文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
【柴田八枝視点】柴田八枝は謝りたい。白崎さんに、そしてみんなに……。そのために仲間達と異世界で生きる術を探す。
【柴田八枝視点】柴田八枝は謝りたい。白崎さんに、そしてみんなに……。そのために仲間達と異世界で生きる術を探す。
今思えば愚かなことだったと思う。
喚いたところで何も変わらない。だって、みんな同じ立場に立たされているのだから。私達だけが酷い目に遭わされている訳でも無かったのだから。
私達はきっとみんなに甘えていた。ただ喚けば誰かが――例えば男子がどうにかしてくれると思っていた。
だから壊れた。だから崩壊した。私達がさせてしまった。
『いつまでもここに止まっている訳にはいかないわ。私達と一緒に行きましょう』
多分、白崎さんの言葉が私達に伸ばされた最後の救いの手だったんだと思う。だけど、私達はその手を振り払ってしまった。
最後まで白崎さんは私達を見捨てようとはしなかった。身勝手な私達を最後まで連れて行こうとしてくれた。
もっと早く見捨てることだってあり得た筈だ。私がもし白崎さんだったらとっくの昔に見捨てていたと思う。
正直なところ、私は今まで“天使様”や“女神様”と呼ばれ、高嶺の花のように扱われる白崎さんに嫉妬していた。「どうせ打算でやっているんでしょ」って思っていた。
だけど、それは違った。白崎さんはそう扱われて当然の行いを続けてきた。こんな私達にも慈悲を掛けてくれるような優しさをその身に宿していた。
――もし、もう一度会えたのなら白崎さんに、みんなに謝りたい。
そして、もしこんな私達のことを赦してもらえるのなら、私は白崎さん達と――。
白崎さん達は扉の中に消えた。この召喚を行ったらしい神様はどこかに消えた。
残された私達はただ泣き噦った。その時の私達は私達を見捨てて行ったクラスメイトに憤りと悲しみを抱いていたんだ。自分達のこと棚に上げて……今思うと実に愚かしい。
泣いたところで何も解決はしない。誰も助けてはくれない。
クラスメイト達は私達が面倒だから私達の言うことを聞いてくれていたに過ぎなかったんだ。だけど、異世界という未開の地に来てまで私達の我儘を聞いてくれる訳がない。
私達もそのことに気づいていた。気づいていたけどその現実を直視するのが怖かった。
だけど、いつかはこの部屋から出なければならない。いつまでもここにはいられない。覚悟を決めなければならない。
誰とはなしに神様が残していったタブレットを操作してスキルを選んでいった。
私には織田君達のようにどういうものを選べばいいか分からない。あそこで駄々を捏ねなかったら、誠心誠意を込めて教えを請いたら織田君達は教えてくれただろうか。
分からないから適当に選んだ。危険な世界で頼らなければならないものを適当に選ぶというのは心許ないけど仕方ない。
震える足と手に鞭打って扉を開け、奥へと進んでいく。
◆
異世界生活一日目 場所???大平原
扉を潜ると、そこにはどこまでも見渡す限り黄金色のイネ科植物が茂る平原が広がっていた。
しかしよく見るとその植物は私の知る地球にあった植物のどれとも違う。
「……本当に異世界に来ちゃったね。……まず何をすればいいんだろう?」
私の問いに誰も答えられなかった。みんなもどうすればいいか分からないのだろう。
異世界といっても、それがどういったものなのか全く分からない。ただ漠然と地球とは違う恐ろしいイメージがあるというだけだ。
「……とりあえず、すてーたす? ってのを見ればいいんじゃね? ってよくわかんねーけど……ってなんか出た」
金髪にギャル風メイクの花凛ちゃんは何かを見つけたようだ。
「よくわかんねーけど、これすてーたすじゃね?」
「花凛ちゃん、どうしたの? 何もないよ?」
「えっ、まさか見えてねえのー? これアタシにしか見えない系?」
寧々さんにも見えていないようだ。私にも見えない。私だけ見えないのかと思ったけどどうやら違うようだ。
もしかしたらステータスという言葉に反応して何かが出たのかもしれない。
「ステータス!」
試しに言ってみたらパソコンのウィンドウみたいなものが出た。何か書いてある。異世界の言葉とかだと困るなぁ、って思ってたけど普通に日本語だった。
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NAME:柴田八枝 AGE:16歳
LEVEL:1 NEXT:10EXP
HP:31/31
MP:24/24
STR:16
DEX:19
INT:9
CON:21
APP:45
POW:23
LUCK:8
JOB:-
TITLE:【静かなる狙撃手】
SKILL
【照準】LEVEL:1
【狙撃】LEVEL:1
【暗躍】LEVEL:1
【潜伏】LEVEL:1
【隠形】LEVEL:1
【無音移動】LEVEL:1
【視敵】LEVEL:1
【千里眼】LEVEL:1
【気配察知】LEVEL:1
ITEM
・魔弓ガーンディーヴァ
・灼熱ノ矢×70
・凍結ノ矢×70
・霹靂ノ矢×70
・猛毒ノ矢×70
・隠れ頭巾
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
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選んだ記憶のないスキルが書かれていた。もしかしたら、TITLE――称号を選んだことでスキルを獲得することができたのかもしれない。
自分のステータスが確認できたので、次にすべきなのは多分みんなのステータス情報を共有することだ。
みんなのできることが何か分かれば、もしもの時に役立つかもしれない。
「みんなはどうだった?」
「と言ってもね。口で説明するのは難しそうだよ」
「アタシ、ルーズリーフ持ってるよー」
確かに愛蘭さんの言うようにこのステータスを口で説明するのは難しそうだ。ステータス情報を共有しなくちゃという気持ちが先走り過ぎて考えてなかった。
そんな時に妙案を出してくれたのは花凛ちゃんだった。持っていたバッグからルーズリーフとペンを取り出すと全員に一枚ずつ配ってくれる。
