「あんた、さてはオター」とか言うまでもなくキャラと言動からお前がギャップ狙いのオタクキャラだってのはバレているのだよ!!

 異世界生活百三十三日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、ダークウォーフの森


 ダークウォーフの森の前回ファフニールとフレイズマルと遭遇した地点に〝移動門ゲート〟を開いて旅を再開。

 魔王領エーイーリーの首都まではそこまで時間掛からなさそうだし、今日中に魔王軍幹部と勝負できそうだな。


 出現する魔獣には特に変化なし。鶫曰く、シャドウレイの森とダークウォーフの森の生態系はほとんど同じらしい……うん、じゃあそれ以外は別の魔獣が出るのかな?


 魔獣といえば、《大罪の九獣ナインス・シン》――あれにも警戒しておかないといけないな。

 まあ、大体は【法則ノ王】でどうにかできそうだけど……というか、やっぱり【法則ノ王】って万能すぎるよね! もうこいつ一人でいいんじゃないかな……ってやっぱり他も有用過ぎるし必要だな。

 というか、王系とか神系とかはぶっ壊れ性能だし、なんで俺のところにあるのか分からない。こういうのって白崎達が持ってそうだよね〜。


聖魔混淆妖刀カオスベウィッチト・ブレイド紅桜-桜花繚乱-の切れ味を試してみたい。ここは私に任せてくれ」


「……鶫さんって俺達の見張り役だよね。というか、俺達がここで野垂れ死んでくれた方が魔族的にはいいんじゃないのか?」


「こんな魔獣、束になって掛かったところでお前の前では無意味だろう? 草子、お前との戦いのために貰った武器を試して慣れておきたいんだ。それが一番お前に勝つ可能性が高いからな」


「なるほど……でも、俺も新しく手に入れたスキルを試したいんだよね。……まあ、俺のスキルって範囲広いし鏖殺になっちゃうからお先にどうぞ。……ジューリアさんも戦いたかったりする?」


「……今回は譲らむ」


 まあ、ジューリアの武器やスキルは新しくなってないし、わざわざここで魔獣を引き受ける必要はないか。


「妖華一刀流・桜吹雪」


 桃色っぽい光を宿して放つ高速突き――弾けた妖力が妖しく輝く。

 しかし、流石は素材を詰めに詰め込んだ聖魔混淆妖刀カオスベウィッチト・ブレイド紅桜-桜花繚乱-。熱したナイフでバターを切るように斬れる斬れる。


「――妖華一刀流・枝垂桜」


 おっ、今度は上から下に斬るのと同時に大量の妖力を無数の枝のように変化させて突き刺す技か。……桜吹雪の方が聖魔混淆妖刀カオスベウィッチト・ブレイド紅桜-桜花繚乱-の剣としての性能を生かせそうだな。


「――妖華一刀流・飛花」


 ん? 今度のは見たことないな。妖力を桜吹雪の竜巻のように巻き起こさせると共に敵に近づき、流れるように斬撃を放つ技ってところか? ……朧流●斬?


「とりあえず、こんなところだな」


「じゃあ、選手交代だ」


 まずは【転移ノ王】を発動して展開した光の中に巻き込んだ魔獣達を一箇所に集める。


「【災禍黒嵐砂塵壁メイルストロム・ハブーブ】」


 【砂塵の王ハブーブ】と【大災禍メイルストロム】を融合したような技で魔獣達を四方から包囲して蹂躙した。……うん、砂まみれで食べられないな。まあ、食べないんだけど。


「【真核熱爆域ニュークリア・スフィア】」


 残った魔獣の内の何体かを放射線を完璧に処理した核熱で包囲して焼き尽くす。こっちは完全に焼き尽くされて何も残らなかった……流石は熱核技。


 【法則ノ王】に関してはこれで十分かな? 残りはどっちかっていうと受け身で使った方が効果を発揮しそうなものばかりだし。


 エルダーワンドを取り出して、刀剣に変形させる。

 【疾走ノ王】で【神速縮地】並みの速度で縮地を発動し、【究極挙動】で最適化された最高速の斬撃を繰り出す。

 が、【圧縮強化 極】を発動したことで三十秒間のエネルギーや現象が数分の一に減少し、速度が明らかに落ちた。


 そして、【圧縮強化 極】の減少効果が消える。解放されたエネルギーは辛うじて【究極挙動】の動きを見ることができていた俺ですら目で終えない【究極挙動】ですら至れない意味不明な速度の斬撃速度に至り、オログディザスターの腕を切り捨てるつもりが余波で片腕と上半身のほとんどが吹き飛んだ。


