『氷雪の森に聖夜の願いを 後編』
さて、うちのクラスの問題児どもはとりあえず大丈夫そうだ。
他の方も自力でどうにかできそうだ。まあ、数で押せばレベル差はひっくり返せるからな。
リーダーの資質がある人を中心に何人かでパーティを組み、複数で一体を倒すことを意識すれば問題なく倒せる。魔獣を倒していけばレベルが上がり、より簡単に倒せるようになる。この循環に入れば後は安心だ。
……まあ、問題は貴族の
全員がリーダーをやろうとしたら、船頭多くして船山に上る。
目立ちたがり屋ばかりが集まっても連携が取れずに失敗する。……まあ、この季節の氷雪の森自体かなり難易度高いから、そこそこ凄腕の冒険者でも挑戦を諦めたりするらしいんだけど。
実際にかなりの数が脱落している。……何故かうちのクラスの連中は普通に残ってんだけど。
まあ、お客様だから優秀なクラスを任されたということもあるだろうけど。……優秀だけど
……おっ、あれはロゼッタ、プリムラ、ジルフォンド、ヴァングレイ、シャート、フィード、ノエリアのグループか。
というか、チーム生徒会? 指揮はプリムラがしてるっぽい? 流石は乙女ゲーム『The LOVE STORY of Primula』の主人公だな。
ロゼッタはプリムラの指揮下に入らずに全員のサポートに回りながら縦横無尽に戦っている。
「
六つの
突如中空に現れた
「「〝真紅の炎よ、槍となって貫け〟――〝
ヴァングレイとノエリアの同時詠唱か。異口同音――愛の共同作業(焼尽)って奴?
「ランク:
フィードはカードを使って魔獣を呼び出し、戦わせる戦法か。
ヴァパリア黎明結社産の魔獣はやっぱり強いな。次々と
「……流石に
「分かりました。フィード先輩は後方で援護をお願いします。……ロゼッタ様、大丈夫ですか?」
「問題ありませんわ。この程度、エレシュキガル・データに比べたら雑魚も同然ですわよ!!」
……うん、そりゃね。エレシュキガル・データに比べたらほとんどの魔獣が雑魚ですよ。
強くなったなぁ、ロゼッタ。まあ、元々強いんだけど。
「ラビラビ、アッパー!!」
「焼き尽くせ! ――
巨大化したラビラビのアッパーとジルフォンドの【魔法剣】か。かなり強化されているけど、まだまだだな。
「
ジルフォンドに向かって振りかざされる薙刀をロゼッタの
「ありがとうございます、ロゼッタ」
「これくらい、なんでもありませんわ。……次、来ますわよ」
ああ、【絶対零度】か。コイツは直接冷気を操作するスキルだから障壁もほとんど意味をなさないんだよね。
……まあ、できたら、だけど。
「〝
中空に出現した
……今回、大活躍だな。
こっちはもう大丈夫そうだ。
……参加者が大分減っている。リタイア続出だな。残っているのは……ロゼッタのグループとマイアーレのグループだけか。
んじゃ、終わったところで合流してサパン・ド・ノエルのある最奥に向かうか。
◆
「よっ、大丈夫だったか?」
「全然相手にならなかったわ。背後から爆弾投げたらそれで終わりだったわよ」
聖達と合流し、ここからは一塊りでサパン・ド・ノエルを目指す。
聖にとってはかなり物足りない戦いだったようだ。……いや、違うか。聖達にとっては物足りない戦いだったようだ。
伝説の勇者パーティの白崎達が、こんなところで負ける筈がないからね。
「草子殿。私は脱落した学生達の元に行ってくる。……ロゼッタ、プリムラ、ジルフォンド、ヴァングレイ、シャート、フィード、ノエリア、ヴィクティーヌ、エカテリーゼ、ギンフィール、シャンテル、マイアーレ、君達の健闘を祈っているぞ」
セリスティア学園長は、残ったメンバーにエールを送ると森の入り口へと戻っていった。
「んじゃ、そろそろ行くか。エカテリーゼ達に言ったけど、真っ赤な服の小父さんが出てくる年もあるから気をつけてね。……って、出てきたら俺が殺るけど。いや、ずっと暇だったからそろそろ戦いたいんだよね」
「草子さんって意外と戦闘狂ですよね? 本好きを拗らせた変態の上に戦闘狂って……私のこと、あんまり笑えませんよ?」
「リーファさん。俺は人に迷惑を掛けてないよ? それに、見境なくボコっている訳じゃないし。節度を守って常識的に生きていれば、別に変態でも問題ないって俺は思っているんだよ」
「……草子様、でしたら私は問題ないですよね?」
「イセルガ君、君ちゃんと俺の話聞いてた? お前は存在そのものがアウトだよ!!」
イセルガとアイリスは存在そのものが変態だから、別格扱いなんだよ?