その後、一人ずつステータスをルーズリーフに書いてからペンを渡してなんとか全員分のステータスをルーズリーフに書き終えた。
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NAME:岸田美咲 AGE:16歳
LEVEL:1 NEXT:10EXP
HP:25/25
MP:23/23
STR:41
DEX:20
INT:8
CON:25
APP:49
POW:25
LUCK:10
JOB:
SKILL
ITEM
・聖剣デュランダル
・聖楯アイギス
・聖鎧アキレウス
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
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NAME:八房花凛 AGE:16歳
LEVEL:1 NEXT:10EXP
HP:30/30
MP:26/26
STR:40
DEX:45
INT:6
CON:18
APP:42
POW:18
LUCK:5
JOB:
SKILL
ITEM
・レイピア
・マスケット
・丸玉×10
・火薬
・
・銃士の服
・学生服
・ボストンバッグ
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
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NAME:高津寧々 AGE:16歳
LEVEL:1 NEXT:10EXP
HP:28/28
MP:40/40
STR:10
DEX:10
INT:9
CON:10
APP:45
POW:10
LUCK:69
JOB:巫女
TITLE:【祈りて仲間を援護する者】
SKILL
【刀術】LEVEL:1
【弓術】LEVEL:1
【回復魔法】LEVEL:1
【障壁魔法】LEVEL:1
【祈祷】LEVEL:1
【神楽】LEVEL:1
ITEM
・鬼切安綱
・梓弓
・破魔矢
・巫女装束
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
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NAME:常盤愛蘭 AGE:16歳
LEVEL:1 NEXT:10EXP
HP:29/29
MP:20/20
STR:25
DEX:30
INT:9
CON:21
APP:42
POW:21
LUCK:40
JOB:陰陽師
TITLE:【陰陽道に足を踏み入れし者】
SKILL
【刀術】LEVEL:1
【占星術】LEVEL:1
【陰陽術】LEVEL:1
【祈祷】LEVEL:1
【式神召喚】LEVEL:1
ITEM
・
・陰陽装束
・式符
・霊符
・形代
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
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美咲さんと花凛ちゃんはJOBとアイテム詰め合わせを、寧々さんと愛蘭さんはその二つに加えて称号も選んだようだ。
称号を取った面々はスキルを獲得し、取っていない面々はスキル欄が空白だった。
まあ、このスキルがあったからそれで一体何ができるのかイマイチ分からない。
例えば【狙撃】のスキルがあると【狙撃】が上手くなるのか? 【狙撃】のスキルが無ければそもそも狙撃ができないのか? 能力を補正するものか、できることを示すものなのかさっぱり分からない。
「ステータスは確認したけど、次はどうしよう?」
「まず急務なのは食糧を確保することじゃないかな? ほら、腹が減っては戦ができぬ以前に、何も食べないまま何日もいたら餓死しちゃうよ」
私達は誰一人として食べられそうなものを持っていない。愛蘭さんの言うようにこのままだと数日で死んでしまう。
早急に欲しいのは水と食糧。その二つをどこかで調達しなければならない。
「とりあえず、村とか町とかそういうところに行くしかないっしょ」
「でも、私達この世界のお金持ってないよ。お金持ってないのにどうやって水や食糧を買うの?」
寧々さんの言うように村や町で食糧を獲得するのが一番安心で安全だ。食糧はショッピングモールの食品売り場で購入している私達にとって、食糧には誰かから買うものという印象がある。
だが、私達にはお金がない。地球の円はあっても異世界では通用しない。
なら食糧を恵んでもらうか。だけど、果たして見ず知らずの相手に食糧を恵んでくれるような親切な人がいるだろうか? そもそも、地球以上に危険な世界なら自分が生きていくのに必死な筈だ。
「……やっぱり、戦うしかないのかな?」
美咲さんは何ととは言わなかった。みんな言わなくても何と戦うかは漠然と分かっている。
食糧を得るために食糧となる動物を殺す。いや、異世界では動物の代わりに魔獣という更に強力な奴らがいるのかもしれない。
私達はソイツらに勝たなければならない。戦わなければ餓死する。戦っても殺されるかもしれない。
「……とりあえず、このここにいても仕方ないから辺りを探索してみよう。町や村を見つけたらそこに行ってみて食べ物を恵んでもらえないか試してみる。食べられそうな動植物を見つけたら、その時はその時でどうするか考える。それで今はいいんじゃないかな?」
「そだねー。まだ何も見つけてないのに町や村で何をしよう、魔獣と戦おうなんて考える段階じゃない。まずは探索しないとね」
私の意見に花凛ちゃんも同意してくれた。みんなも頷いてくれている。
「よし、じゃあ行こうか」
今も異世界に対して怖さを感じているのは変わらない。いつ死んでしまうか分からない恐怖は私の中にも、きっとみんなの中にある。
だけど、私は同時に感じていた。美咲さん、花凛ちゃん、寧々さん、愛蘭さん――みんなと居ればなんだってできるって。
こうして、私達の異世界生活が始まった。私の最終目標は白崎さんに、クラスのみんなに謝ること。まずはそのために、みんなと一緒にこの世界で生きる術を見つけないと……。
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