「……圧縮挙動、とでも名付けるか。めちゃくちゃだな、この威力」


「一体何をしたんだ……斬撃を放ったのなら切れるだけで、消し飛ぶことは無いと思うのだが」


「ああ、〝龍王〟バハムートが持っていた【圧縮強化 極】を使って【究極挙動】の斬撃を強化したんだよ……まあ、ここまで意味不明になるとは思わなかったが」


「……はっ? なんで、草子が〝龍王〟バハムートの力を使えるんだ?」


「えっ、話して無かった? 俺は食べた相手のスキルを任意で会得できるんだよ。俺のスキルのほとんどはそんな感じで魔獣を喰って得たものだ」


 まあ、捕食してスキル会得はスライムに転生する奴とか、錬成師から世界最強になる奴とかで最早王道だし、驚くことでもないよな?


「……なるほど、それが草子の強さということか」


「厳密に言えば、この食べた相手の能力を奪える力だけではないけど、俺の強さの要因の一つなのは間違いないな。……元々は【異食】ってスキルだけど、まさかここまで意味不明になるとはこっち来たばかりの時は思わなかったな」


 俺のバグりの要因は【書誌学】と【異食】と【魔術文化学概論】だからね。

 書物を食べてその内容を完全理解できるのは【書誌学】があるからだし、【魔術文化学概論】が無ければ詠唱が分からないから魔法を使うことができなかった……うん、確実に迷宮で死んでたねー。……笑いごとじゃないけど。


 ……しかし、この【圧縮強化 極】ってスキル。限界を突破するという点では【制限ヲ外ス者】と似ているよな。

 なら、統合したら【圧縮強化 極】を更に強化できたりするんじゃ……。


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【超過之神】LEVEL:1

→制限を解除して限界を超えるよ! 身体のリミッターを外すことができるよ! 最大六十秒までのエネルギーや現象を数分の一まで激減させて次の同じ秒間でその力を爆発的に解放することができるよ! 【制限ヲ外ス者】と【圧縮強化 極】の上位互換だよ!

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 最大効果時間が二倍になった!? というか、神系スキルが三つ目になったんだが……まあ、素材にしたスキルがスキルだからな。当然の結果、なのか?


 そういえば、【制限ヲ外ス者】と同レベルカテゴリーのスキルに【醸サセル者】があったな。あれと【農具理】、【農耕技理】、【咲華】を統合すれば神系スキルになるんじゃ……。


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【豊饒之神】LEVEL:1

→豊饒を司る女神の如き技だよ! 農具使いの真髄を極めるよ! 土壌の状態を確認できる土壌管理、土壌を回復させる土壌管理、指定した範囲を自動で草刈して耕作する範囲耕作、土壌内の異物を栄養に変化させる異物転換、植物や菌の成長を促進させる促成栽培、植物や菌の成長を抑制させる抑制栽培、植物や菌の遺伝子を改変する品種改良、肥料を生成する肥料生成、複数の種類の植物を同時に育成可能な混在育成、自動で植物を収穫できる自動収穫、菌の目視と発酵の操作ができる菌・発酵操作、特殊効果のある花を咲かせられる特殊咲華ができるよ! 【農具理】、【農耕技理】、【咲華】、【醸サセル者】の上位互換だよ!

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 なんとなく愛ちゃん先生豊●の女神っぽいスキルだな。うん、花売り少女の二つ名を持っていたけど、暴力が行き過ぎて暴力サークルから追放されて二つ名を剥奪された人が混じっている気がする。まあ、【咲華】の効果が残ったからだな。


 単に発酵を操作するスキルが三億円の農大生のおかげで大幅に強化されている。

 メタン発酵だけじゃなくて、カビを操作して食パンに文字を書くとかもできそうだな……しないけど。


 結論、屋敷の庭での家庭菜園が楽になりました……あんまり嬉しくないけど、野菜って買うとそこそこ取られるからな。家で育てた方が新鮮だし、案外有用だったりする?


