おか
魚群の肺は痛んだ
ぜえぜえいう肺は陸(おか)のものではない
ひゅうひゅういう喉は空気のためのものではない
しかしそれでも野に躍り出て
いざやゆかんと胸を張った
魚群の肺はそうして傷んだ
ぷっかり ぷっかりと浮き袋
魚群は陸のうえで生きた
脚はなく 尾びれは裂くことしかできぬので
浮き袋をたよりに浮いていた
丘のうえでぷっかり浮く 魚群
手もなく 胸びれもまた裂くことしかできぬので
なにも持たずに生きていた
魚群はたったひとつ 丘のうえにあった
魚群の丘には はじめのうち 誰も訪れるものがなかった
ぼんやりと海に似た空を眺め
波に似た雲を見つめていた
ここには、あちらにも こちらにも
遠いところには海があるのだな と
魚群はひとりでかんがえていた
人間は海を母と呼び
たいそうありがたがっていることを知っていた
己の母はなんであろうか
魚群はひとりで考えていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます