3.町でチンピラに絡まれまして。

 異世界ガイア生活一日目 場所ブルックの町


 周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町。人口は異世界カオスのアルルの町とどっこいどっこいって感じだな。

 街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。二、三人ほどマーカーが立っているので、恐らく門番の詰所か何かだろう。


 中には小さいながらも冒険者ギルドがあるらしい。かつて、成し得なかった夢を世界を越えた先で叶える……ってほどでもないけど、やっぱり異世界モノといえば冒険者ギルドだよね!! 冒険者ギルドに対してはそれなりにロマンを感じているのだよ。


「止まってくれ。……見かけない顔だな。身分を証明できるもの、冒険者カードかステータスプレートの提示。それと、通行税の支払いと町に来た目的を話してくれ」


「おっ、リアル税関だ。What's the purpose of your visit? こういうのってSightseeing――観光っていうのが無難っすよね」


 やる気なさそうな門番が気怠るげな表情で尋ねてきた。……気怠げ過ぎて、気怠げに生きるために努力する矛盾した気怠げ男子高校生を思い出したんだが……うん、きっと疲れているんだね。


「ん? お前が答えるのか? てっきり、お前は取り巻きだと思ったんだけど。……そこの無駄にイケメンな兄ちゃんと、そこの四人の女の子のハーレムと、雑用係の冴えないモブのパーティだと思ったんだが」


「あの、俺帰っていい? 要らない子扱いされているし、もうカオスに戻っていいよね? まあ、その前にこの世界滅ぼすけど??」


「撤収なり。私達の本意はヴァパリア黎明結社にて神殺しならず。草子帰るといはばつきゆく」


 帰還二票入りました……というか、ジューリア。お前もハーレムの一人に数えられているんだよ? ウコンの。


 ≪……なあ、草子。人間って頭おかしい種族なのか? わいと草子――どっちを敵に回した方がヤバいか一目瞭然やろ? いや、わいはオノレをライバルだって思っとるけど≫


「誰が雷神様のライバルだよ!? 病弱で『あなたを僕のライバルに……』と言えなかったライバルが成長してランキング王子になったところで絶対に勝てねえよ!!」


 ≪わいを二回もボコスコにしたのはどこのどいつや?≫


 ウコンの視線を柳のように往なす。ウコンに勝てたのは超越者デスペラードの優位性があったからだよ。ただのモブキャラに神殺しも神ボコしも無理だって。


「なんか済まなかったな。いや、本当に貴方がハーレムの主人だとは思わなかったんだよ」


「いや、そもそも男と女がいるからハーレムってのは早とちりだから。クライアントと同行者とモブキャラと脳筋のパーティであって、決してハーレムではない」


『そうね。私は草子さんのハーレム要因になった覚えはないわ。……まあ、貴方が契約したいというのなら、べ、別に嫌って訳でもないのだけれど』


『私の主人はヱンジュだけです。まあ、ヱンジュが草子さんのことを好きだと言えば、ヱンジュの剣である私も草子さんにこの身を捧げますが』


「おい、そこの剣精霊と闇精霊。勘違いさせるようなこと、戯れでも言うなよ。こんなモブキャラに好意を寄せる奴がいる訳ないだろ? それに一人の方が身軽でいいんだよ。今まで一六年間ほとんど一匹狼で生きてきたんだ。ぼっちなソロプレイって慣れると割と楽しいんだよ?」


「ぼっち違ふ。草子は自然にぼっちになりせざりて、あへてぼっちになるやうに振舞へり。やむごとなければ、守らまほしければ、そのために心より草子を偲ぶ女の子等を纏めて切り捨てしためしを我は知れり」


「ジューリア、余計なことは言わなくていいよ? 俺とお前も目的が一致しているから共に行動しているのであって、俺達は決して仲間ではない。勘違いしてもらっては困る」


 俺はミンティス教国で仲間というものを捨てた。

 俺にはもう仲間はいない。共に旅をする共犯者がいるだけだ。


 誰にも理解されたいとは思わない。俺のエゴは俺のもの、誰からも本当の意味で理解されるとは思っていないから。

 それに、積み重ねた義理を返すためとはいえ、俺を本気でパーティに引き戻そうとした奴らをボコスカにしておいて、新しい仲間を作るってのは申し訳ないからな。


「まあ、その……あれだ。悪かった。……話は戻るが、身分を証明できるもの――ステータスプレートの提示。それと、通行税の支払いと町に来た目的を話してくれ」


「身分を証明できるものはないな。ついさっきこっちに来たばかりなんで……町の冒険者ギルドで冒険者登録をすれば、それが身分の証明になるのだろう? 通行税だが、こっちのお金は持ってないんで、通行税分の金で我慢してくれ。それと、町に来た目的だが冒険者登録とSightseeing――観光だ」


「全く説得力がないな。なんとなく観光だって言っておけばいいなってことだろ? ……まあ、いいよ。――いいか、面倒ごとだけは起こすな。面倒ごとを起こされたらこの町にお前達を入れた俺達が責められるんだからな。それと、通行税は三十ルピだ。ルピがないっていうのなら金でもいいぜ」


「それじゃあ、金だとどれくらいになる?」


「金だと……おっ、ちょうどあった。コイツと同じ量だ」


 取り出したのは少し大きな鉄の塊だった。延べ棒の形になっている。


「ちょっと待っててくれ。……よし、金の延べ棒だ」


「……本気かよと思ったけど、本気だったのか。というか、どっから出した?」


「えっ? どっからって中が四次元になっている皮の袋から?」


「すみません、よく聞き取れませんでした。……まあ、お前がモブな見た目に反して意味不明な化け物だってことは分かった。ほい、これが仮の許可証だ。登録が終わったらすぐにこの詰所に来い」


 お前はSiriか!? って門番に言いたくなったが自重した。

 ってことで一悶着? あったが、ブルックの町に入ることができた。

 そのまま冒険者ギルドに向かって直進。


 ちなみに、「リア充爆発しろ」視線はウコンに集中しているので、俺はノーダメージ。まあ、モブキャラだと思われているからアウトオブ眼中なんだけど。


 ≪おい、草子。なんかオノレ、狡くないか?≫


「よし、冴えないモブキャラの分際で美女美少女と一緒に居やがってと睨まれるテンプレ回避成功。いや、意味分かんないよね? 彼女とかでもなんでもないのにハーレムと勘違いされるって。俺はモブなんで背景に同化します」


 ≪どこの世界に可能性を含めてオムニバースの無限乗……意味不明で計測不可能な力を持ったモブキャラがおるんや?≫


 はっはっは。なんだいオムニバースの無限乗って、最早意味の分からない戦闘力ではないか。というか、オムニバースの無限乗って何? まずオムニバースってのは概念上可能な全ての宇宙ユニバースの集合である。で、無限乗ってのはオムニバースを無限に掛け続ける訳だから……いや、意味不明だよ。というか、このモブキャラがそんなに強い訳ねえだろ? 見た目で察せよ、見た目で。


 男共の「リア充死滅しろ」とか「リア充爆死しろ」とか「リア充消滅しろ」とかの視線が向かない代わりにウコンの視線が痛い。まあ、柳のように往なせるっすけどね。


「というか、オムニバースの無限乗の力を持っていても超越者デスペラードの壁は破れないでしょ?」


 ≪訂正や。どこの世界に超越者デスペラードに至った可能性を含めてオムニバースの無限乗……意味不明で計測不可能な力を持ったモブキャラがおるんや?≫


 そういや、俺、超越者デスペラードだった。

 しかし、可能性を含めてって……それは俺が超越技を解放した場合ってことを意味しているのか? 或いはクリプみたいな奴と契約して魔法少女になるようなことを意味しているのか?

 まあ、神とか天使とか精霊とかは人間とは感覚が違うのだろう。……てゆーか、勘違い? 勘違いが行き過ぎて一周回ってモブキャラが無敵になる夢を見ているのだろうか? ……もしかして、異世界転移男子高校生が飛脚の夢を見るのと同じ現象なの? ってか、見るのか?? 俺が異世界に来て最初に見たのは浅野教授とゼミ生、木下女史と一緒に片田舎のこじんまりとした古本屋で歴史的な大発見の原稿を発見した夢だったんだけど……あれはとんでもなくリアルな夢だったな。もしかして、あれは正夢? 誰の原稿だったかは全く覚えてないけど。


