【八房花凛視点】アタシは確かに賢くないけどマスケットの弾が少ないから新しい銃を作ろうって発想がおかしいことくらいは流石に分かるよ!!

 異世界生活十六日目 場所コンラッセン大平原、古びた洋館


「ギャル風メイクのビッチ……というか、普通にギャル? すみません、お金払うんでカツアゲしないで下さい、って結局お金払っちゃってるよ!」


 ……草子君にとってのギャルのイメージってどーなってるんだろう?


「大切な友達を助けてくれた恩人にカツアゲするような非常識ではないわよ! ……草子君のギャルのイメージってどーなっているの!?」


「よく男とつるんでいる。ギャンギャンうるさい。群れて文学少女を相手にカツアゲする。すぐ化粧直しをする……って、あれ? そういえば化粧してない!? 最早ギャルですらない!?」


 化粧ポーチは持ってきてるけど、流石に異世界でギャルメイクはしないよ!

 ……いや、最初はしようかなぁとは思ったんだけど、化粧品って異世界では貴重品だし、化粧しても見る相手って魔獣だし、ねぇ。

 他の女子もすっぴんなのに、アタシだけ化粧してても仕方ないと思って。

 元々黒ギャルじゃないし、実は髪が金髪なだけで、後は普通なんだよねー。


「それで? ……えっと、八房花凛さん? 一応到達目標的なものを聞いてからどんなことを教えるのかを組み立てているんだけど、具体的にどうなりたいとかある? まあ、教える側には相応しくないモブだし、こんな奴に教えてもらいたくないってなら即刻帰ってもらっていいよ」


 なんで草子君に教えてもらいたくて並んでたのに、帰らないといけないんだろう?

 ……もしかして、婉曲的に帰って欲しいと言っているとか? いや、柴田さんと岸田さんにはしっかり教えてたし……。


 ……まあ、とりあえず到達目標を決めないとね。


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NAME:八房花凛 AGE:16歳

LEVEL:11 NEXT:650EXP

HP:200/200

MP:180/180

STR:300

DEX:320

INT:7

CON:100

APP:42

POW:100

LUCK:7


JOB:銃士マスケティア、魔法師


SKILL

【片手剣】LEVEL:5

【銃術】LEVEL:3

【刺突】LEVEL:5

【火魔法】LEVEL:2

【水魔法】LEVEL:2

【氷魔法】LEVEL:2

【風魔法】LEVEL:2

【雷魔法】LEVEL:2

【生活魔法】LEVEL:2

【マルドゥーク語】LEVEL:1

【クライヴァルト語】LEVEL:2

【マハーシュバラ語】LEVEL:1

【エルフ語】LEVEL:2


ITEM

・レイピア

・マスケット

・丸玉×2

・火薬

槊杖ラムロッド

・銃士の服

・学生服

・ボストンバッグ


NOTICE

・通知一件

→未使用のポイントが後500あります。

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 スキル的に言えば、レイピア関連が【刺突】以外にない。流石に少な過ぎるからいくつかスキルを増やしておきたい。

 ……そして、一番の課題は――。


「決まったか?」


 アタシは無言でマスケットを差し出した。


「……ん? これは、マスケットだな。銃身にライフリングが施されていない先込め式の滑腔式歩兵銃……で、これがどうかしたか?」


「最初はどうやって使うのかわかんなかったけど、なんとか使えるようにはなった。……だけど、弾がもう二発しか残っていない。早急にしないといけないのは弾を増やすことなんだけど……」


「異世界で弾丸を売ってるとは思えないし、流石に俺も弾丸を作った経験がないし……魔法で火薬は作れないから。……八房さん、多分今までで一番の難題だよ」


 ……まあ、いくら草子君が凄くても弾丸は作れないよね。

 で、数分考えた挙句草子君が出した答えは――。


「よし、銃から作ろう」


 ……どーしてこうなった!

 いや、どうやったらそういう結論になるの? アタシは確かに賢くないけど、最低限の常識は持ち合わせている筈……。

 うん、何度考えてもさっぱり意味が分からない。どう考えても弾丸作るより難易度上がってるよ!


「……一応、どんな風な思考でそうなったかを聞いてもいい?」


「まず、火薬は用意できない。弾丸飛ばせない。じゃあ、別の方法をと思って思いついたのが【炎魔法】で小さな爆発を起こしてその推進力で弾丸を飛ばすってのなんだけど、そうなるとマスケットの耐久力じゃもたない。だから根本から作り直した方がいいかなって?」


 ……スケールが大き過ぎる話だ。流石にそこまでしてもらわなくてもいいと思うけど、本人物凄いやる気だし……もしかして、火つけちゃった!?


