す。


「ありがとうございます。実は友人がこの図書館を絶賛していまして、図書委員会の委員長としては是非元の世界に戻る前に異世界の図書館というものがどのようなものかを見ていみたいと思って」


「それはそれは。当図書館は異世界カオスや異世界ガイアにおける文学研究の最高峰と言われている能因草子様が各地から集めた図書を貴重なものから貴重ではないものまで数多く取り扱っています。それだけではなく、草子様の生まれ故郷である地球という世界の書物も数多く取り扱っています。……しかし、元の世界といいますともしや転移者トラベラーですか?」


「はい、地球という星の日本という国から転移してきました」


「それは……いえ、早計かもしれませんね。草子様の理論では同じ地球と呼ばれる星も世界線ごとに異なるようですし、実際に地球出身の転移者トラベラーでも知識にズレが生じることがよくあるそうなので」


 瀧野瀬と氷鏡はあえて自分達が草子達と本当の意味で同郷であることを語らなかった。理由は語る必要性を感じなかったからである。

 必要以上に個人情報を開示すべきではない。


 図書館の司書に世間話以上の情報を語る必要はないだろう。そのような感覚で瀧野瀬達は自らの素性を暈したのだが……。


「あれ? 瀧野瀬先輩、氷鏡先輩、南雲さんじゃないですか。やっぱり図書委員ですし、異世界カオスで最も蔵書が集まっているらしい魔界中央図書館に興味を持つのは当然ですよね」


「えっ……この方々は草子様の本当の意味での同郷の方!? し、失礼しました! とんだご無礼を!!」


 急に態度を改めた鳥魔人ハルピュイアが最敬礼をして謝罪した。対する瀧野瀬達は困惑の表情を浮かべている。何故か丑寅、栗栖、畠山、赤城の四人を従えた草子は困惑を通り越して面倒だと言いだけな表情を浮かべていた。


「いや、高がモブキャラに一々ヘコヘコする必要ないと思うけど。アポ無しですまないけど八手館長っているかな? 旅中に集めた一般書に分類できそうな奴と、割と危険な魔法書を数千冊程度持ってきたから。危険な魔法書は読むと発狂する類だけど、俺は特に苦もなく読めたけどな。まあ、一応危険? だと思うから細心の注意を払って扱ってもらいたい。……今回は労働力も連れてきたから扱き使っていいよ」


「「「「そんな……殺生な、草子の兄貴!!」」」」


「まあまあ、きっちり働いてくれたら後でエリシェラ学園の音楽祭に連れて行ってあげるから」


「……いや、別に音楽とかは?」


「ん? 何か言ったかね? 丑寅君」


「いっ、いえ! なんでもございません、Sirサー!!」


 草子の恐怖に晒されて以来、草子に逆らえなくなった丑寅達であった。

 なお、草子は「これじゃあ俺が不良達のリーダーみたいじゃないか。いや、モブキャラが不良の親玉とか有り得ねえわ」と頭を抱えているが、どう考えても不良の親玉よりタチが悪い存在である。


「おっ、お前は、あの時の能因草子! おのれ、貴様さえ居なければ!!」


「図書館の中ではお静かに……えっと誰だったっけ?」


「貴様に屈辱を与えられた文学研究者のジェレミド=ジン・ラルク・ズード。エルフじゃ! 忘れたとは言わせんぞ!!」


「………………………………あっ。〈作者の意図〉に固執していた文学界の老害さんかっ」


 本気で嫌そうな表情を浮かべているのが誰の目から見ても明らかだった。仮にカタリナに扮していたとしても演技が崩壊するほど嫌いな相手――老害。その一人として数えられるジェレミドとの再会である……うわ、いらねえよ、こんな展開。


「カタリナ様! どうでしたでしょうか? 私の発表は!」


「ん? 良かったと思いますよ? 『デルフィア英雄譚』における『常若の島々』の影響が理論立てて説明されていましたし、過去の研究を検証すらせず鵜呑みにするそこの老害生きる産廃達文学者と名乗るのも烏滸がましい連中に比べた遥かに上出来だと思います……って上から目線ですよね。まあ、最近は老害生きる産廃と思っていた連中からも若い研究者に触発されて研究方法の見直しをしているようなので、本当の意味での老害生きる産廃はソイツを含めて数名と絶滅危惧種レッドリストになりつつありますが」


「――誰が老害じゃ!!」


「だから図書館の中ではお静かに……とりあえず、〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門ゲート〟」