 そうこうしているうちに冒険者ギルド……否自由組合冒険者ギルドに到着……したはいいんだけど。


「おいおいおい! 見ねえ顔だなぁ? 挨拶もなしに通り過ぎようってなぁ、どういう了見だよ? ん? いい女連れているじゃねえか。女だけは通してやるよ。ただし、俺のオンナになるのなら、な」


 はい、出ました、チンピラ男。ギルドに登録しよう行くと、審査してやるとか言って襲ってくる小物だ。テンプレだー! 天麩羅でも天婦羅でもない。

 ちなみに、裏を書いて皇帝をやっている賢者かと思って調べてみたが、ただのチンピラっぽかった。……まあ、そもそも世界剣持っていないから勝ち目ないんだけどね。


 ≪これ、わいが絡まれとるのか? 別にわい、ハーレムの主でもなんでもないんやけど……いや、信者には綺麗どころもようさんいるけどよ≫


「いや、それをここで自慢されてもね。ってかどう考えてもイケメン様の出番でしょ? 俺は見ての通りモブキャラ。空気、アトモスフェア、背景にいる雑用係。雑用王子ではないよ? まあ、ハーレムの主たるウコン様が出るまでもない、ここは取り巻きNの能因草子が出るって展開なら別に出てもいいけど」


「草子は拗ねたり。ハーレム主人公と言はるとも怒り、取り巻きとして扱はるとも怒り、わりなき性格なり」


 ジューリアの無表情が逆に怖い。って言われてもね。別にモブキャラとして扱われるのは慣れているからいいんだよ。ただ、イケメンを見ると条件反射的にイラつくだけで。


「ほぉ、俺程度なら取り巻きだけで十分ってことか? 面白え、舐めてくれた分の落とし前はつけさせてもらうぜ。お前のオンナを奪ってから、絶望させてからたっぷりとボコしてやるぜ。……と、その前に取り巻き野郎だ。お前もイケメンのお零れをもらっているんだろ? ただのモブがいいご身分だな! お前を先にボコスコにしてやるぜ」


 はぁ、面倒だ。なんでこんな面倒なことをしないといけないんだろう?


 力を得て、そのちっぽけなものを振るえばなんでも思い通りになると思っているチンピラ。

 叶えたい願いもエゴもない、力を振るうだけしか能のない雑魚。


 しかも、脳まで筋肉なのだろう。俺が一番嫌いな生物――それが脳筋だ。

 もう、殺しちゃっていいよね?


「ここに焼撃を望む、彼の者を焼け――“火球”!!」


 異世界カオスで言うところの〝劫火球ファイアボール〟か。


 まあ、しばらくはチンピラ男のターンにするか。

 そういえば、《魂魄の大罪スピリット・シン》フレースヴェルグを食べた時に得た【霊煌粒子喰らい】と【霊煌粒子の身体】があったっけ?


「ここに風撃を望むッ、彼の者を切り裂け――“風球”!!」


 【霊煌粒子喰らい】って魂を霊煌粒子に変換する効果と霊煌粒子を喰らう効果があるよな。

 この二つの効果を分離して、片方は霊煌粒子を喰らう効果を【暴食之神】と【絶望ノ王】、後殺す関連で【死の宣告】を混ぜてみるか。もう片方は魂を霊煌粒子に変換する効果を【霊煌粒子の身体】を統合すると……。


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【貪食ト銷魂之神】LEVEL:1

→敵を捕食するスキルだよ! どんなものでも食べられるようになるよ! 対象を魂ごと捕食するよ! 食べた対象の持つ全ての能力を任意で取得できるよ! 魂を食べた相手は転生できなくなるよ! 周囲の物を食べ尽くす性質を味方にも授けるよ! 自らの支配下にある者で適正のある者に任意で能力を還元することができるよ! 仲間の会得した能力を任意で会得することができるよ! 飢えれば飢える程戦闘能力が高まるよ! 食欲の上限を自分の意思で無くすこともできるよ! 対象物を腐食させる腐食効果を持つオーラを操ることもできるよ! 無限大の大きさの異空間に三次元物質を保管しておくことができるよ! 隔離すべき対象を閉じ込めることもできるよ! 食べた際に生まれたエネルギーを異空間に保管して自在に出し入れしたり消費したりすることができるよ! 圧倒的覇気と絶望の波動で相手を威圧するよ! 脅嚇の効果がある咆哮を発せられるよ! 恐怖して心が折れた相手を好きな時に魂を喰らって殺せるようになるよ! 死の宣告が上手くなるよ! 【暴食之神】、【絶望ノ王】、【死の宣告】、【霊煌粒子喰らい】の霊煌粒子を喰らう効果の上位互換だよ!

