【三人称視点】壁立千仞に臨む
異世界生活百二十九日目 場所バラシャクシュ遺跡
一ノ瀬達や照次郎達――ミンティス教国到着以降にパーティに加わった面々は意味不明な状況に思わず叫び声を上げそうになった。
襲い来る無数の使徒天使、使徒天使、使徒天使、時々ゴーレム。
某ライトノベルの最終決戦直前のような光景が繰り広げられる中、白崎達は顔色一つ変えずにこれら天使やゴーレムを瞬殺していく。
【瞬間移動】を発動する使徒天使の動きを読んで背後に大剣を突き刺す聖。
自身の身体を水へと変え、無数の分身を作り出して戦うリーファ。
大量の黒剣を操り、敵を切り裂くレーゲン。
彼女らの動きはここにいる面々の中でも頭一つ抜きん出ていたが、それ以外の面々もそれぞれの戦い方で使徒天使を圧倒している。一人たりとも危険を感じさせる戦いを強いられている者はいない。
白崎はここを「効率のいい狩場」と語っていたが、それは彼女達だからこそ成立する話である。
落とす武器や素材――それらは一級品であることに加え、特に使徒天使は大量の経験値を落とすが、その前提には使徒天使相手に余裕で立ち回れる強さが必要である。
「ボクだって負けていられない!!
一ノ瀬が対抗心を燃やし、【死纏】を発動して闇を纏わせた聖槍ロンゴミアントで使徒天使に突きを放つ……が、使徒天使の振るう金光を纏う大剣が聖槍ロンゴミアントの穂先に命中する方が数秒早かった。
結果として、一ノ瀬渾身の突きは弾かれ、穂先が消滅するという結果に終わった。
そこに畳み掛けるように使徒天使は遠心力を用いて加速――照明の人工的な光を反射してキラキラと煌く美しい銀髪を広げながら回転し、大剣を振り下ろす。
「〈
刹那、玲瓏な声が響き渡り、一ノ瀬の視界が変化した。
視線を動かすとさっきまで自分がいた位置に柴田の姿がある。
柴田は一瞥を与えることなく振り下ろしと横薙ぎを躱すと、
「今のは危なかったわね。あの二撃を受けていたら死んでいたわよ」
呆気なく使徒天使を葬った元我儘な女子グループのリーダーに、一ノ瀬は言葉を返せない。
一ノ瀬は柴田達が強くなっていることを理解しているつもりだったが、ここに来て改めてその事実を思い知らされることになった。
「あぁ……穂先消し飛んじゃってますね。これ、コンスタンスさんの【錬成】で直せますか?」
「……これほどの武器を直すは無理だ。そもそも【錬成】は鍛治関連でも大雑把なものに使うもので、刀を作るのなら【刀造】、彫刻を施すのであれば【彫金】のような個別のスキルが必要になる」
「やっぱり草子さんはスペックがおかしいんですね。……僕の力で作れるのは剣だけですし、それ以外の武器と防具を作成する手段を持つ草子さんが抜けると装備面ではかなりのダメージを受けますね」
装備の点ではミンティス教国の保有する伝説級の物を使うというのも手だが、そのスペックは使徒天使の装備に遠く及ばない。使徒天使の装備に及ばないのであれば、草子の作品には絶対に及ばない。
白崎達は改めて自分達に与えられた装備がこの世界において最高峰と言ってもいい作品であることを実感した。
しかも、それらは一部を除いてそれぞれの特性やキャラクターに合わせて考えられた一点ものである。
リシェル商会のジェームスが聞けば卒倒するに違いない――それほどの贅沢を白崎達はしていたのである。
「今こそ収束せよ! 星々の光宿りし聖剣よ! 四つの斬閃によって敵を刻め――《
「至高天に浮かぶ薔薇の如く、万天斬り裂く光、吹き荒み渦巻きて、燦嵐となりて敵を討て――《
照次郎と孝徳も勇者固有技を発動して、なんとか二体の使徒天使を倒した。
だが、二人の切り札を使ってやっと倒せる敵を一瞥すら与えずに瞬殺する白崎達と実力の溝はまだ深い。
「さて……かつての相棒も戻ってきたことだし、初めての二刀流、やってみますか」
レーゲンは聖剣フロッティと聖濫煌剣アイリシュベルグの二刀を鞘から引き抜くと、構えた。
