第13話 「櫻井 理人」(@Licht_Sakurai 様)

 「淡い」「明るい」を意味するドイツ語の「licht」に、「Sakuraiぼく」を繋げる。小さな灯が、確かにともる。決まりきったものにそっと異を唱える。夢に向かって、走り出すための第一歩。


 汽車に乗って、ときめきを追って、危険をかいくぐりながら謎をひもとく。


 胸が熱くなる。その冒険に、揺れる思いに、戦いに、自分がシンクロしていく。「大人らしく」なってしまった人達は、子どもっぽいと笑うかもしれない。現実に摩耗して、疲れ切ってしまった、不思議を追いかけることを忘れてしまった人達。


 それでも、筆を進める。もっともっと。汽車の揺れにあおられるように、その揺れをビートに変えて文字に落としていく。そして、冒険を忘れてしまった人達にもう一度、あの胸の高まりを伝える。


 生きることは、時には辛いものだから。誰もが、何かしらの重荷を背負ってこの世界を生きているから。


 臆病になってしまった人達の心を、冒険のドラムビートで叩く。

 うつむいてしまった人達の目に、夢を歌い上げる文字を注ぐ。

 悲しみの重荷に座り込んでしまった人達の頭に、吟遊詩人のように希望を紡ぐ。


 もう一度、ぼくと一緒に冒険にでないか?


 そんな想いを込めて。 


 おそるおそる、一歩を踏み出して読みに来てくれた人達を乗せて、ごとん、ごとん、と汽車は走り出す。汽車が刻むビートに合わせて、乗客どくしゃの身体も揺れはじめる。


 揺れる身体は、心のビートも高めていく。高まるビートが、身体を熱くする。

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