文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
【看破】ってスキルは確かに便利だけど見ただけで犯人が分かってしまうから相国寺警部やシャーロック・ホームズのように推理ができないというのは意外と大きな欠点だと思う。贅沢な悩みだけど……。
【看破】ってスキルは確かに便利だけど見ただけで犯人が分かってしまうから相国寺警部やシャーロック・ホームズのように推理ができないというのは意外と大きな欠点だと思う。贅沢な悩みだけど……。
異世界生活五十五日目 場所エリシェラ学園
白崎達に事情を説明し、全員でエリシェラ学園へ。
拘束した自称アノニマスさんは、【重力魔法】で三センチ浮かせながら運んだんだけど、かなりの注目を集めたみたいだ……ですよね!!
学園に戻った理由は推理を聞かせるためだ。といっても最初から犯人分かっていたんだけどね。勿論眠ったりしないよ!
「皆様お集まりいただき、ありがとうございます」
一応生徒会室に集めてみた。ついでなのでセリスティア学園長も呼んでみた。
「えー。本日、皆様にお集まりいただいた理由はそこで三センチ浮いている方が原因です。……先程襲撃を受けまして。貴族街で……あっ、証言ならしてくれると思いますよ。かなりの方が見ていたので。いや、しんどかった、というか死ぬかと思った。まあ、冗談ですけど……正直なところ、あの場で新しい魔法の扉を開かなければ長期戦は免れなかったでしょう。うん、どっちも死なないパターンで終わってたな」
あの、そこまで大事じゃないので、心配そうな表情を向けなくてもいいですよ。特に、白崎さん達とロゼッタ様。
「新しい魔法の扉か……興味深いな」
「流石にお教えできませんし、オリジナルの魔法なのでセリスティア学園長にも使えません」
「そうか……残念だ」
「話を戻しましょう。今回襲撃を仕掛けてきたのは、歴史の裏で暗躍する秘密結社――ヴァパリアのメンバーです。アノニマスと名乗っておりますが、俺の前では偽名など無意味です。とりあえず、仮面剥ぎますね」
面倒だったので剥いで無かったんだけど。剥がないと分からないので。
「まさか、ロンド=スコールト」
そこで驚きの声をあげたのは、ノエリア様。……本当にすみません。
「その通り、フォートレス伯爵家の筆頭執事です。さて、かなり真相に近づいてきたところで、一人目の証言者に登場いただきましょう」
見目麗しい令嬢が登場。みんな疑問符を浮かべている。まあ、そうだよねー。
「自己紹介をいただけますか?」
「はい。私は、マイアーレ=ノルマンディーと申します。かつては、ディスクルトゥ=ノルマンディーと名乗っておりました」
「「「「「「「「「「もしかして、あの時の貴族!!」」」」」」」」」」
「……ねえ、草子君。どういうことなの?」
「いや、まさか俺もこうなるとは。【性転換】スキルできっかけを与えたら、ダイエットに成功して豚草姫を卒業し、更に宛らメアリ嬢の如き大変貌を遂げられたのです……うん、どうしてこうなった!?」
「……その理由は草子様にお伝え致しましたが」
「いや、『どうしてこうなった!』は定型文なので、お気になさらず。いつまで経っても話が進まないので証言をお願い致します」
「はい。私は、まだディスクルトゥという愚かな貴族だった頃、アノニマスを名乗る仮面の男にカードを託され、草子様に戦いを挑みました」
「草子君が教室に遅れてきた日ですね」