 さりげなく老害ジェレミドの足元に〝移動門ゲート〟を発動し、強制落下でエルフの里に強制送還する草子。

 これには他のエルフの老害文学者達も恐怖を感じたようで、ジェレミドに追随して草子に喧嘩を売る者は現れなかった。


「久しぶりじゃな、能因草子」


「あっ、お久しぶりです。グレーテルさん。……他の魔女の方々もご一緒ですか。本日は魔女集会ヴァルプルギスの日でしたっけ? ……あっ、魔女集会といえば、以前Tw●tterでタグが流行りましたね。『魔女が拾った男の子が成長して、魔女よりでかくなって魔女を全力で愛して守る男になる話』を140文字で描くというのが流行りましたが、そういうのってあるんですか?」


「……いや、儂。子供嫌いだから」


(そういえば、わざわざお菓子の家みたいな子供ホイホイな家を建てておいて、子供が来たらイライラする理不尽魔女さんだった)


 と初対面の頃を思い出して苦笑いを浮かべる草子。


「そういえば、最近は何の研究をしているのか? 【常闇の魔女】殿によれば既に魔法薬の研究は打ち切ったそうだが……」


「まあ、基本的な研究は終わったので今後はルルードさん、バルミサーナさん、ミモザさんといった方々にお任せしようかと。まあ、具体的には現状では試していない魔王領側で使われていた魔法薬と人間側で流通していた魔法薬の配合研究ですね。その情報を寸分違わず記録して何が一番効率がいいかを検討するというものですね。ちなみに、セリスティア学園長は不死者の魔導師ヴァルルス達と教育機関の設立のために尽力しているようなので、魔法薬についてはルルードさん達に任せるつもりのようです」


「……まあ、確かに【常闇の魔女】殿は魔女というよりも魔法の研究者や教育者に近いお方だからな。【梟の三魔女ミネルウァ】として数えられる【白麗の魔女】殿は随分前に引退され、現在は森の庵に引きこもっているそうだし、【真紅の魔女】殿は……」


「ま、負けた訳ではないわよ! ぜ、全然凄くないんだからね! すぐに貴方も驚くような研究成果を上げてギャフンと言わせてやるんだから!!」


(おいおい、マジかよ。ドリル髪でツンツンな魔女っているのかよ)


 しかし、内心では辟易としていてもポーカーフェイスは崩さない。

 微笑を浮かべながら【真紅の魔女】ことクリムエル=ヴァーミリオン(ハーフエルフ/推定300歳)から視線を逸らす。


「む、無視するなァ!!!!」


「……五月蠅いですわよぉ。ここは図書館……他の方々の迷惑になりますわよぉ」


「やっ、やめろ。い、息が……その大きいものを押し付けるなァ! 嫌味か、嫌味なのか!!」


 そんなクリムエルに爆乳を押し付けて本気で窒息させに掛かっているのが【白麗の魔女】ことルシエラ=ブランシェスである……というか、引き篭もっていたんじゃないの?


「お初にお目にかかります、ルシエラ=ブランシェスですわぁ。お噂はかねがね……とんでもないお方が現れたということで、私、庵に引きこもっていては時代に乗り遅れると思って庵を飛び出してきたのですわぁ、文字通り」


 ちなみにこのルシエラ。クリムエルロリババアより約二百年ほど長く生きている正真正銘の化け物である。

 その長寿の理由は彼女の半天使ハーフ・エンジェルという稀有な種族に分類されるからである。


 まあ、要するに偶然地上に降りた天使が地上の男性ないし女性とはっちゃけた結果生まれ落ちた子ということであり、天使側は大概神界に戻るため、地上の父ないし母一人に育てられるか、育児放棄されてポイっと捨てられる運命にある。

 神界も特定の世界と繋がりがある半天使ハーフ・エンジェルを神界に置いておく訳にはいかないそうで、規定で無理と定められているのだからそれに抗うことはできない……なら、何故分かっているのに一時の感情に流される。天使は脊椎反射で生きているのだろうか?