「……でも、流石に銃の設計図は無いっしょ」


「それがあるんだなぁ。特典が欲しくて電子版も購入していた『スカーレット・ライン』ってライトノベルの巻末に登場した銃の詳細が書いてあるページがあってね。その作者が物凄い几帳面だったからか元にすれば寸分違わないものを作れちゃうんだよ。……まあ、簡単に銃が作れちゃうって色々なところから苦情が来て一巻の発売から数ヶ月後に回収になったんだけどね。まあ、なんとなく予想していたから早めに購入しておいたんだけど」


 へぇ、作れるんだぁ。……というか、それって不法所持とかだよね!? 犯罪じゃないの!?


「さて、作ってみるか。と、その前にオレイミスリルにどの程度の耐久力があるか試してみないと」


 そう言いながら草子君は魔法を唱えてあっという間に金属の壁を完成させてしまった。


「〝爆発せよ〟――〝プチ・バースト〟」


 そこから耐久テストが始まった。ただひたすら〝プチ・バースト〟を一点に向けて撃ちまくる。……なんでそんなに連発してMP減らないの!?


 そして、二百八十八発目を撃ったところで遂にオレイミスリルの壁に傷が生まれ始め、五百七十発目でその傷が原因で崩壊した。


「……う〜ん。微妙だな。五百七十発目辺りで崩壊する銃ならそれ以上は撃てないということになる。……物質を保護できる魔法とか無いのかな? プロテ●ション的な? ……その辺り、【魔術文化学概論】でどうにか……」


 草子君が独り言を言い始めた。……無理なら無理でいいんだよ。

 そんなに頑張らなくても……。


「そもそも【魔術文化学概論】の領域がどこまでなのか不明だし、新たな魔法を生み出せるなら新たなジャンルも開拓できるんじゃないかな? 今まで考えたこともないけど。……例えば【保護魔法】とか? ……えっ、普通にできた。というか、なんかスキルが増えたんですけど!?」


 草子君はまた一つ壁を壊してしまったらしい。


「というか、これなら根本から作戦を見直した方がいいんじゃないかな? よし、作戦を変更するよ。【火薬魔法】で火薬を作成、【加工魔法】で形状を変化させ、【保護魔法】で耐久力を上げる。その素材をオレイミスリルにすれば……うん、完璧じゃね? 早速やってみよう」


 ……完璧みたいだ。アタシにはさっぱり分からないけど。


「〝火薬よ生まれよ〟――〝ガンパウダー〟」


「〝銀の輝きと鋼を凌ぐ強さを持つ魔法金属よ、我が魔力を喰らいて生まれ出でよ〟――〝メタルメイク・ミスリルダイト〟」


「〝アトランティスの底に眠る最硬の神金属よ、我が魔力を喰らいて生まれ出でよ〟――〝メタルメイク・オレイカルコス〟」


「〝望みし形に姿を変えよ〟――〝モデリング〟」


 あっという間に弾丸が完成してしまった。……こんな早く作れるものなの?

 ところでなんで二種類もあるんだろう?


「しっかし、スキル【魔導開墾】で作った魔法は物凄い燃費が悪いな。一回の発動で5,000以上消費……〝スペースタイム・コラプシス〟で5,200消費だから、とんでもないな。……使い勝手が悪いし、基本的には普通の魔法を使うか」


 アタシのMPが180だから約二十八倍……とんでもないスケールの話だ。

 ……あれ? SPACETIME COLLAPSES? 直訳すると……時空崩壊? ……もしかしなくてもとんでもない魔法よね!?


 その後、銃の方も作ってしまった。

 拳銃と……なんていうんだろう? 狙撃に使えそうな長い銃。


「……ねえ、これって何っていう銃?」


「あっ、この長いの? これは対物アンチマテリアルライフルのバレット M82(擬)。大型のセミオート式狙撃銃だから連射も可能なものだけど、威力が高い代わりにマズルブレーキから噴出する発砲煙と場所によっては巻き上げられる砂埃が射手の視界を奪う……良し悪しだね。ちなみに拳銃の方はベレッタ・モデル92(擬)……まあ、構造はどっちも多少弄ってるけど。反動は消せないから諦めて。……んじゃ、試しに撃ってみますか。と、その前に」


 草子君が皮の袋から何かを取り出した。……カカシ? なんで、そんなものが入ってるの!?


「的が欲しいから出したんだけど……ん? 変なスイッチがある。①と書かれたスイッチと②と書かれたスイッチと③と書かれたスイッチ? ……よく分からないけど、①を押すか」


 分からないのに押していいの!? 爆発したりしない!?