「その通りです。私はアノニマスと出会った時、ある言葉を聞きました。そう、あれは確か満月の夜でした。……『ワタクシは主人様よりデータを取るようにと仰せつかっております』と、そう確かに」
「マイアーレ様、証言ありがとうございます。さて、ここで二つの解釈ができることを先にお伝え致します。一つは、アノニマスが語ったという『とある機関の開発部門』……まあ、ヴァパリア黎明結社の開発部門のことでしょうが……ここの直属の上司。ですが、上司のことを主人様というのは少し違和感があります。ご主人様や主人様というのは、普通メイドや執事等を雇って働かせる人間、及びその人間に対して従者が呼称する呼び名です。……まあ、面白半分で上司が呼ばせている可能性も……あるのかな? まあ、無いに等しい可能性ですね。もう一つは、仕える主人――つまり、仕える貴族……つまり、フォートレス伯爵家の誰かという可能性が高くなる訳です」
まあ、驚きますよね。衝撃の真実ゥですよね。リーファとか、自分の弟がとんでもない奴だと知った時と同じ表情をしているよ……本当にごめんなさい! でも、やられたままで狸寝入りは無理なんです! 性分的に。
「ここで考えられるのは、フォートレス伯爵家のご主人と奥方様――つまりフィード様とノエリア様の両親。そして、フィード様とノエリア様の四人となります」
「そんなことある筈がありませんわ! 私はヴァパリア黎明結社なんて知りませんでしたし、お兄様だってお父様だってお母様だって関係ありませんわ! 草子様、いくらなんでも冗談で言っていいことと悪いことがあります」
だから、嫌だったんだって。ノエリア様が悲しむことになるから。仕掛けてこなかったら放置したのに……はあ。
まあ、悪役は慣れているけどね。ロゼッタ様以上に悪役令嬢向いているんでじゃないかな? 男だけど。……えっ? 【性転換】使えって? とりあえず聞き流しますー。
「さて、決定的な証拠を突きつけます。二人目の証言者に登場いただきましょう」
扉をすり抜けて現れたのは、聖。
「よっ、久しぶり。爆弾魔は治った?」
『爆弾魔な幽霊は廃業しないわよ! ただいま、草子君』
「……なんで、聖さんがいるんですか? 確か喧嘩別れしたんじゃ」
『皆様、誤解させてしまい申し訳ありません。実は全て名女優聖ちゃんの演技なのでした』
「名女優は余計かな?」
『そういうことにしときなさいよ。一ヶ月も頑張ったんだから。はい、どうぞ』
聖に渡しておいたものを返してもらった。
「聖さん、お久しぶりです。やっぱりあの喧嘩は演技だったんだね。……でも、あの涙は」
『草子君が言う筈ないし、白崎さんは自力で気づいてくれたんだ。あたし、嬉しいよ♪ えっと、なんで涙が出たかって? 草子君から【演劇】のスキルを教えてもらったからだよ』
「まあ、そんな感じだ。演技素人でもスキルさえあればどうにかなる。一見使えなさそうに見えても使い方次第でとんでもない効力を発揮したりするもんだ。まあ、今回はそんなに予想外の使い方をしたって訳でもないけど。……えっと、どこまで行ったっけ? あっ、終盤だった。犯人は誰かってことだよね。実は、これ自作のビデオカメラ的なものでね。ここに、アノニマスとご主人様が話している場面が映ってます……だよね?」
『うん。要望通り撮ってきたよ。気が進まなかったけど』
「それについては俺も同意。推理のワクワク感もないし、悲しみしか生まないし、俺どう見ても悪役だし、ぶっちゃけ嫌だったけどね。保険で打った手が本当に必要になるとは。……それじゃあ、再生するよ」
うん、映ってるね。今回の首謀者が――フィードの姿が、音声付きで。場所は……学園の倉庫?