 その後、ジューリアも加わり三人で魔獣を討伐しながらダークウォーフの森を進み、それから二時間後、魔王領エーイーリーの首都に到達したのだった。



 異世界生活百三十三日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領エーイーリー


 魔王領エーイーリーの首都に到着。……到着早々物凄い濃厚な殺意をぶつけられた。


「鶫ちゃん、大丈夫!? ニンゲンに酷いことされなかった!!」


 鶫を庇い、全力でこちらを睨みつけてくる白装束のスタイル抜群なお姉様……ゲフンゲフン。

 雪女だと思ったけど、どうやら違うみたいだな。……氷柱女だった。

 氷柱女って、東北地方や新潟県の伝説に出てくる妖怪で雪女と混同されることがよくある奴だよな。

 話の顛末はいくつかあるけど、大体は風呂に入ってから暫く経っても出てこないから見に行くと湯船に氷の欠片が浮かんでいたって感じだったか。


 異世界カオス産の氷柱女なら湯船を凍らせに行きそうな気がするが……というか、明らかに弱そうじゃないし。


「さて、鶫ちゃんを苛めてくれた貴方達にはどんな責め苦が相応しいでしょうか? うふふ、身体を少しずつ凍らせてからバラバラに砕いていって差し上げましょうか?」


「……あれ、天性? なドSだな。まあ、魔族から敵意を向けられることはあったけど、ここまでのは向けられたことがねえよ。……もっとヤバい奴に会ったことはあるけど……具体的にはイヴ=ハウレンって奴」


 ちっ、いきなり氷柱女が攻撃を仕掛けてきたか。

 【氷掌握】――自在に氷を生み出して操作するスキルか。


 生み出された大量の氷柱――それが無数の棘となって俺とジューリアに襲い掛かる。


「――な、なんで!?」


「あれれ~おかしいぞ~? 氷柱女が自分の氷柱に刺されている? ……全く、いきなり攻撃してきたから耐性解除の結界を貼れなかったじゃないか。いや、これでボコボコにして欲しいってなら容赦なくやるよ? ただ、その場合五箇伝は確実に全滅すると思うけど」


 俺達に向けられた敵意氷柱が氷柱女自身に牙を剥いた理由は簡単――【法則ノ王】を使ったからだ。


 【絶望ノ王】を氷柱女一点に発動する。流石の氷柱女も恐怖には抗えず、崩れ落ちた。


「……くぐい、少しは私の話を聞いてから行動してくれ。草子は因果を超越した存在らしい……その効果で私達の攻撃は全て通用しないようだ」


「鶫っち、冗談はやめて欲しいっす……って、大真面目な鶫さんが冗談を言う筈ないっすね。それが本当ならあれは化け物っす。勝ち目ないっす」


 「っす」口調なのは長身な九本の尻尾を持つお姉さんか。……というか、今更だけど五箇伝って全員女性だな。もしかして、ここの魔王軍幹部って女性なのか? それとも、ハーレム男? リア獣即死しろ!!


「ようやく落ち着いたっぽい? 初めまして、こちらの魔王軍幹部様に挑戦させて頂きたいと連絡を入れさせて頂いた能因草子です。まあ、その前に魔王軍幹部様の守護者である五箇伝の皆様と戦うことになりそうですが。……で、どうします? 魔王領バチカルの時はヘズティスさんの城内で戦ったけど。……それと、物凄い敵意を向けてくる兵士の皆様。流石に全員相手にしていると大変なんで、その敵意を五箇伝の皆様を応援するエネルギーに換えてくだされ」


「確かに、街中で戦ったら被害が出るな。……一度城に戻り確認してくる」


「どれくらい掛かりそうだ?」


「それほど掛からないだろう。私の部下がお前の書状を受け渡している筈だからな」


 ってことで数分待つことになった。その間、鶫を除く五箇伝とその部下達に殺意の篭った視線を向けられ続けるという拷問時間を堪能する羽目になった……まあ、仕方ないけどさ。


