「このロリコンどもめ!」と叱責しそうな幼女が現れた。

 異世界生活百四十七日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領アィーアツブス


 魔王領アィーアツブスの首都の付近で魔導式駆動四輪|Liacdlac《リアクドラック Organumオルガノン》を止め、車を亜空間に転送してから詰所の方へと向かう。


「……な、何故ニンゲンが!!」


 最早恒例行事と成り果てた敵愾心満載の詰所通過だ。……うん、もうパターン化されてきたしそろそろショートカットしたいな。……まあ、この世界はゲームじゃないからスキップボタンはないんだけどさ。


「初めまして、能因草子と申します。アポ無しで来て申し訳ございません。こちらの魔王軍幹部様にご用があって参ったのですが……こちら、魔王軍幹部様への書状です」


「これは、魔王軍幹部八人の書状!? な、何故ニンゲンがこれを!! 偽造できるとは到底思えないし、このニンゲン達に八つの魔王領を制圧するのは……いや、聖剣持ちが何人もいる。……もしや、魔王領を制圧して無理矢理書かせ――」


「んな訳あるかい!! というか、そもそもそれが本物か偽物かはここの魔王軍幹部様に直接確かめてくれば一発だし、内容を読んでもらえば分かってもらえると思うからとりあえずレッツゴー!!」


 詰所の吸血鬼ヴァンパイアの男は渋々中に入っていき、俺達は敵意剥き出しの魔族の真っ只中に放置された。

 ということで、暇になった俺は皮の袋から演劇部から渡された本の複製を取り出してボールペンを片手に読書を開始した。


 元々は割と古めで韋編三絶したこの本をを元に台本を書いてもらうように文芸同好会に依頼するつもりだったようだが、俺がエリシェラ学園に戻ってきたということで俺に任せることにしたようだ……イミガワカラナインダガ。


 内容は貴種流離譚で、割とありがちな英雄物語のようだが、演劇部はこれを現代風にアレンジしつつ、男装の麗人と美姫の恋物語の要素を入れろと求めてきた……うん、もう原作崩壊しているね! まあ、誰と誰のための台本なのかは明らかなんだけど。


 まあ、とりあえずなんとかなるだろう。……随分とカオスな内容になりそうだが、それは組み合わせるものが悪かったということで。


「…………そ……さん…………そう……さん……草子さん」


 うわ、びっくりした。メイド服を着た吸血鬼ヴァンパイアと執事服を着た狼人間ワーウルフの二人がいつの間にか目の前にいた……いや、気づいてはいたんだけどね? ただ、後ちょっとで五十四ページ目が読み終わりそうだったから無かったことにして読み進めただけだよ。


「初めまして、草子御一行様。私は【狼執事長ウルフ・グレートバトラー】のヴォルフガンド=ガリューノスと申します」


「【吸血鬼の侍女長ヴァンパイア・メイドチーフ】ののリサリザ=カーミラでございます」


「草子御一行様をフリディス卿の元にお連れするよう命を受け、参りました。……最初に申し上げておかなければならないことがありますが、当魔王領の魔王軍幹部――フリディス卿は卿と敬称をつけて呼ばれることに自己同一化アイデンティティを持っておりまして、草子御一行様も必ずフリディス卿を敬称をつけてお呼びするようお気をつけくださいませ」


 ……うわ、前回に引き続きまた面倒な魔王軍幹部だよ。

 まあ、キャラが濃くないと魔王軍幹部はできないんだろうけどな。


 ヴォルフガンドとリサリザと共に城へと向かう……というか、この後リサリザに噛まれて吸血鬼の眷属にされるとかはないよね!!

 いや、そんなことはしないと思うけどさ。フェールムにもされなかったし。


「……こちらが謁見の間になります。くれぐれもよろしくお願い致します」


 ヴォルフガンドとリサリザが扉を開け、俺達は青い炎が揺れる暗いホール――謁見の間? に足を踏み入れた。


-----------------------------------------------

NAME:フリディス=ベアード

LEVEL:800

HP:300000/300000

MP:300000/300000

STR:200000

DEX:800000

INT:30000

CON:500000

APP:300

POW:500000

LUCK:100


JOB:馬句部阿度バックベアード


TITLE:【魔王軍幹部】、【馬句部阿度バックベアード


SKILL

【赫光衝撃波】LEVEL:600

→目から赤い衝撃波を放つよ!

【赫光眼光線】LEVEL:600

→目から赤い光線を放つよ!