「いつから気づいていたのですか? 能因先生」
「最初から? 要するに、生徒会室で初めて会った時から。俺には【看破】があるから個人情報なんて筒抜けなんだよ。つまり、知ってて放置した? いや、違うか。この未来が予測できていたから、知らないフリをしたんだよ。でも、本当に予測通りになるとは思わなかった。本当に最悪のエンディングだよ……」
「……お兄様、嘘だと言ってください!」
ノエリアだけじゃない。ロゼッタが、みんなが悲しむことになる……多分乙女ゲーム『The LOVE STORY of Primula』にもこれほど悲しいエンディングは無かったと思う。
「一つだけ【看破】できなかったことがある。残念ながら、俺は相国寺警部やシャーロック・ホームズみたいに推理はできないもんでね。多分、ヴァパリア黎明結社に元々所属していたのはロンドで、フィード様はロンドに教えられて所属するようになったんだと思う。……だけど、所属しようと思った理由は分からない」
「そこまで見通されたのなら、もう立派な推理ですよ、能因先生。俺はね、この世界をいずれ来る破滅から救いたいんですよ」
……はっ? どうしてそうなるの? いや、本当に予測してなかった方に話が進み始めたんですけど!!
「
「……永劫回帰」
何故ロゼッタが知っているのかは分からないけど、なるほど、そういうことか。
「それが、ヴァパリア黎明結社の首魁のチートスキルということか。大方、世界中の人間の認識を操作することによって、世界を作り変えることができるってところだろう。……だから、【因果耐性】スキルか。やっと分かったよ。自分達だけはその変化を知覚できるってことか。……どこの宗教の終末思想だよ!! ……黙示録の天使を召喚するつもりなのか?」
「流石は能因先生。察しがいいですね。……ヴァパリア黎明結社に所属する者にのみ教えられる秘密ですが、少しヒントを与えただけで読み解かれるとは」
「生憎と、ラノベも含めて色々読み込んでいるのでね。確か、元ネタはフリードリヒ・ニーチェの思想で、経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、超人的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に、永劫的に繰り返すことを確立するというものだろ?」
「……さあ、そこまでは」
知らないようだ。まあ、元ネタが通用しなくてもスキルになっていることってあるよね。異世界あるある? あるあるネタなの? アル中なの? だからお酒はほどほどにしときなさいって言ったんだよ! 最近お酒で不祥事やらかす人多いから!! ……って何の話だっけ?
「しかし……お前って賢すぎるパターンだよな。よく見えちまうから、先を読んで回避しようと手を打つ。だいたいそのタイプって世間からは変人扱いされるんだよ。早すぎた天才的な?」
「理解されようとは思いません。俺は俺の正義に従ってヴァパリア黎明結社の開発部門に所属している」
「まあ、それを悪く言うつもりはないよ。ぶっちゃけ、誰が正義かって分かんないだろ? 勝てば官軍、負ければ賊軍だ。まあ、Le japonって国だと負けた方が有名になるけど。俺が正義だとは言わない。誰にだって信じる正義がある。信じるものがある。白崎さんにだって、ロゼッタさんにだって、みんなにだって。それが世間という目で見てどう判断されるかは、この際横に置いておこう。俺の道は、地球に、故郷に帰ること。浅野ゼミに、自分の居場所に帰ること。そのためには、どんな手段を行使することも厭わない。――道を突き通せるのはどちらか一方なら、どちらか一方が折れるしかない。――俺の
◆
流石に生徒会室では戦えないということで、学内にある魔法訓練施設の一つに移動。……あったんだー。知らなかったよ。
えっ? お前非常勤でも講師やってるのになんで知らなかったんだって? いや、別に図書館と食堂以外に興味なかったから。
施設内には生徒会室にいたメンバーしかいない。一応、ロ……なんだっけ? あの執事は床に放置して置いた。そのうち目を覚ますんじゃね?
「さてと……もしかして、またあの面倒な奴ら呼ばれたりする? 硬いのはご勘弁なんだけど」
「ご安心ください。俺に割り当てられているのはあの一組だけですので」
「さいですか。わざわざご丁寧にどうも。じゃあ、こっちも。フルゴ……なんだっけ? アイツを倒した貫通即死魔法なんだけど、あれ暫く使えないから。これで借りは返したよ」
「能因先生って律儀ですよね。……見かけによらず」
「見かけによらず、は余計だよ。実は俺って地蔵菩薩並みに慈悲があるんだよ。って、閻魔大王と同一視されるってことは怖いってことになるじゃん! まあ、その閻魔大王も最近は弱気な感じに描かれるけど。第一補佐官様を召喚しなくては」
「能因先生の例えは分かりかねます。……行きますよ!」
「ランク:
「ランク:
「ランク:
……あの、伝説の三騎士ですか? レジェンドなハートがあるのですか? いや、騎士なのはヘルモクラテスだけか。
しかし、随分厄介? レベル450が三体? どうなんだろう? ……そこまで強くないよね?