「能因草子……であっているっすか?」


 この拷問過ぎる時間に話しかけてきたのは九尾のお姉さんだった。……ん? 気まずい時間が続くと思っていたんだけどな。


「大丈夫、合っているよ」


「実はお願いがあるんすよ。……鶫っちが持っていた武器と防具、あれ、とんでもない代物っすよね? 【武装熱狂者】ってスキルを持っているんで、武器や防具の性能が分かるんすよ。……もし、ウチ達が勝ったら、ウチにもあれと同じレベルの武器を作ってくれないか?」


「もしかしなくても武器オターか。いや、勝敗に関わらず欲しいなら作るよ? 魔王領バチカルの騎士団に剣二万本、刀二万本、槍二万本を納めたこともあったし。……ただ、鶫さんに渡したクラスとなると素材の質が高過ぎるから多くても後五人が限界かな? キリないし、パワーバランスが崩れて宇宙の法則が乱れる? いや、そこまではいかないか?」


「まさか、五箇伝やウチらの上司の分も作ってくれるっすか?」


「……くっ、ニンゲン。お前から施しは受けんぞ! ……鶫ちゃんがあそこまでニンゲンにそこまで心を開くなどあり得ない。きっと、何か汚い手を使ったのだろう? 鶫ちゃんのお姉ちゃんとして、お前だけは絶対に許さん」


水喰みずばみくぐい鉄穴森かんなもりつぐみ……うん、どう考えても血が繋がっているとは思えないね。あれか? 義妹って奴か? ……多分、反応的に勘違いっぽいけど」


「鵠さんがお姉ちゃんとして振る舞うのはいつものことですよ。――初めまして、五箇伝の天啓てんけい 秧鶏くいなと申します」


 この中では一番優しそうな人だな。……だが、種族は座敷わらし……五箇伝の中では最も厄介な相手であることは間違いない。


「……信楽しがらき雲雀ひばりです。ニンゲンに負けるつもりはありません」


 最後の一人はタヌキっぽい耳の生えた女の子……に見える女性か。こういうのを合法ロリっていうんたっけ?

 ……武器はハンマーじゃないのか? しかし、狸と狐って七賢者しちけんじゃの塩・砂糖コンビを彷彿とさせるな。


「あっ、言い忘れてたけど。魔王軍と戦うのは俺だけなので、ジューリアさんには手を出さないように。……まあ、どうしてもって言うなら戦ってもいいと思うけど。難易度が跳ね上がるのは間違いないよ。ジューリアさん、元ミント正教会隠法騎士修道会騎士団長だけど、前から特に魔族に対して敵対心を持っていた訳じゃないみたいだし、今は世界を股にかけて暗躍する秘密結社のメンバーを皆殺しにするためだけに動いているからね」


「……えっ、マジであのミント正教会――魔族を目の敵にしている連中の幹部っすか?」


 敵意が倍増したな……どんだけ嫌われているんだ? ミント正教会。


「ミント正教会は魔族に対して、今後一切干渉しないと思うよ。今は聖都が戦争で荒れて他国侵攻とかしている場合じゃないし。……一応釘を刺してきたから大丈夫だと思うけど。……ただ、ミンティス教国は人間と亜人種の国家連合――国家同盟に加入したから、国家同盟の決まりでミンティス教国が攻め込まれたら集団的自衛権を発動して、その他国から軍隊や冒険者を派遣すると思うけど。……今は魔族の方も大罪とか仮面の連中――開発部門アノニマスの件で大変でしょう? とりあえず、今は人間も魔族も直接戦争は避けるべきだと思うんだよね」


「……なんで、草子がそんなことを知っているのか、雲雀は不思議です」


「いや、なんでって俺が国家同盟創設のある意味元凶だから? ……まあ、予想外な速度で仲違いしていた国が同盟を結んだ挙句、俺を初代議長に指名しやがったんだけど。……信用するかしないかはそっちで決めることだし、過大評価もやめて欲しい。なんかこっち来てから過大評価されっぱなしだからな。勘違い系は御免被るよ」


 なんか勘違いが勘違いを生んでいる気がするんだよね? 俺ってただのバグったモブキャラだよ! モブキャラ・オブ・ザ・イヤーを受賞しそうな特に面白みもないモブキャラだよ!? モフキャラではないよ!!! うん、流石にそれはないってことは知っている。もふもふされたくなぁ〜い!!

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