戦うスタイルとしては聖極双剣ジェルヴラ=エンドルゥールを使う孝徳と同じ……しかし、孝徳は初めて使うというレーゲンの【二刀流】が、自分が使い続けてきた【二刀流】よりも遥かに優れたものであることを本能的に感じ取った。
「
キーワードを口にすると同時に【黒雷】を剣に纏わせたレーゲンは地を蹴り、使徒天使に肉薄。
使徒天使達の【分解のオーラ】が込められた銀羽の弾丸を淀みない動きで躱すと、翼のように広げられた二刀で確実に命の灯火を吹き消していく。
「照次郎君、孝徳君。この程度の相手に苦戦していたら魔王領にはとてもじゃないけど行けないよ」
「……全く、冗談キツイぜ。たく、どんな戦いを続ければそんなに強くなれるんだよ」
「照次郎君、ここにいるみんなは最初から強い訳じゃない。僕達は草子さんと共に戦う中で少しずつ強くなっていったんだ。……まあ、それでも草子さんと共に戦うには足りないんだけどね」
レーゲンは照次郎の言葉に返しながら苦笑を浮かべた。
一ノ瀬達や照次郎達にとっては壁立千仞にすら見える実力のレーゲン達ですら、草子の実力には遠く及ばないのだ。
(……きっと、翠雨君達はずっと僕達以上の壁を見ながら旅を続けてきたんだね)
孝徳達から見てレーゲン達の強さが壁立千仞であるとすれば、レーゲン達にとって草子の強さは言葉に表すことすらできないものなのだろう。
果てが存在しないとすら思える圧倒的強さの境地――しかも、そこが果てではなく更に成長の伸び代が残っている……そんな冗談みたいな存在を間近で感じながら、レーゲン達は劣等感を抱きつつも、その仲間として戦うために強さを磨いてきた。
どんなに教授者に力量があったところで、結局本人にやる気が無ければ成長はしない。
草子に教えを請うた者達は、皆強くなるための努力を怠らなかった。
その結果が今のレーゲン達の強さであり、イオン達が一流冒険者として活躍する理由であり、「草子から教授を受ければ強くなれる」という神話の真実であった。
「……僕達も草子さんと一緒に旅をしたかったな。そんな貴重な体験をすることができた翠雨君が羨ましいよ」
「本当に楽しい時間だった。だからこそ、僕達はこのまま草子君とお別れするということを認められないんだよ。……草子君を追いかけるためにはリスクを減らさないといけない。この使徒天使くらいに苦戦していたら魔王は倒せないからね」
「……そうだな。よし、俺も少し頑張るか!」
「そうだね。……それに、倒せば倒しただけレベルが上がって楽になる筈だ。さっさとレベルを上げて翠雨君達に追いつくよ!」
照次郎と孝徳は剣を構え直し、再び使徒天使と対峙する。
「「至高天に浮かぶ薔薇の如く、万天斬り裂く光、吹き荒み渦巻きて、燦嵐となりて敵を討て――《
照次郎と孝徳の作戦は勇者固有技を連発して使徒天使を倒し、レベルを上げるという方法だった。
全力を尽くしてレーゲンの斬撃と同等――その劣等感を無視して最大火力を叩き込む。
今勝てなくてもいつか勝てればそれでいい――その二人の考えはこの場において最も飛躍をもたらすものであった。
「〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝
「〝極寒の世界の冷気よ! 死よりも冷たき愛で凍えさせておくれ! 魂を慄わす愛で包み込んでおくれ〟――〝
「〝轟く雷鳴よ、輝く雷霆よ、降り注いで焼き払え〟――〝
ゼラニウムの上級魔法が相次いで使徒天使に命中する。
「……二発でようやくというところね。随分と頑丈な敵だわ」
「ライトニング・ダブルですわ! ……威力の高い技の筈ですのに、思った以上にダメージを与えられませんわ」
ゼラニウムもメーアも使徒天使相手に苦戦していた。
照次郎や孝徳と同様に使徒天使相手に勝ち星を挙げることはできるが、白崎達のように危なげなくはいかない。それが、ゼラニウム達の今の実力だった。
「〝光の剣よ〟――〝
治癒師という攻撃手段をほとんど持ち得ないジュリアナに至ってはダメージを与えることすら困難であった。
「〝極寒の世界の冷気よ! 死よりも冷たき愛で凍えさせておくれ! 魂を慄わす愛で包み込んでおくれ〟――〝
