そして異端の創換術師 現代魔術師、千年前に転移させられたので新たな歴史を創る 著:えいちだ 出版:電撃文庫
【パーフェクトあらすじ】
『本作は、世界一の魔法学校で最先端魔法を学んだ主人公が、ひょんな事から幼馴染みの女の子と一緒に千年前に飛ばされて、元の世界に戻ろうとがんばるお話です。』巻末あとがきより。
ずるい?
ずるくない。文章中に書いてあるものをそのまま引っ張ってきても解答は解答だとおれは思うんですよね。
最近『逆説的に』という単語をよく聞くので、逆説的に考えてみます。
【あらすじ テイク1】
最初はがんばっていない主人公が、冒険を経てがんばろうと気が変わるお話。
こんなもんいくらでも当て嵌まりそうですが、著者さまあらすじの『がんばる』に焦点を当てると、最初はがんばっていなかったことになります。
がんばるがんばらない以前に、主人公たちは状況が飲み込めなさすぎて適応するのに精一杯だったという印象が強いですが、未来に戻ろうとしていたかと問われるとしていなかったような気がします……。
もうちょっとあらすじをがんばってみます。
【あらすじ テイク2】
千年後の魔法技術を持ち越して過去に転移してしまった主人公やヒロインたちが、技術漏洩などのタイムパラドックスに不安を抱きながらも冒険を続けて、時空を巡る謎の勢力と戦いつつ千年後の未来まで帰ろうとするお話。
『がんばる』が吹っ飛びましたが、割と面白そうになったのではないでしょうか。
心情的な変化をあらすじに組み込むことを苦手とするわたしですと、あらすじの限界はこうなります。
2019/05/22(水) 読了
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【感想】 ※おまけ
電撃文庫で著者2作目の作品。
すごく良い意味で凡作。悪い点は、細かいことまで考えるとタイムパラドックスものにはありがちな矛盾が山ほど出てくること。良い点は、それらをすべて無視すれば、厨二心のある男子中高生にとってストライクゾーンだということ。
現代最強クラスの主人公たちが、千年前の過去に飛ばされて、比べれば当然だけど劣悪な技術環境や現代でもありえなかった超生物と戦わされて、しかも技術的なタイムパラドックスまで考慮させられて、てんやわんやする冒険が楽しめます。
すみません。わかりにくいですね。
よくあるタイムパラドックスものに、魔法技術を取り入れた作品です。
『タイムパラドックス』+『魔法技術』=本作 の認識でOKなはずです。
メインウェポンはタイムパラドックスで、本作はそこに魔法を織り交ぜたのが新しいのではないか、とメッセージを送っている形ですね。
それほど心情を揺さぶられる作品ではないですが骨組みはいいと思いますし、ピンチやチャンスの出来事は上手く最後まで繋がっていると思います。難しいことはやっていないので、これから小説、とくにライトノベルを書いてみようと考えている方には購入する価値がかなりあるかと。
この著者さまは業界で長生きするだろうなあ、と思います。
内容は可もなく不可もなく、『なろう』系のエンタメを意識した作品だと思ったのですが、著者の心構えがすばらしいのです。
まだデビューして一年目でこのクォリティ。
あとがきに載っていた、
「プログラミングするのも小説を書くのも、文字を打つという意味では大差ないですよね……?」
「長期間コツコツと作業をして完成を目指すという点は同じですしね」
小説はプログラミングと同じだ。
コツコツやる作業と大差はない、と言っているんですよねえ。
読者の感情を大きく揺らしてこその小説だ、という方は反発されるかもしれません。でも、珍しい出来事がぽんぽん繋がっていくものこそ小説だ、という方は是非とも読んでみていただきたいです。
わたしは心情的には前者ですが、執筆技能的には後者なので、この作品はとても参考になりました。
ってことで、良い意味での凡作です。
デビュー一年目ですよ? これからも新作をばんばん発表してもらいたいですね。3年目あたりでスマッシュヒットを出しそう……。
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