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【霊煌ノ王】LEVEL:1

→魂を変化させた霊煌粒子を生成して自在に操るよ! 【霊煌粒子の身体】と【霊煌粒子喰らい】の魂を霊煌粒子に変換する効果の上位互換だよ!

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 なんか化け物スキルが完成した。……いや、元々化け物だったんだよ? 化け物が化け物って意味が分からないけど、そう定義する以外に方法がないんだよ?


 しかし、俺のスキルがどんどん『虚空●神アザト●ス』に近づいている気がするんだが……まあきっと気のせいだよな。


「な、なんで俺の魔法が効かない!?」


「あっ、ごめんごめん。すっかり忘れていた《魂魄の大罪スピリット・シン》フレースヴェルグを食って会得したスキルを統合していてすっかり忘れていたんだけど、今何ターン目? 今何問目並みのクイズマニア絶句の難問だ!!」


「……戦闘中にスキル? の統合? って、よく分かりませんけど、絶対舐めていますよね? 草子さんは今、“火球”と“風球”を直撃で受けたところです。全くダメージを受けていないようですが」


 ヱンジュがジト目を向けてくる。今日はジト目パーティなのだろうか? 大変嬉しくないパーティなので可及的速やかに解散してもらいたいものだ。


超越者デスペラードの耐性と【魔法無効】……まあ、効果を発揮しているのは前者の方だな。チンピラ君、こんなモブにも勝てないのに、ハーレムの主のウコン様に勝つとか10000こうねんはやいんだよ!」


 ≪……それって超有名な不思議な生き物を育成するゲームの台詞のパロディやろ? ……っちゅうか、何度も言っとるけどわいはハーレムの主人公がな。……そもそも、どこの世界にラスボスより強い前座がおるんや≫


 いや、ラスボスよりも強い中ボスって割といるよ? まあ、俺は中ボスどころか強くないタイプのスライム以下のモブキャラ(村人N)程度でしかないんだけどさ。


「まあ、ちょっと可哀想だし、俺の耐性を全消ししてやるよ。――エンリ、頼む」


【――システム起動。《神代空間魔法・夢世結界》の発動、完了しました。耐性及び無効スキルの無効化、超越者デスペラードの優位性無効化、HPゲージの表示完了しました】


 さて、やるか。


「タカフミぃ、そんな冴えないモヤシ、とっととやっちゃって、こっちで一緒に飲もうよぉ」


 チンピラについて二つ判明した。一つはタカフミという名前であることと、女連れであること……女連れていて女狙おうって取り巻きの女性にキレられないのだろうか? それとも男は沢山の女を侍らせたい方が偉いっていう謎の風潮があるの??


「まあ、別にいっか。この中では死なない、つまりいくらボコボコにしても問題ないってことだ。エンリ、予定変更。HPゲージ省略、ペインアブソーバーをゼロに」


【畏まりました。《神代空間魔法・夢世結界》のシステムを変更……無限決闘ルールの適応を完了致しました】


 さて、こっちはどうしよっか? とりあえず、【利己主義的な創造主】のスキルのみで白剣を二本作り出すか。


「ふん! よく分かんねえが、わざわざダメージを与えられるようにするとは頭が悪いな! 俺を雑魚としか見ていない、その澄ました面、絶望で歪ませてやるぜ!! ここに焼撃を望む、彼の者を焼け――“火球”!!」