「ちなみにぃ、別に私は現役を引退した訳ではなくてぇ、弟子の活躍のために師匠がいると邪魔かなと引き篭もっていただけですわぁ。まあ、その弟子も独り立ちしたので私もそろそろ魔女活動を再開しようかと思いましてぇ。……ところでぇ、魔法薬の調合研究はやめたということですがぁ、他の研究はしているのですよねぇ?」


「えっ………ええ。まあ、旅がメインなので……時間遡行をしながらですし、あくまで俺の研究の主題は文学なので割いている時間は短いですが……最近は、そうですね。変若水おちみずというものについて研究を。まあ、簡単に言えば『奥様方必見! 貴女も今日から美魔女に!!』という胡散臭い水ですね」


 途端に目の色が変わる魔女達……だけではなく、受付嬢やたまたま図書館に来ていた女性客(稀に男性も)、さも「私は興味ありませんよ」という雰囲気を醸し出しながら耳をそばだてている。


「そもそもの話ですが、若返り自体は現状でも余裕でできるんですよね」


「……ほう」


 グレーテルは長年若返ることを求めて研究を続けてきた。その方法が既に確立されているというのは聞き捨てならないことなのだろう。


「まあ、いくつか方法がありますが……まずは【性転換】という性別を変化させることができるスキルの上位互換である【性換者】やその上位スキルです。近場だと魔王領に生息するグレーター・ミノタウロスが保有していますね。この方法を使いたいのであれば、グレーター・ミノタウロスを捕食するなりスキルを模倣するなりして【性換者】を獲得するか、保有者を探して協力してもらう必要があります」


「……性別を変えるスキルは若返りとは結びつかない。儂は男になりたい訳ではないからのぉ? その辺り、分かっているのか?」


「まあまあ……実例は魔王領エーイーリーにいる五箇伝の鳰という九尾の狐です。一度会ってお話を聞いてみるといいかと。……その鳰って人なんですが、あまりにもウザかったので元々(貧乳好き以外の)誰もが羨むナイスバディ(自称)だったのですが、【性換者】の効果でツルペタになりました。その際、肌年齢も幼女化に合わせて若返っています。これは、【性換者】の効果である『設定の付与』の効果ですね。肌年齢を若返らせたいならそう設定して二回【性換者】を発動すればいいのです。まあ、一度男になり、再び女に戻ることで理想の女になることができるという訳ですね……まあ、設定の数には制限がありますが。ただ、これで若返ることはできますが寿命自体は変わりません。若返ったから長く生きられると思ったら大間違いですので。あれは既に設定されているので、【寿命吸収】で補填するか、或いは……」


 まあ、若返りではないが一番いいのは超越者デスペラード化による固定なのは間違いないだろう。歳を取らないから一生若いままで居られるぞー。


「二つ目は【時間魔法】による身体への干渉です。まず断っておきますが、こちらも寿命の因果を無効化することはできませんので。……それに、生物に対する時間干渉は、非生物に対する干渉、時間遡行や時間加速、時間停止……様々な種類がある時間干渉の中でも最難関とされています。失敗したら命がパーになっちゃうんで本当に危険です。基本的に【性換者】推奨ですね」


(……まあ、【性換者】はメスを使わない美容整形や完全な変装とかそっちに近い技術だから、若返りはついでに近いんだが……それに、誤魔化しているだけだしな。【性換者】を無効化されたらTHE ENDだし)


「ちなみに、最近の研究内容の一つは純粋な性転換と外観に関わるAPP値の関係ですね。APP値が低くても美少女はいますし、薬を使って高くしてもあまり変わらないですからね。基本的には性転換による性別の変更の際の外観に大きな影響を与えるのではないかということで考えていますが……一概にそう言い切れないのが難しいですね。……話を戻しますが、変若水というのは飲めば若返るといわれた水で月の不死信仰に関わる霊薬の一つですね。ちなみに、二月堂では修二会、通称お水取りが行われていますが、元々は旧暦二月に国家安穏と玉体護持、五穀豊穣などを秘仏十一面観音の前で悔過作法を行うという形で祈念するの仏教法会の修二会で、これが民族的行事の「若水汲み」と習合したものがお水取りであるという説もあります。……まあ、関係ない話ですが。さて、この変若水ですが、調べたら見つかりました。魔族の一種、天狗族が棲まう通称天狗山では不老水信仰なるものがあります。まあ、信仰が形骸化して形だけが残っているだけですが……今回、交渉に交渉を重ねた結果、この不老水……変若水の研究をすることが許されました」


「……ほう、あの天狗達が御神体の水の研究を許すとは驚きですね」


「あっ、八手館長。お久しぶりです」


 目的の人物が到着したということで本来の目的に入りたいところだが、どうやら変若水に興味を持った者達はそれを許してはくれないらしい。圧に屈した自称モブキャラは仕方なく話を続けることにした。