「俺の力では能因先生を倒すことができません。俺は、『FANTASY CARDs』の生みの親にして
七十二……17世紀から伝わる作者不明のグリモワール『レメゲトン』の第一書「ゴエティア」にも関わるソロモン王が使役したという悪魔と関係があるの?
まあ、あるかもしれないけど……その辺りどうなんだろう? 『レメゲトン』と古代ギリシアの哲学者プラトンの後期対話篇に関係はないだろうし。……関係があるとすれば、
まあ、多分数字の一致は偶然だと思うけど。
「それじゃあ、俺もいかせてもらうわ」
皮の袋からエルダーワンドを取り出す。そのまま刀剣に変形。
「【魔法剣・
刀剣に変化させたエルダーワンドに闇を纏わせる。
「
【魔法剣】で【飛斬撃】を連続で三体に食らわせて、全員撃破。
これで終わりか。うん、呆気なかった。いつものことだけど。
「あはは……これで俺も終わりか。どうぞ、煮るなり焼くなり好きにしてください」
「……お兄様」
「あっ、これは余談なんだけど。多分、黎明結社に所属していても、願っている通りにはならないと思うよ。例え幾度となく世界をやり直す力があっても、首魁はその力を世界のためには使ってないだろ? まあ、ぶっちゃけアイツらの目的は分からないけど。世界を裏から掌握しているのなら、この世界の全てを記録したものにアクセスするための機械を手にしようとなんてしないと思うからね。強い力を持つものほどその地位が脅かされることを恐れる。たがら、更なる力を求める。そんな感じで案外俗物的な理由なのかもしれないけど」
「……つまり、最初から俺の願いは叶う筈が無かったという訳ですか。あはは……」
まあ、世界を救うために秘密結社と手を組むって発想が……秘密結社って悪と結びつけたくなるものだし。
「……んで、どうする? 今回のことはここにいる奴らしか知らない。それに、フィード様が特に何かをしたって物的証拠もない」
『草子君……ビデオカメラ擬き呆気なく壊しちゃった。証拠の握りつぶしだよ』
「……本当にいいのですか? 俺は能因先生を殺そうと」
「で、殺せた? 傷ひとつ付けられてないし、寧ろ過剰防衛を取られても致し方なしって感じだよ?」
「……ありがとうございます。能因先生」
あれ? バッドエンド回避した? 上手くいったっぽい?
「……ちっ、結局は絆されるガキか。まあ、いい。俺がこのことをヴァパリア黎明結社に報告すれば、出世が――」
全く、いい感じなのに台無しだよ。しかも最後まで言わせてもらえずに、「ロンド死す」。デュエルはスタンバイしないようだ。
殺ったのはセリスティア学園長……あの、わざわざやらなくても、俺が魔法で消し飛ばしましたよ。
「本当に最後まで小物だったな、このロンドという奴は。フィードとは大違いだ」
「まあ、出世欲は誰にだってありますからね。……こういうタイプは結局小物のままで終わりますが。天下りすらできずに……というか、黎明結社に天下りとかあるの!?」
という訳で、本当の本当に決着だ。今回は色々あったけど、かなり多くの情報を得られたと思う。
さて……次の目的地は、アルドヴァンデ共和国か。でも、その前に寄らないといけないところがあるんだよね。通り道だけど。
ジェルバルト山――リアルきのこの山? エレシによると、この山のどこかに遺跡があるらしい。
さて、どうなることやら。とりあえず、これ以上仲間? 同行者はいらないよ!!
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