第44話 *端末さん

 子ども達が起きるのを待って、自宅へ戻ってきた。

 自宅と言っても、王城という大きい敷地と建物だが。


 お姉ちゃん先生は、また来るとの事で一旦お戻りになった。

 ただし、お姉ちゃん先生の人型端末は、帰還時にも同行したのだが。


「さて、対象者を決めなければならないな。誰でも可能とは言っていたが、最初は王城内の者という限定で行って、それから少しずつ城下町やその他の者が使えるように、制度を作る必要があるだろう」


 いろいろ考えていたのに、端末さんは


「面倒くさい」


 という鶴の一声で、制度を作らずに期間限定でどうなるかを城内限定で行う羽目になった。


 召喚陣は、お姉ちゃん先生に作ってもらったので、それを使用する。

 対象者の選定を行う端末さんへの連絡は、城全体を抽出陣の範囲にすることで、手間を省けるようにした。


 具体的には、ある言葉に続いて聞くと、召喚陣が作動して、適当な者を召喚するというもの。


「召喚先生、教えてください」


 何か複雑な言葉ではない。

 普通の言葉で喚べるのが特徴だが、いたずら厳禁。


 城下町も範囲にする場合は、もう少し考える必要がある。


 新召喚陣で、最初の召喚をするべく、王さまが先生を喚ぶことになった。


「召喚先生、教えてください。王子の勉強意欲をあげるための方法を」


 いきなり重い質問だった。


 喚ばれた先生は、なぜか“時計”だった。


「どう、解釈すればいいのだ。これは」


 五感が存在していないと思われた時計だったが、言ったことは聞こえているらしく、


「普通の人と思ってください。周波数を変えることによって、このように声も発することができます。逆に、声も聞こえます」


 なんとなく、納得した王さまは


「王子の勉強嫌いをなくしたい。どうすればよいか?」


 と、聞くと、時計は


「王子さまを少しの間、私と一緒に来てもらって良いですか?」

「それは構わないが」


 王さまの許可が出るやいなや、王子さまが消えて、時計も消えた。

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