「現在、研究を続けていますが、変若水を使えば若返りは十分に可能だと思われます。しかもこれは実際に若返っているため、無効化することができません。ただ、こちらでも寿命は変動させることができないのでそこだけはご留意ください。……と、まあこんな感じでいいか。研究が完了し次第、天狗山と組んで商売を始められないか検討をしてみますので、それまで暫しお待ちください。……さて、八手館長。変若水の件は片付きましたし、本の受け取りをお願いできますか?」


「ほうほう……今回もかなりの数ですね。それと、何故か厳重に箱詰めされて『扱い注意』のシールが貼られたものもかなりの数がありますが……」


「かなり危険な魔法書ですからね。読むと発狂すると専らの噂で。俺は読んでも面白いとしか思いませんでしたが」


「「「……草子君が狂っているからじゃないのじゃないですか!!」」」


 素早く突っ込みを入れる図書委員会三人衆に、八手は興味深そうに視線を向けた。


「……こちらの方々は?」


「俺の通っていた高校の図書委員会の委員長の瀧野瀬芽依さんと同委員会メンバーの氷鏡将輝さんと南雲麻衣子さん。まあ、俺が求める設備が揃っていなかったので図書室には全く足を運ばず、基本的には県図書館や大学図書館を活用していましたが……いや、相互貸借は可能でしたが、国会図書館の閲覧ができない、資料がないから全部取り寄せとか研究をするためにはあまりにも使えなさ過ぎて」


「草子君、高校の図書館に大学レベルのものを求めるのは無理があると思います」


 冷静にツッコミを入れた南雲だが、残念。草子は分かった上で暗に「高校レベルの図書館に用はないぜ!」と皮肉を言っているだけなんだよな……。


「今回は体力に自信がありそうな不良達を連れてきたので更生活動の一環でビシバシ使ってやってください」


「ええ、では是非協力して頂きましょう。美味しいお菓子も用意しますので是非頑張ってください」


 途端に目を輝かせる不良四人。餌が変われば態度が変わる現金な奴等である。


「それと、こちらは危険な魔法書と一緒に保管しておいてもらいたいリストですね。召喚できるクトゥルフ関連の存在を一覧にしてあります」


「ほとんどバツになっている……しかも死亡ということは既に死んでいるため召喚できないということですね。それほど危険な存在が既に死んでいるとは。……まともに呼び出せるのは……クトゥルフとディープ・ワンズですか。……えっと何か細かい字で書いてありますね。『我を召喚するのは絶対にやめるのじゃ! アポなしで召喚されたら楽しい時間を台無しにされるのじゃ! 我にだって予定があるのじゃ!! それに、風呂に入っている時に召喚されたら裸のまま召喚されてあられもない姿を晒すことになるのじゃ、それだけは絶対に嫌なのじゃ。それとロリコンが万が一我を召喚した時は裁きを下すのじゃ。ロリコン死すべし、なのじゃ!! 我に協力を求めたい時は普通に冒険者ギルドに指名依頼を出すのじゃ!! いいか、クトゥルフさんとの約束じゃよ!!』……って、これって実際には召喚できないってことですよね? 他にもティンダロスの猟犬(※使役できずに襲われる)とか書いてありますし、リスト第一項のアザトースは『抵抗レジストされたということは今も生存? 因果干渉を利用して死んだように偽装した可能性あり。なんでそんなことを?』と謎のメモ書きがありますし、ナイアーラトテップの項目には『討伐予定』と召喚する前に殺す気満々な文字が書かれていますし、無名の霧ネームレス・ミスト無名の闇アンネームド・ダークネスについては『召喚されたのかどうかも現状のマルドゥーク文明の資料では不明。召喚されたのならアザトースに同行しているのか?』とか、最早意味不明なことが書かれていますし……なんなんですか、このメモ! これじゃあ、魔法書が使えないってことじゃないですか!」


「いや、神々を召喚しなくても魔法は使えるし、クトゥルフ系の魔法はMPを消費しないから有用だよ? まあ、読むと発狂するけど。似たようなものに瀬島の魔術もあるけどそっちも【魔法無効】でどうにかなるからな……価値があるかと言われると微妙だけど。まあ、地下にでも置いといてくだされ」


 その後、丑寅達の活躍(?)で、草子が持ってきた本は全て棚に収められた(まあ、図書館の増築に加えて配架までした草子の方が仕事量は多いのだが……)。

 草子は丑寅達を連れてエリシェラ学園に赴き――。


「それじゃあ、図書館を満喫するわよ!」


「「おー!!」」


 瀧野瀬達はパンフレットを片手に未知なる図書館の探索を開始した。

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