人物、用語紹介

人物、用語紹介

1.人物紹介


八徳(カオナシ)ー主人公

横浜永真遊郭で生まれ、育った、始末屋の下っ端として生きる18歳の青年。永真遊郭でも格の高い花魁、紅蝶の幼馴染。とある事情から、エゲレス語を話すことが出来る。

紅蝶の妹分、禿のお円がしでかした侍殺しの下手人首代となり、奉行所に出頭。

そのご処刑されたと思われたが、その命をエゲレス人の女商人ヴァルピリーナに買われ、彼女のもとで、遊郭の外の世界で情報屋としての新たな人生を生きることになった。

情報屋としての都合上、情報を掴む際に素性がバレぬよう頭巾をかぶる時があり、とある事件以降、その姿は世間からは「カオナシ」と呼ばれることとなった。



紅蝶

永真遊郭でも格の高い花魁の一人で、八徳の幼馴染。

妹分、禿のお円がしでかした侍殺しの下手人首代として八徳が奉行所に出頭することを何とか飲み込み、彼と最期の別れを交わした。



お円

紅蝶に妹分として面倒を見て貰っている、花魁見習の禿の少女。

ある日突然、紅蝶の客である侍を刺し殺す。



ヴァルピリーナ

外国人居留地に住まい、横浜で、居留地内の他国人や日本人との商いを展開する少女。

日英間で日々起きる小競り合いに文句をつけに、奉行所に赴いたところで、お白州裁き真っ最中の八徳とであう。

処刑されるはずの八徳の身柄を買い、日本での情勢や情報、商機を探る情報屋として、彼を飼うことにした。



庄助(若)

横浜で最近おこった牛鍋屋に先見性を見出した父に、その営業を命じられた、牛鍋屋宿六庵の若旦那。

確かな味覚と料理の腕を持つが、男らしからぬナヨナヨした面が玉に瑕。

べた惚れしている許嫁の綾乃を迎え、父、母と共に暮らしている。

遊郭の外で生きることになった八徳が居候として身を寄せることを承諾したことで、八徳から「若」と呼ばれる。



綾乃(姉さん)

庄助の許嫁。

可愛らしい容姿に反し、ナヨナヨした庄助におあつらえ向きな、しっかりした考えの持ち主。

許嫁の身分にて、本来なら夫婦にもなっていない庄助と同居をすることは許されないが、持ち前の強い意志で押し通し、庄助一家と暮らしている。八徳からは、庄助の許嫁ということで、「姉さん」と呼ばれる。



おとっつぁん(おやっさん)

庄助の父にして、牛鍋宿六庵の旦那。

流行に敏感で、好奇心が広い性格。一度牛鍋を食べた時の鮮烈さに驚き、自分の店でも牛鍋を提供することを決め、確かな料理の才能がある息子の庄助に、牛鍋屋としての展開を命じた。

《宿六庵》は元は居酒屋であるため、営業を店舗内で二分しており、居酒屋はおとっつぁんが、牛鍋は庄助が担当を務める。八徳が居候として身を寄せることを一番初めに承諾したため、「おやっさん」と呼ばれる。



おっかさん(女将さん)

庄助の父にして、おとっつぁんの妻。

面白いと思うとすぐに飛びつき、しばしば大きな失敗をするおとっつぁんの妻として数十年来生きてきたため、非常に厳格。

ただ厳しいというだけではなく、不器用ながら温かみも併せ持つ。

おとっつぁんの妻ということで、八徳からは「女将さん」と呼ばれている。また、八徳は女将こそ、庄助一家の力関係で一番だと考えている



呉服屋旦那

ヴァルピリーナの商談相手の呉服屋旦那。

ヴァルピリーナとの商談中、間に入り、通訳を務めるカオナシ(外国人の下で働く日本人としての世間体の為、八徳が頭巾をかぶったため)が、日英の情報をいち早く掴む特異な存在であることを確信。外国人居留地側の情報を自らに寄こすよう、依頼する。

横浜港崎遊郭の大見世と懇意の関係にあり、八徳に情報源を提供する一環として、鈴蘭という新進気鋭の花魁を紹介する。



鈴蘭

横浜港崎遊郭は、呉服屋旦那が懇意とする大見世の、格の高い花魁の一人。「月下の華」と評され、最近一人前の花魁として認められながら、わずかな期間で「格子」格と高級に上り詰めたため、新進気鋭と称される。

客にはエゲレスからの者もおり、彼女もエゲレス語を扱うことが出来る。

呉服屋の頼みということで、しぶしぶカオナシと懇意の関係となった。

とある一件でカオナシが有名になったことで、その懇意の花魁として箔がついたこと、また頭巾を被り、素性を隠すカオナシが、あまりに遊郭、花魁のことを知っていることで、次第に彼への興味が尽きなくなる。




2.用語紹介


遊郭

夜の街。訪れた男性が、酒に女にと、狂乱する町。

基本的には、遊郭で生きる者がこの街から出ることは許されない。

遊郭に生きる者以外の男の出入りは自由だが、外部から女が入る場合には、手続きが必要となる。



始末屋

遊郭の自警団兼侠客(ヤクザ)

遊郭内で起きた様々な荒事に始末をつける存在。

暴力、刃傷沙汰などが起きたら真っ先に臨場してその場を引き受け、他、花魁や遊女と遊んだ代金を支払えない客に対し、その不良債権を回収する役目を持つ。

遊女が遊郭の表の顏なら、始末屋は、怖い方の顔と称される。



忘八。

人間が生きる際に大事とされる八つの徳(仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌)を忘れた存在。