 ボタンを押すとカカシが震え、その後二つに分裂した。一秒経つとそれぞれが二つに……どういうことなの!?


「もしかして、バイ●イン!? 栗饅頭では……無いようだ。で、どうやって止めるの? とりあえず②を押してみよう」


 百体になったところでボタンを押したらそれ以上増殖しなくなった。

 そして、③のボタンを押すとカカシがもう一度震えて一つに戻った。


「……どうやら、村人ヴィレガーだけじゃなくて農民ファーマーもチートだったようだ。……というか、村人ヴィレガーといい農民ファーマーといい、スキルといい、絶対悪意あるよね!? と、見せかけて実は壊れスキルでしたってのが多過ぎるよ!?」


 ……うん、村人ヴィレガー農民ファーマーがチートな以前にまず草子君がチートだと思うよ。

 まあ、増殖するカカシには驚いたけど……何に使うつもりなんだろう?


「まあ、とりあえず撃ってみればいいんじゃない?」


 再びカカシを増殖させ、十体になったところで停止――その中の一体にベレッタ・モデル92(擬)? を向けて、引き金を引いた。

 一発の弾丸が射出され、カカシの頭が吹き飛び、藁が宙を舞う……怖っ!?


「……えっと、会得できるスキルは【銃術】、【狙撃】、【照準】……【発砲時反動消滅】? 流石は異世界、反動を無効化するスキルもあるのか」


 草子君からベレッタ・モデル92(擬)を受け取り、別のカカシに向けてから引き金を引く。

 弾丸が射出され、カカシの身体を貫いた。……流石に頭を吹き飛ばすのは……ちょっと、ね。


 驚くことに、銃を撃った後に反動は無かった。……マスケットを撃っていた時にはちゃんと反動があったのに、なんでだろう?

 バレット M82(擬)も草子君にお手本を見せてもらってからチャレンジ……今度はカカシそのものが吹き飛んだ。後に残ったのはバラバラの藁クズだけ……いくらなんでもオーバーキル過ぎない!? こんなに強い武器、必要なの!?


 その後、銃の時と同じようにサーベルを作ってもらい、レイピアと共に使い方を教えてもらった。

 ……とりあえず、これで教えてもらうことは全部終わったね。


「とりあえず、ステータスを確認してみたらどうだ?」


 「ステータス」と呟いてステータスを表示する。……さて、どんな感じになっているんだろう?


-----------------------------------------------

NAME:八房花凛 AGE:16歳

LEVEL:11 NEXT:650EXP

HP:200/200

MP:180/180

STR:300

DEX:320

INT:7

CON:100

APP:42

POW:100

LUCK:7


JOB:銃士マスケティア狙撃手スナイパー銃使いガンマン


SKILL

【片手剣】LEVEL:5

【西洋剣術】LEVEL:1

【銃術】LEVEL:5

【唐竹】LEVEL:2

【袈裟斬り】LEVEL:2

【逆袈裟斬り】LEVEL:2

【左斬り上げ】LEVEL:2

【右斬り上げ】LEVEL:2

【刺突】LEVEL:5

【払い】LEVEL:2

【狙撃】LEVEL:1

【照準】LEVEL:1

【発砲時反動消滅】LEVEL:1

【火魔法】LEVEL:2

【水魔法】LEVEL:2

【氷魔法】LEVEL:2

【風魔法】LEVEL:2

【雷魔法】LEVEL:2

【生活魔法】LEVEL:2

【マルドゥーク語】LEVEL:1

【クライヴァルト語】LEVEL:2

【マハーシュバラ語】LEVEL:1

【エルフ語】LEVEL:2


ITEM

・オレイミスリルの西洋刀サーベル

・レイピア

・ベレッタ・モデル92(擬)

・9x19mmオレイミスリル弾×90

・バレット M82(擬)

・12.7x99mmオレイミスリル弾×12

二脚バイポッド

・マスケット

・丸玉×2

・火薬

槊杖ラムロッド

・銃士の服

・学生服

・ボストンバッグ


NOTICE

・通知一件

→未使用のポイントが後500あります。

-----------------------------------------------


 ……知らない間にJOBが増えてた。

 欲しかったスキルも手に入っていた。これで今まで以上に戦えそうだ!

 ……でも、一つだけ問題が発生したんだよね。


「草子君、このバレット M82(擬)なんだけど……どうやって持ち運べばいいんだろう?」


「そういえば、重いからな。少し時間をくれ、何かしらの対策を考えておく」


 草子君の仕事を増やしちゃったな。ごめんね。

 これで私の個人レッスンの時間は終了。後は教えてもらったことをどう応用していくかだね。

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