全員でサパン・ド・ノエルのある最奥に向かう。
最奥には、真っ赤な服の小父さんがいた……やっぱりか。まあ、いるよね。
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NAME:NIGHTMARE of the SANTA CLAUS
LEVEL:666
HP:666666/666666
MP:6666666/6666666
STR:6666666
DEX:6666666
INT:6666666
CON:6666666
APP:-6666666
POW:6666666
LUCK:6666666
SKILL
【シャドウ・クリスマス】LEVEL:6666
→大量の影のサンタクロースを召喚するよ!
【クリスマス・ブリザード】LEVEL:6666
→猛烈な吹雪を発生させるよ!
【ジングル・ベル】LEVEL:6666
→鐘を鳴らしてダメージを与えるよ!
【レーンディア・アタック】LEVEL:6666
→氷像のトナカイに攻撃させるよ!
【ナイトメア・オブ・クリスマス】LEVEL:6666
→猛烈な黒い吹雪で辺り一帯を薙ぎ払うよ!
ITEM
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NIGHTMARE of the SANTA CLAUS……英語表記の魔獣、初じゃね?
ステータスもやべえな。ヨルムンガンドに迫る勢いじゃないか。
おっ、NIGHTMARE of the SANTA CLAUSがソリに乗ってそのまま空に昇っていった。……って、空中戦かよ!!
地上から攻撃するとなるとかなり厳しい戦いになるよな。
んじゃ、【空歩】を使って登りますか。
(〝
よし、先手必勝。NIGHTMARE of the SANTA CLAUSに直撃したけど、どれくらい削れたかな?
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NAME:NIGHTMARE of the SANTA CLAUS
LEVEL:666
HP:600000/666666
MP:6666666/6666666
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あんまり効いてないっぽい。固えな、コイツ。
大量の黒いサンタクロースがNIGHTMARE of the SANTA CLAUSの乗るソリから溶け出すように現れる……【シャドウ・クリスマス】か。
(〝神聖にして大いなる光よ! 眩い光と共に世界を照らせ! その光で全ての諸悪を消し飛ばせ〟――〝
影のサンタクロースに【神聖魔法】は効果抜群だと思ったんだけど、実際に効果抜群だった。
(〝世界を構成する有象無象よ、元素となって、新たな世界を作る糧となれ〟――〝エレメント・スキャター〟)
鈍色の魔法陣が一瞬現れ、消えるのと同時にNIGHTMARE of the SANTA CLAUSの腕がが青白い輝きを放って四散した。……ちっ、躱されたか。
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NAME:NIGHTMARE of the SANTA CLAUS
LEVEL:666
HP:400000/666666
MP:6666666/6666666
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でも、腕を落とした分、直接爆破するよりダメージを与えられたようだ。
NIGHTMARE of the SANTA CLAUSが反撃とばかりに猛吹雪を放ってくる……【クリスマス・ブリザード】か。
(〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝
ふう、なんとか相殺できた。……流石にNIGHTMARE of the SANTA CLAUSまで巻き込むのは無理だったな。
次はベルを鳴らしてきたか、【ジングル・ベル】か……五月蠅い、のか? 白崎達は五月蠅そうに耳を塞いでいるけど。
まあ、【状態異常無効】があるから必要以上の騒音はカットされるんだよね。
で、その次は【レーンディア・アタック】か。畳み掛けてくるな。
「【魔法剣・
刀剣に変化させたエルダーワンドに闇を纏わせる。
「
闇を纏わせた斬撃を飛ばす。氷像のトナカイ達、撃破。
そのままNIGHTMARE of the SANTA CLAUSの残ったもう一本の腕に向かって斬撃を飛ばした……よし、落とせた。〝エレメント・スキャター〟を打つよりもコストを低くできるな。
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NAME:NIGHTMARE of the SANTA CLAUS
LEVEL:666
HP:200000/666666
MP:6666666/6666666
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大分削れたな。このペースだとあと一撃浴びせれば撃沈させられるか?