しばしばアコギな仕事をするものに使われる蔑称。



首代。

身代わり。身内や身近な物が犯した罪を肩代わりし、その罰を身代わりとして受ける。



遊女

男の欲望を受け止める存在。当然、好きでやっているわけではなく、借金の返済や身売り、他、諸般の事情で生きるためにそうせざるを得ないことから、遊郭遊女は女の生き地獄と呼ばれる。

遊女には様々呼び方があり、また格が存在する。



新造

遊女見習いにて、あとわずかで一人前の遊女として認められる、14-16歳ごろの者に充てられる。

師匠であり、姉貴分でもある一人の花魁につき従い、花魁が手の空かない時には、花魁にかわり、その客の相手をする。しかし、一人前の遊女となるまでは床入りは許されない。



禿(カムロ)

遊女見習いにて、新造になる前段階。6,7歳から新造に上がる前の頃に与えられる立ち位置。師匠であり、姉貴分でもある一人の花魁につき従い、身の回りの世話、雑用をこなす。



異世界

八徳が称する、遊郭以外の世界の事。八徳にとっては遊郭より外の日本は異世界であり、勤め先の横浜外国人居留地も異世界である。



転生

首代として処刑された始末屋八徳が、異世界で新たに生きなおしたことに対する彼自身の揶揄。



幻灯楼

《始末屋八徳横恋慕》の現場。八徳が処刑されるきっかけとなった妓楼。



宿六庵

庄助一家が営む牛鍋屋。八徳の居候先。



外国人居留地

海外船を受け入れる開港として、幕府方が外国人の居留を許可し、横浜に定めた土地。

エゲレス、オランダなどからの来訪者が居住している。




3.遊女格について


大夫

圧倒的な美貌に高度な教養を持ち合わせる、遊女格付け最高格。

受け持つ客も超の付く富豪や文化人、高位官職をもつ侍ばかりにて、遊郭に訪れる男たちからは高嶺の華、遊郭に生きる女からは、行きつきたい憧れの地位として見られる。

弟子であり、妹分であり、身の回りの雑務をこなす「新造」や「禿」を従えることが出来る。


格子

遊女格付けは2番手なれど、相当なる高位。

大夫にも負けず劣らず美貌と教養を持ち、あとは経験つむばかりと、大夫になることさえ期待されている。

客も大夫が持つ客層と似たようなもので、並の男、少しばかり格のある男でさえ手が伸びない。

大夫より年齢が若い者も多く、男たちの中には「大夫より格子」と声をあげる者たちも少なくない。

弟子であり、妹分であり、身の回りの雑務をこなす「新造」や「禿」を従えることが出来る。


散茶女郎

遊女格付けは3番手。

大夫や格子格は数が少ないが、三茶女郎となると一気に数が増える。

客の浮遊度合いや好みで男性客を振り、自身の客を選ぶ上位2格と違い、こちらは客を振らない為、一般層の男性客は三茶女郎と遊ぶことがほとんど。

大夫、格子と並び、三茶女郎までは「花魁」と称される


端女郎、切見世女郎

下位、および最下級女郎。

特に切見世女郎は、客層やお遊びの内容が酷いこともあり、体の酷使により心身様々に病んでいるのがほとんど。

その仕事柄、梅毒という感染病をを患っている者も多く、このような女郎と遊んだ際に男性客が感染することを「当たる」と言われたため、「鉄砲玉に当たる」という皮肉から、鉄砲女郎とも呼ばれる。


遊女見習い


新造

遊女見習いにて、あとわずかで一人前の遊女として認められる、14-16歳ごろの者に充てられる。

師匠であり、姉貴分でもある一人の花魁につき従い、花魁が手の空かない時には、花魁にかわり、その客の相手をする。しかし、一人前の遊女となるまでは床入りは許されない。


振袖新造

一般的な遊女見習い


留袖新造

優秀な花魁になりうると期待される者


太鼓新造

器量も容姿も良くはないが、芸事に長じる者


番頭新造

遊女見習いではない。年季を務めあげた遊女や年老いた遊女が妓楼の雑用一般を取り仕切る。




4.そのほか


《始末屋八徳横恋慕》

物語の始まり。永真遊郭での事件。

お円が刺した侍を、八徳が自分が殺したと身代わりになり奉行所に出頭した事件に銘打たれた。

遊郭で生きる男女が相思相愛になることは禁じられている中、掟を破り花魁紅蝶に想いを馳せた八徳が、紅蝶の客である侍を、嫉妬心から殺したと説明されている。


《港崎心中》

港崎遊郭での事件。

花魁に熱を上げた仕立て屋の跡取りが、最近娶られ嫉妬に狂った妻に刺殺された事件に銘打たれた。

その花魁こそ、カオナシとの馴染である鈴蘭。


《ラシャメン天誅》←→《港崎カオナシ捕物帳》

外国人ご用達の遊女である《ラシャメン》を、攘夷派の侍が切り殺し、逃亡を図った事件に銘打たれた。

逃亡の途中、カオナシと一線を交え、完膚なきまでに叩きのめされたのち、奉行所に捕縛された。

捕縛後、処刑されたため、事の原因は、《ラシャメン》を売国奴とした侍が怒った為と言われているが、謎が残る。

この時にカオナシが見せた大立ち回りが、侍を叩きのめした爽快感に相まって、カオナシは《夜の侠客》として正義の勇士と噂されることになり、《ラシャメン天誅》は転じて《カオナシ覆面捕物帳》と呼ばれるようになった。

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