「〈剣技シュウェルテクニック四陣アイン・クアドラットノ斬撃・ヴェクショナイドゥン〉」


 チンピラの火球を回避し、右回転しつつ構え、そのまま左水平薙ぎ、垂直斬り上げ、左水平薙ぎ、垂直斬り下ろしを流れるように繋げるレーゲンの技を発動する。


「〈剣技シュウェルテクニック雷霆シュネーラー・アングルフ万鈞ジー・アイン・ドンナー〉」


 苦痛に顔を歪めた瞬間を狙い、体勢を低くして下半身のバネを一気に解放して突進しながら最速の突きを放つ。

 一度技を出してしまえば自分の意思で止まることはできないが関係ない――そもそも、チンピラに避ける猶予はないんだから。


「〈剣技シュウェルテクニック渦刃ノ輪舞スレックス・ウィー・アイン・ストーデー〉」


「〈剣技改シュウェルテクニックリフォーン雷霆飛竜ブリッツ・フリーグンダー・ドランダー〉」


「〈剣技改シュウェルテクニックリフォーン嵐刃ノ輪舞スレックス・ウィー・アイン・トルナード〉」


「〈剣技シュウェルテクニック衝毒ノ浸透アイネン・ショック・ギーブン〉」


「〈剣技シュウェルテクニック変幻ノ太刀ウバラッションアンダラーフ〉」


 痛みは臨界点を超え、気絶するほどのダメージを精神に刻む。

 しかし、まだ終わらない。

 これは見せしめだ。面倒なことに巻き込むなという警告だ。


「七星流絶剣技 四ノ型 文曲」


「模倣雷神剣技 迅雷隧道突刃」


「ッ! まさか、私の剣技を一度見ただけで模倣したということですか!!」


 ≪なんやて、草子! オノレ、わいの技を奪いやがったんか≫


 ……いや、俺が盗んだ相手は雷切さんであって、断じてお前ではない。


 しかし、この白剣……この程度か。黒雷を流しただけで砕け散りやがった。


「七星流絶剣技 破ノ型 輔星」


「ッ! なんで!? その技は草子さんには見せていない筈!!」


 神威を込めた三十五連撃でフィニッシュ……まあ、そろそろチンピラ君も懲りたと思うからね。


「俺のスキル、【叡慧ト究慧之神】には白崎華代っていう勇者にして聖女っていうスーパーヒロインさんの切り札――【完全掌握 極】と同じ、相手の状態から手に入るありとあらゆる情報を元に相手の動きを読み、戦場を掌握する――その効果がある。俺はヱンジュさんとウコン様の根底、積み重ねてきた研鑽――その全てを見切った、ただそれだけだよ」


 まあ、所詮は上澄みを掬っただけだけどね。結局、俺の技は俺のオリジナルの剣技とオリジナルの魔法剣だけってことになるな。


「……な、なんなんだよ、テメエ。そんなんありか!? お前が取り巻き? 巫山戯んなよ! んな訳ねえだろ!! このハーレムの真の主はソイツじゃなくてお前ってことか! 面倒だから代わりの奴をそれっぽく見せたってことだろ!!」


「ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん、うっせえ。負け犬は黙れ」


 耳障りだったんで、【貪食ト銷魂之神】をチンピラに使ってみた。余波、見物人や連れの女達まで恐慌状態に陥った。後、この場にいるジューリア、ヱンジュ、フツミ、ユエ、ウコン以外の生殺与奪を完全に掌握しちゃったっぽい。

 勿論、生殺与奪は返還しましたよ。いや、だっていらないじゃん。名前も知らない奴の生殺与奪とか。


「えっと、タカフミさんだっけ? 俺達って合格でいいの?」


「…………す、すみませんでした!! 身の程も弁えず、貴方様のハーレム要員に手を出そうとして……本当に悪かったと思っています。……どうか、命だけはご勘弁を!!」


「いや、俺は合格か不合格かって聞いてんだけど。別にお前の命とかどうでもいいし。で、合格? 不合格? 俺達の前に立ち塞がったのって自由組合冒険者ギルドに頼まれてもないのに、ボランティアで冒険者登録にくる奴らを実力を見極める為なんだろ? で、どうなんだ? 合格? 不合格? 不合格なら再試験を要求するけどさ。合格するまでに何度でも挑戦! 資格試験と同じだよな? こういうのって」


「も、勿論合格であります! どうぞお入りくださいであります!!」


 キャラが変わったチンピラを放置して、俺達は自由組合冒険者ギルドに入っていく。

 ……しかし、随分と静かになったな。あっ、鳥が鳴いている……しかし、キー、キーって……チーム名を鷹に変えろという神? の思し召しなのだろうか? いや、チーム名とか元々無いんだけど。

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