『クリスマスに浮かれるリア充共よ!! そんなにも
全てのぼっちに捧げる黒い雪の嵐ってことか? ……なんで、万年ぼっちのレジェンドマスターぼっちに向けてるの? もっといるじゃん、イチャついている奴。
まあいいか。これが、【ナイトメア・オブ・クリスマス】……NIGHTMARE of the SANTA CLAUSの必殺技ね。
コイツを破れば、NIGHTMARE of the SANTA CLAUSの手札は全部封じたことになるか。
【黒焔爆熱陣】で迎え撃つか。黒には黒……なんてね。
「【黒焔爆熱陣】!!」
【ナイトメア・オブ・クリスマス】、粉砕……よし、後はNIGHTMARE of the SANTA CLAUSを倒すか。
まずは……【瞬間移動】。
「
縁を描くようにエルダーワンドを動かしてから中心を突き、出現した魔法陣から飛び出した巨大な切っ先がNIGHTMARE of the SANTA CLAUSの腹を中心に上半身を吹き飛ばす。
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NAME:NIGHTMARE of the SANTA CLAUS
LEVEL:666
HP:0/666666
MP:6666666/6666666
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ふう、撃破か。……雪になって消えちゃったからスキル回収は無理そうだな。
んじゃ、最後のイベント、行きますか。
◆
サパン・ド・ノエルに、聖が、リーファが、白崎が、朝倉が、北岡が、ロゼッタが、柴田が、岸田が、八房が、高津が、常盤が、志島が、
イセルガとアイリスは怪しげな願いを書いていないか、後で確認してみないといけないな。
ちなみに、リーファは腐女子関連の願いじゃないらしいので、その言葉を信じて見逃すことにした。
白崎と聖とロゼッタがなんだかガッカリしていたような気がするが、多分気のせいだろう。
……しかし、本当に願いが叶うのだろうか? 願いを叶えるって要するに因果干渉だろ? いくら魔力があっても流石に厳しいんじゃ。
まあ、一度調べてみれば分かるか。――【叡慧ヲ窮メシ者】。
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・樅の木
→普通の樅の木だよ!
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いや、どう見ても普通の樅の木だよ! 願いを叶えるってフレーバーテキストはどこにも書いてないようだ。
……もしかして、これって「ここまでの過酷な試練を突破する強い意思があるのなら、願いの一つや二つ、叶えられる」って話なのか?
「ねえ、草子君。草子君は、一体どんな願いを書くの?」
「……そうだな。どうしよっかな?」
「やっぱり、沢山本を食べられますように、とか?」
「まあ、そんなところかな?」
やっぱり、夢は自分で叶えるものだ。だから、俺は決してサパン・ド・ノエルに願わない。
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俺は必ず地球の、浅野ゼミに帰る。そのためには、どんな手だって使う。
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今の覚悟を書いた紙を入れたオーナメントをサパン・ド・ノエルに掛けた俺は、聖達と共にサパン・ド・ノエルのある最奥部を後にした。
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