【催眠術 極】LEVEL:600

→上位魔族をも操る催眠術が使えるようになるよ! 【催眠術】の上位互換だよ!

【瞬間移動】LEVEL:600

→瞬間移動が上手くなるよ!

【瞳界吸引】LEVEL:600

→無数の眼が浮かんでいる空間に標的を引き込むよ!

【細胞自在】LEVEL:600

→細胞を状況に応じて鋼鉄のように固くしたりゴムのように柔らかくしたりできるよ!

【スモッグ毒生成】LEVEL:600

→スモッグ状の毒素を生成するよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:600

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!

【掣肘】LEVEL:600

→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!

【覇潰】LEVEL:600

→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!


ITEM

-----------------------------------------------


 ……………………バックベアードだ。鬼●郎なのだろうか? というか、西洋妖怪??


「ようこそ、我が城へ。能因草子と仲間達よ。我はフリディス=ベアード。フリディス卿と呼ぶがよい。……………………こ、こうしないとキャラを保てないのだ。だから睨むのはやめて欲しいのだ」


 いや、上から目線でウゼエなという気持ちを心の裡に隠して古拙の笑みアルカイック・スマイルを浮かべていたらバックベアードが涙目になった……ってか、姿が変わって……ベア子みたいな見た目になったんだが……あれか? 「このロリコンどもめ!」と叱責するバックベアードの幼女擬人化なのか!!


「…………このことは誰にも言わないで欲しいのだ」


「言いませんよ、勿論。(〝痛みを理解したまえ〟――〝ダイレクト・ペイン〟)」


 無詠唱で発動した【精神魔法】でタンスに小指をぶつけた時の九百倍の痛みをイセルガと一ノ瀬に撃ち込みつつ、古拙の笑みアルカイック・スマイルパートⅡ。

 ジュリアナは一ノ瀬を介抱しながら何かを言おうとして、結局何も言わずに睨んできた……ナンデ!!


「ご、ごほん! わ、我は大妖怪だ!! け、決して幼女などではない! 断じてないのだ!!」


「はいはい、見た目とか別に関係ないので話進めちゃっていいのですか? フリディス卿」


「……無視されるのは無視されるのでなんだか悲しいのだ」


 つくづく面倒な人だな。まあ、ドイツ語訛りの魔王軍幹部よりはマシだけど。……というか。


-----------------------------------------------

・魔王領バチカル

秘書室長:シャルミット=シャーヌフ

警備責任者:騎士団長のシュトライドフ=ノアル


・魔王領エーイーリー

【五箇伝〝針女〟の鶫】:鉄穴森鶫

【五箇伝〝座敷わらし〟の秧鶏】:天啓秧鶏

【五箇伝〝九尾〟の鳰】:九重鳰

【五箇伝〝妖狸〟の雲雀】:信楽雲雀

【五箇伝〝氷柱女〟の鵠】:水喰鵠


・魔王領シェリダー

三輝石:キャッツアイ=クリソベリル第一騎士団長

三輝石:ローズクォーツ=ルチル第二騎士団長

三輝石:モリディナ=オブシディアン第三騎士団長


魔王領アディシェス

デュミュレーフォ=シュラーイム師団長


魔王領アクゼリュス

文官長:左沢あてらさわ真穂まほ


魔王領カイツール

四将:“緑将”アウラ=シュマーレ


魔王領ツァーカブ

家令スチュワード:ブロムシュテット=ポリュシュート


魔王領ケムダー

〝紅き閃光の輪舞曲ロンド〟:ヨンダルシュヴァルツ=アリジェロヴェラレス

〝白き爪牙の狂飆きょうひょう〟:ラナインフォルス=シュテルツェキル


魔王領アィーアツブス

狼執事長ウルフ・グレートバトラー:ヴォルフガンド=ガリューノス

吸血鬼の侍女長ヴァンパイア・メイドチーフ:リサリザ=カーミラ

-----------------------------------------------


 魔王領ケムダーの側近や重役クラスも魔王軍幹部上司リスペクトなのかぶっち切りで厨二病だからな……というか、その称号。どっかで見たことがあるレベルじゃないぞ!!


