ウソツキ。

@tsukunekue

Liar


嘘も方便というだろう。




夏の燃えるような太陽に一言「暑いね」と呟けば、君はすぐに扇いでくれる。


冬の肌を刺すような風に「今日はものすごく寒いね」と言うと、すぐに抱き締めてくる。





「少しぐらい大丈夫だよ」といくら説得しても君は遠出はしたがらない。




「もし、万が一、何かあったときのため」に。



僕だって本当は、一緒にどこか遠くまで出かけたい。

遠く離れた地で、自分から、自分の病から、現実から目を背けたかった。






君があまりに悲しい顔をするから、「本当は遠出なんて、好きじゃないよ」なんて嘘を吐く。



「近場で素敵なところをたくさん探しておくわ」と笑う君。




  



あまりに悲しい顔をするから、「来年はこういうことがしたいな」と嘘を吐く。


「準備をしておくね」と笑う君。





君があまりに切ない顔をするから、「僕は君から離れないよ」と、嘘を吐く。



「私だって離さないから」と照れる君。









あまりにも幸せそうな顔をするから、「時間のある限りね」と言ってみる。




「そんなこと言わないで」と、泣きじゃくる君。





僕は本当のことを言うと、君を泣かせてしまう。














華が咲くように笑う君の笑顔が愛しい。

晴れやかな声が好きで堪らない。


「好きよ」なんて囁かれたら、それこそ永遠を願ってしまうほどに。






嘘つきな僕。

後で恨まれても、憎まれても、怒られても、それでもいい。



今は君に笑っていて欲しいんだ。











「大丈夫、最近、体の調子がすごくいいんだ」




僕の吐いた最大の嘘に、

君は泣いた。







嘘つきな僕を、白く細い君の腕が弱々しく抱き締めた。






君に悲しい顔をしてほしくないから、

僕はいくらだって嘘をつくよ。


 






でも、その嘘で傷つけてしまうくらいなら。












「僕は何処に行っても、君を愛しているよ」





僕の言った最後の「本当」に


君は、泣きながら笑った。

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