上級魔法を扱えるコンスタンスとコンビを組むことでなんとか使徒天使を倒すことができている。
ジュリアナは回復役だからという言い訳をすることはできない。同じ回復役である白崎が最前線に立って戦っているのだから。
一ノ瀬が興味を示して以来、白崎に対してライバル心を抱いているジュリアナは回復役という立場に甘えることはできなかった。
◆
異世界生活百三十三日目 場所バラシャクシュ遺跡
初日の遺跡挑戦は照次郎達と一ノ瀬達に大きな課題を残した。
それぞれが前回の改善点を元にそれぞれの為すべきことを為し、三十二日までそれぞれのグループでバラシャクシュ遺跡に挑戦を続けた。
そして、最終日――全員で再びバラシャクシュ遺跡に挑戦し、それぞれの力量の把握することになった。
今回は使徒天使とゴーレムだけでなく機動要塞エレシュキガル・データとも戦闘する。
「まずはあたしから行くよ!」
聖は
聖は【分解のオーラ】を纏わせずに使徒天使の神聖大剣アーティキュルス・エーアスト目掛けて斬り掛かる。相手は【分解のオーラ】を纏わせた双大剣――いくら聖の剣が強力と雖も分解の力には抗えない筈だが……。
「ふふふ、これが美少女大幽霊セイちゃんの力なのです!!」
【ポルターガイスト】のエネルギーを利用することで不可視の霊力の力場を発生し、剣に纏わせて使用する特殊攻撃――〈極撃〉というこの技こそ、聖が五日の修行を経て得た力である。
「次は私ね。――来て、ファンテーヌ! 私に力を貸して!!」
『私の力はリーファ様のもの。我が主人に水の祝福があらんことを』
リーファの身体を青い輝きが包み込み、青いドレス姿へと変える。
「ファンテーヌさん。私達の修行の成果を見せましょう!!」
『――全てはリーファ様の御心のままに』
「『――
リーファはこれまで水を操ることしかできなかった。だけど、水の精霊の力は液体の水を操るだけではない。
リーファは試行錯誤を繰り返して固体の水を操れるようになった。この技は〈
「……あんまり効いていないわね。やっぱり普通に水で斬った方がいいかしら?」
『……その方が良さそうですね』
「『――
結局、リーファとファンテーヌはいつも通り水の斬撃を飛ばして使徒天使を撃破した。
白崎が【分解のオーラ】を宿した
続けて朝倉が
攻撃自体は草子と戦った時と同じだが、その攻撃速度は別物のように大きく上がり、二人の動きから無駄が削られていた。
「〈
柴田の投げたトランプが使徒天使を巻き込んで爆発する。
「【守護者の盾】!!」
岸田の前に巨大な半透明の盾が生まれ、超高速で使徒天使に放たれる。
岸田が特訓の中で
使徒天使の背後にも盾が現れ、二つの盾が使徒天使を押し潰す。
「岸田さん……それ、盾の使い方じゃないわよね?」
【狙撃】と【照準】の上位互換――【狙撃必中】を獲得した八房はベレッタ・モデル92(擬)で使徒天使を一撃で絶命させながらツッコミを入れた。
「八房さん、余所見してていいの?」
「岸田さん、問題ないわよ? この程度の敵にアタシが遅れを取るなんてあり得ないから」
自分の力を過信している訳ではない。ただ、当然の事実を淡々と話すような口調で語りながら、右手に握った
「この程度の相手、【障壁魔法】を使うまでもないわ」
「同感……オトちゃんとアクアちゃんを呼ぶまでないわね」
高津の
その速度は使徒天使の剣速を優に上回っている。
寧ろ、その程度はできて当然。暗黙の了解ではあったが、使徒天使の剣速を超える、或いは使徒天使の剣を見切るのはこの修行の最低条件であった。
現に〈極撃〉を使用して剣を受けた聖以外の面々の攻撃速度は、使徒天使を優に凌駕している。
進藤、久嶋、大門は修行前と変わらず突撃してスキルアシスト無しで使徒天使を倒していく。
実は草子にスキルアシスト無しの【究極挙動】の必要性を考えさせる切っ掛けとなった進藤達脳筋組……ある意味において進藤達は草子に大きな影響を与えているのだが、それに気づいているものはこの場には居なかった。
