第6話

あれから仕事が全く手につかなくて久しぶりに定時に帰っていた。

いつもは早く帰ると部長に怒られるのだが、今日は使い物にならないことがわかったのだろう。

珍しくなにも言われなかった。


「とりあえずスーパー行かないと…」


いつもはコンビニに寄るが、他に食べる人がいるのに弁当買うなんて食費がかかりすぎる。

食材買って作った方が早い。


スーパーに来る度にレジの前の長い列にうんざりしていた。


「なんだこれ?」


レジが4つほどあるうち3つのレジには並んでるのに残り1つのレジには誰も並んでいない。

レジ打つのがそんなに遅いのか?


「いらっしゃいませ」


暇そうにビニール袋をきっちりと形作っていた店員さんは俺がレジに向かうと明るい声接客してきた。

特にミスもなく素早くバーコードをスキャンし、隣のかごに置いていく。


「当店のポイントカードはお持ちですか?」


「持ってないです。

こっちのレジに全然並ばないんですね」


「セルフレジは取っ付きにくいみたいです」


「セルフレジ?」


店員さんの横を見るとレジがなかった。

少し離れた位置に番号が上に書かれたレジが三台あった。


「今はこういうのあるんですね」


「知りませんでした?

去年の夏から導入してますよ。

最近引っ越して来たんですか?」


「いや、二年ぶりくらいにスーパーに来まして…」


社会人になって三年くらい自炊してたけど、途中から面倒になってコンビニ通いになってたなんて言えないわ。


「そうでしたか。

9点で1,563円になります。

一番のレジにお願いします」


ちょうどよくレジが終わってくれたので、話を切り上げられそうだ。

機会の前に立つとモニターに現金、クレジット、ICカードのボタンが現れた。

現金を押し、千円札を二枚投入するとおつりとレシートが自動的に出てきた。


「こっちのレジの方がスムーズだし、簡単じゃん」


レジも店員さんがしている一般的なレジは列がなかなか進まず、お客さんが不満そうにしていた。


「またお願いします」


店員さんはそう言うと、元の業務に戻っていた。

券売機で切符買うより文字が大きくてわかりやすいのにセルフレジを使わないお客さんの心情がよくわからなかった。


カートごと寄せられる台は身長が170㎝以上の男には不便で、普通の高さの台で袋に食材を詰め込んだ。

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