第10話 「山里椋」(@yama3_muku5 様)

写真のように、日常を切り取る。

そこへコラージュのように、非日常を足していく。


少しずつ、話の始まりが立ち上がってくる。

好きなものを切り取ってちりばめた、物語の卵。


そっとその中に入っていく。

会社に着ていく地味なスーツは羽に、いつも挿しているオレンジのボールペンはくちばしに変わる。くりくりした目と、好奇心に満ちた眼差しはそのままに、椋鳥むくどりになり、てちてちと歩く。


てちてち、ぱたぱた。


お気に入りのキャラクターたちと戯れる。


てちてち、ぱたぱた。


思いついたままに、世界に魔法をかける。


ぱちり。


物語が、産まれる音がする。


孵化した物語を、胸に抱いて温める。

言葉はこれで良いだろうか、キャラクターは素敵に見えるだろうか。玄関先で髪をなでつけ、服を整える母のように、世界を隅々まで見渡す。


やがて物語わがこを、ネットの海に優しく押し出す。

巣立ちの時を迎えたひなを見守る母鳥のように、静かに送り出す。


やがて送られてくる反応をついばんで、また新たな世界を産み出す準備に入る。


さあ、次はどんな物語になるだろう。

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