「〈勾玉顕現・妖狐憑依〉!!」
靄は九つの狐の尻尾と狐耳に姿を変えた。
八岐大蛇の尾より生まれ、十拳剣の刃を砕いた
高天原の八百万の神々が天の安河に集まって、川上の堅石を金敷にして、金山の鉄を用いて作らせた
そして、岩戸隠れの際に後に玉造連の祖神となる玉祖命が作り、八咫鏡とともに太玉命が捧げ持つ榊の木に掛けられた
旅の中で、志島はその効果を草子から聞いていた。
だが、志島は当初その力に興味を持たなかった。【全属性魔法】があれば問題ないと考えているのである。
志島は修行の中で、これまで興味を持たなかった
その後幾多の試行錯誤を繰り返し、その集大成こそがこの妖狐の力なのである。
「〝真紅の炎よ、火球となって焼き尽くせ〟――〝
紡ぐのは火属性初級魔法〝
いや、正確に言えば【狐火】に〝
これこそ、志島がヴァパリア黎明結社と戦うための最低限――【魔法無効】を貫通するための力として編み出した魔法妖術化の技であった。
無数の青白い火球が使徒天使に襲い掛かる。初級魔法を使用したためか大したダメージを与えることはできなかった。
だが、志島にとってはそれで十分。
志島が会得した【抜刀術】のスキルを利用した技――〈抜刀・流水之太刀〉である。
「さっきの狐火との融合って確か地球にいた頃に草子君がオススメしてくれた百合異世界モノの登場人物の一人が使っていた奴よね?」
「その通りよ。BL好きに百合を勧めたあの時は内心『舐めてるの! コイツ』って思ったけど確かに素晴らしい作品だったわね。流石は草子君だわ」
ヲタクよりも更に一段階上を行っている【同時代殺し】に等しい草子には及ばないが、志島達もヲタクである。
その知識を活かして異世界カオスに存在しなかった戦闘スタイルを生み出すことは志島達にも十分可能であった。
一は
「降り注げ、地を焦がす稲妻。災いを齎す竜となれ」
続いて一は【降雷】を発動し、【雷操作】でその雷に竜の形を与える。
某吸血姫の雷龍や草子がイオン戦で見せた〝エレクトリカル・ドラグーン〟の応用である。
【雷操作・雷降竜】は使徒天使達を焼き尽した。
一はその結果を見て満足げに微笑むと、
「〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝
「〝轟く雷鳴よ、輝く雷霆よ、降り注いで焼き払え〟――〝
柊とミュラの上級魔法が廊下奥の使徒天使の群れを蹂躙する。
「南空に浮かぶ十字架の形となりて、我が敵に慈悲を与えよ――《
「今こそ収束せよ! 星々の光宿りし聖剣よ! 四つの斬閃によって敵を刻め――《
「全天で最も輝く星の輝きよ、我が正義の心に宿りて、悪に堕ちたる愚鈍を断罪せよ――《
照次郎の四連攻撃、孝徳の十字斬り、レーゲンの青い光の奔流が使徒天使を消し飛ばひた。
「〝
ロゼッタの
「今ですわよ、イセルガ」
「……お嬢様は人使いが荒いですね」
左ジャブ、右ストレート、左アッパー。右回し蹴り――イセルガの連撃が次々と使徒天使に襲い掛かる。
「……あっ、いけない。
〝
ロゼッタほどの使い手が
「……ロゼッタお嬢様。ますますドSにお成りになられて……まさに悪役令嬢でございますね」
「世界のために死になさい! イセルガ!!」
仲間を殺す行為をするロゼッタを止める者はいない。イセルガはこのパーティで最も人望が無かった。
イセルガに双大剣が迫り、そのまま首を落とす……と見せかけて首を擦り抜けた。
イセルガのスキル――【物質透過】の効果である。
「……ちっ、失敗したわね」
「ロゼッタお嬢様、淑女の仮面が粉砕されていますよ?」
「もう貴族じゃないんだし、問題ないわよ。普通の女の子になったんだから淑女とかどうでもいいわ」
「普通の女の子は殺人をしないと思いますが?」
「……何か言ったかしら?」
「いえ、何でもございません」
ロゼッタの気迫に押されて何も言えなくなるイセルガに同情する者は居なかった。安定の嫌われ執事である。
「――Wonder change! Magical girl!!」