「改めて書状の件、了解したのだ。魔王軍四天王にいる可能性が高い裏切り者と暗躍している仮面の者達、魔法少女、《大罪の七獣セブンス・シン》には手を出さないのだ! ……模擬戦は勝てる気がしないけど、諦めないのだ!!」


 うん、一々挙動が可愛いな……ところで。


「模擬戦なのですが、先送りにしてもいいでしょうか? お客様がいらっしゃったようですので」


 謁見の間の壁に切れ目が生まれ、音を立てて崩れ落ちた。

 外の光を背景に、袴姿にサラシが巻かれた胸元の露出がある当世袖と籠手を付けた侍風の太刀と二本の脇差しを差した魔法少女が現れた。


-----------------------------------------------

NAME:魔法少女ブレイド・ブレイクゥ

LEVEL:999

HP:999999/999999

MP:999999/999999

STR:999999

DEX:999999

INT:999

CON:999999

APP:999

POW:999999

LUCK:999


JOB:魔法少女


SKILL

【刀剣聖女】LEVEL:9999

→刀剣を使って敵と戦うよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:10

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!


BATTLE SONG

→Ver.1.61.81.03.39。絶唱ファイナルソング搭載。


ITEM

・日本刀型ステッキdevise

→斬った物を硬化・風化させる効果があるよ! 寿命を消費するよ! 大量に寿命を消費することで生物にも効果を及ぼすことが可能になるよ!

-----------------------------------------------


 ……ここに音楽家は居ませんよ? 場所間違えていませんかね? 侍魔法少女さん。

 しかし、よりにもよって見えているものならなんでも斬れる人か……いや、この人の固有魔法は俺の斬撃と相性がいいけど、それなら距離感弄れる人の方がいいし。


 胸元につけられた刀剣のように見える形の石――プリンセスジュエルが眩い紅の光を放つ。

 瞬間、俺達は悪堕ち魔法少女の結界に引きずり込まれた……って、なんで今回は俺以外も取り込まれているの!!


「俺だけを狙ってくるんじゃないの? パターンを変えたのかね?」


 「これが噂に聞く魔法少女か!」と物珍しそうに魔法少女ブレイド・ブレイクゥを見つつも警戒心を失ってはいない幼女バージョンのフリディスと武器を構えて警戒する白崎達。

 俺はいざとなったら俺以外を脱出させるべく〝移動門ゲート〟の準備を整えつつ、エルダーワンドを構えて魔法少女ブレイド・ブレイクゥと対峙した。


「能因草子――私は貴方に打撃を与えるべく参りました。これまでの魔法少女は貴方個人を狙いましたが、全て返り討ちに遭ってしまいました。……なので、今回は貴方の仲間も巻き込みました。――例え貴方を倒せなくても、お仲間を傷つけられれば大きな傷を負う筈です。貴方が例え無敵だったとしても、心はただの人間――仲間を殺されれば正気ではいられないでしょう」


「随分と舐めてくれるな、ホムンクルスの分際で。他人の超越技で俺達超越者デスペラードに並んだからといって粋がるな。……それに残念だったな。勇者パーティは俺なんかより遥かに強いし、【物理無効】と【魔法無効】を持っている。お前は【魔法無効】を貫通できるだろうが、お前の攻撃は物理でもある――無効化の領域に入っていることを忘れるな」


 フリディスは耐性スキルを持っていない……魔法少女ブレイド・ブレイクゥは光だろうと切るだろうから、ガスで身体が構成されているガスの姿も効果はないだろう。

 やはり、ここは――。


「〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝移動門ゲート〟」


 俺を除く面々を〝移動門ゲート〟で飛ばし、エルダーワンドに闇を纏わせた。


「【魔法剣・闇纏ヤミマトイ】」


Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/Croissantクロワサン deドゥ luneリュンヌ envoyéアンヴォワイェ


 ……ちっ、やっぱりダメか。

 斬撃を視界内の任意座標へ移す任意座標への斬撃と光すら両断可能な見えているのならば文字どおり何でも斬れる効果の複合で俺の闇の斬撃を斬られた。

 ……なるほど、発動のためには剣を振る必要があるのと、刀の軌道に従って斬っている点は共通しているのか。斬撃の方向を無視して斬撃を飛ばせるのなら厄介だが、それなら斬撃の軌道に入らなければ問題ない。


「現れよ、我が悪堕ち魔法少女ドッペル使い魔シモベ達よ!!」


-----------------------------------------------

NAME:武王の堕魔lotta

LEVEL:10000

HP:6000000/6000000

ΣΑ:1000000/1000000

STR:99999999

DEX:99999999

INT:-10000000

CON:999999

APP:1000

POW:999999

LUCK:1000


SKILL

【武王の堕魔の呪法】LEVEL:9999999

→武王の堕魔の呪法だよ!