眩い光がアイリスを包み込む。地味だった少女の姿から占い師の衣装に大量のフリルをあしらった魔法少女の姿へと変化した。
その手に持つのは
この姿はアイリス自身が志願して二度目の魔法少女化の儀式を行った結果である。
情報思念体フリズスキャールヴは魔法少女をエネルギーを生み出す装置としてしか見ておらず、これまで同じ人間に二度の魔法少女化を行うことは無かった。
クリプ自身は不可能だと思いながらも、自分の存在を認めてくれたアイリスに報いるために二度目の魔法少女化の儀式を行った結果、アイリスは新たな力を得るに至った。
新たな魔法の名は【槍戦聖女】――その力は槍を自由自在に操るというものである。
「〝小型大量槍魔法〟――〝
アイリスの投げた槍が割れ、無数の小さな槍となって使徒天使に襲い掛かる。
「〝時間早送り魔法〟――〝
アイリスが新たに作り出した巨大な水晶玉に映し出された小さな槍が一斉に加速した。
加速した小さな槍は使徒天使を貫き、絶命させる。
「ボクも負けてられないな」
一ノ瀬はミント正教会から譲ってもらった神聖煌槍デュエッシュレーィトを握り締め、突撃攻撃を仕掛ける――その身に白鳥の如き白き羽衣を身に纏って。
一ノ瀬がミント正教会最強の
一ノ瀬が突きを放つ直前、神聖煌槍デュエッシュレーィトにルーン文字が宿る。
もう一つのスキル【ルーン魔術】――ルーン文字を刻むことで古代魔術を発動するこのスキルの効果で、一ノ瀬の槍は圧倒的速度と攻撃力を獲得した。
使徒天使の斬撃を上回る速度で突きを放ち、【螺旋槍撃】の効果でその胸を削り取る。
結果として、一ノ瀬は初日の雪辱を果たした。
(〝雷光を内包する竜巻よ、凡ゆるものを焼き尽くせ〟――〝サンダー・テンペスト〟)
ゼラニウムは【無詠唱魔法】を使用し、雷を内包した黒い竜巻を発生させる。
竜巻は床を削りながら使徒天使の群れに襲い掛かり、竜巻に巻き込まれた使徒天使は雷に焼き尽くされた絶命した。
ゼラニウムが試行錯誤の末に到達した【魔法創作】は必要な手順を踏まずに新たな魔法を作り出すというものだ。
草子の持つ【魔術文化学概論】の劣化版だが、新たな魔法を生み出すための条件が厳しいこのカオスな世界においては大きな強みになる。
そして、この魔法は【風魔法】、【水魔法】、そして新たに獲得した【雷魔法】の【複合魔法】――ゼラニウムはこの修行期間の間に魔法分野で自分の限界をいくつも突破していた。
「『焔操魔導モルジアナ』をセットですわ!!
ブラジャー風のトップスにサーキュラー・スカートを合わせた扇情的な衣装を纏った浅黒い肌の少女の姿になったメーアが、敵を攻撃する追尾効果を備えた紅炎を解き放つ。
炎に呑まれた使徒天使は、その美しい肌を黒い煤で染めながら絶命した。
「〝万象を滅却する波動よ! 相反する相剋の力によりて顕現し、その力を思う存分揮い給え! 灰は灰に塵は塵に戻りて万物須らく円環の輪へと還る。今こそその輪を外れ、滅びの道を進み給え〟――〝
ジュリアナの手から万物を分解する輝きが放たれる。
回復職だからといってその立場に甘える訳にはいかないと思ったジュリアナは、恥を忍んで白崎に教えを乞うた。
その結果、ジュリアナは使徒天使を一撃で消し飛ばすことすら可能な高火力魔法師になった。
最早、誰も彼女を足手纏いだとは思わないだろう。
「〝我が仲間に力の加護を与えよ〟――〝
「〝我が仲間に守りの加護を与えよ〟――〝
「〝我が仲間に速さの加護を与えよ〟――〝
コンスタンスは自身に【付与魔法】を掛けてからミスリルソードを持って地を蹴る。
レベルアップで向上したステータスと【付与魔法】の相乗効果で使徒天使を上回ったコンスタンスの【唐竹】は、使徒天使を一撃で粉砕した。
「もう少しで機動要塞エレシュキガル・データの部屋よ!」
聖の言葉を聞き、気を引き締め直した白崎達は巨大な扉を目指して駆け出した。
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