【武器理】LEVEL:9999999

→武器使いの真髄を極めるよ! 【片手剣理】、【両手剣理】、【二刀流理】、【西洋剣理】、【聖剣理】、【魔剣理】、【槍理】、【薙刀術】、【片手棍理】、【両手棍理】、【片手斧理】、【両手斧理】、【鎚理】、【鋸理】、【曲刀理】、【短剣理】、【鉤爪理】、【鉾槍理】、【銃理】、【弓理】、【鞭理】、【投擲必中】の上位互換だよ!

【武技】LEVEL:9999999

→武器を使った体術的な技だよ! 【唐竹】、【逆風】、【袈裟斬り】、【逆袈裟斬り】、【左斬り上げ】、【右斬り上げ】、【居合い】、【飛斬撃】、【峰打ち】、【無拍子】、【無念無想】、【兜割り】、【刺突】、【連続突き】、【貫通】、【払い】、【薙ぎ払い】、【振りかざし】、【爆裂打槌】、【武器破壊】、【受け流し】、【盾攻撃】、【乱射撃】、【狙撃必中】の上位互換だよ!


ITEM

・ダマスカスブレイド×6

→ウーツ鋼を素材に作り上げた両刃剣だよ!

-----------------------------------------------


-----------------------------------------------

NAME:武王の堕魔の使い魔

LEVEL:1000

HP:3000000/3000000

ΣΑ:3000000/3000000

STR:5000000

DEX:3000000

INT:10

CON:1000000

APP:100

POW:1000000

LUCK:100


SKILL

【格闘者】LEVEL:4000

→格闘者に相応しい格闘技術を得るよ! 【格闘真髄】、【徒手空拳】、【近接格闘術】の上位互換だよ!

【溜力】LEVEL:4000

→力を溜めて攻撃力を上昇させるよ! 溜めている間は防御力が下がるよ!

【我慢】LEVEL:4000

→我慢が上手くなるよ! 防御力を上昇させてダメージを軽減するよ!

【受身】LEVEL:4000

→受け身が上手くなるよ!


ITEM

・チャイナドレス

→マンダリンドレスだよ! 最高級の絹製だよ!

-----------------------------------------------


 燃える阿修羅のような見た目で三面六臂の悪堕ち魔法少女ドッペルと、チャイナドレスを身に纏って髪の毛を二つのシニヨンに纏めた武闘家の使い魔か。

 珍しく無手の敵だな……まあ、前にも【マーシャルアーツ】を持っている奴はいないけど。


「《絶唱ファイナルソング》――〈罪装マラズ・フォース・魔刀少女〉」


 プリンセスジュエルから現れた漆黒の嵐が魔法少女ブレイド・ブレイクゥを飲み込み、その衣装を黒へと染めゆく。

 ところどころ布面積が減った代わりに、金属質の装備ギアが追加されたようだ。


不協和音ディソノンス


 はい、無効化終了。――さて、一気に攻めさせてもらうよ!!


「【超過ト霸極之神】――【究極挙動】!!」


 六十秒までのエネルギーや現象を数分の一まで激減させて、次の同じ秒間でその力を爆発的に解放する【超過ト霸極之神】で【究極挙動】を強化し、解放した瞬間に【空間之神】で魔法少女ブレイド・ブレイクゥの横に飛び、そのまま縦に一閃、横に一閃。


 ――魔法少女ブレイド・ブレイクゥ、撃破完了。


「――nastroナストロ elasticoエラスティコ


 【堕魔ノ王】を発動し、【お粧しの堕魔の呪法】で床を通して使い魔と悪堕ち魔法少女ドッペルを捕らえる。


「〈Le Théâtreテアトル duドゥ Ultimeウルチム Grandグラン-Guignolギニョール〉!!!」


 竜の翼で飛び回り、張り巡らせた数百万の【粘鋼撚糸】を全て攻撃に繰り出す。

 全ての使い魔と悪堕ち魔法少女ドッペルを切り裂き、魔法少女ブレイド・ブレイクゥと共に【貪食ト銷魂之神】で捕食――ふう、ご馳走様でした。


 ところで、結局使われなかったけど、この日本刀型ステッキdeviseってなんなんだろう? サイトで手に入れるのかな?

 寿命を消費するところは共通しているみたいだし、生に固執するユェンとの相性は最悪そうだな……まあ、寿命のない超越者デスペラードになっているのなら問題なく使えると思うけど。

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