ジイ・アイ・ディなわたし、だから何んやねん? 知りもしないで云うかな!

いく たいが

悦女子が女子に恋をした。すると……


  実話に基づく物語です。



 恋は湧々たのしければいいのよ。

……ではないわ。

愛は、生きるか、死ぬか、の真剣勝負よ。

相手は異性じゃないわ。

人間ひとにあげたくなって愛を貰うことなの!

……腐女子!?そんなクサレ女じゃないわ。 

キン女子なの!――「『よろこんでよろこんで』に行っちゃう」系なの!


 四月の健診で、フェミニンオンナノコらしい!!って――那津美ナツミ可愛い仔!とおもった。

健診直前になるとジャージを脱いで、上半身は裸で待ってなさい!「はい、次は何何さん!」とつい立の中に入るが、さっきからオレの身体を足の脚の先から頭の髪の顔の隅々まで魅入った貌付かおつきしやがって。


 わたし結菜ユナ新中2、13歳、身長167、胸Cになったけど、男子はきたない体付き格好になって、自棄に女の子がになってさ。

 

 那津美のやつデッカイから動くたびに揺れやがってそれを抑えるために肘を添えるもんだから余計に膨らんできやがって、 万一まさかユナを意識してしてたなんて後になって知ったことよ――意識的だか、見せたくなるだか、知んないけど「好意の証」ってゆう女の子の心理は「可愛い」とおしえられたぜ。

――ちゅうにの はるは目覚めの年頃トキよ。――


 体育祭の朝礼で校長のスピーチ。

長々つづけばつづくほど、体育祭の気分はサゲになって。

キブンは別な方へ向かってピッタと停まって釘付け。

結菜の姿に。戻して校長に。又そのブルマ姿に。

あいつ彼女にしたいとジッと見入ってると急にムズムズしてきやがってヤベェと抑えた同級生の青海あおみ

――五月の陽射おとこはジリジリと肌も心も焼くぜ!―― 


 八月の試合で3年生が引退になることから結菜と那津美は伴にバスケ部のレギュラーとなってこの七月も猛特訓の後。

シャワーから出てきた結菜と鉢合わせ。

那津美は「羨ましい、細い脚……未だ滑滑ツルツルなデルタだし二ヤケてゲラゲラ、私もそうならいいのに」なんだぁコイツ唐突いきなりと思いながら「自然なこっちゃ、無い方が恥ずぃって。それにポッチャリ系な体型、プヨプヨで色白な肌合い可愛くね」と目の前の裸をひと通り観ると「やだぁ、そんな見ないで」と那津美は結菜の裸をひと叩き、自分の裸身をタオルで覆い隠すが、半分見えるように隠した那津美なやつ。

ああ―ぁ、こいつうちに惚れてきやがったなぁ。


 部室にはもう皆んな帰って居ない。

すると流れはモヤモヤしてきて「背中濡れてるじゃん。こっち向いて!」と結菜が声を掛けてみる。

すると、マッジ!前にサッと向きを変えてくれた。

拭く手が、わざと胸に指を滑らせても……そのまま何も覆い隠そうとせず立ち尽くすままの那津美、ワ―ォとその勇気に感心す。

結菜もその気になった。

拭いてたタオルを捨て、手をちょっと下げて当てると少し腰を避けた那津美は顔を結菜の肩に――胸に――腹に、すべての体中の力が抜け出したかのように相手の身体にその身を預け徐々に、うずめてくる。女の子って可愛いなぁ! とつくづくおもった結菜。

流れは流れを呼んだ。

「目つぶってくれる!」と云うと催眠術にでもかかったように素のままに目を閉じた那津美……柔らかく温かなうごきだった。結菜の肩に手を回していた手を那津美は離し結菜の唇に指を遣って撫でながら「好きです」と小声でいう。

普通じゃ考えられない流れとなって「そうかい。もっと好きにしてやるぜ」と結菜が下方を見て云ってみる。

すると「…………」な暗黙の了解。

触ると「ハズィ……ぁッあっ!……もぉ、大好きーぃ!」那津美は結菜の首に全体重を乗せて手を回したまま大の字になって立ち尽くす姿に。

その応対がますますエキサイトさせやがって、那津美の身体の中の温かさ感じるとこっちの身までがアツく為ってきたぜ。よろよろっと膝を着いた那津美をそっと抱き起すと、急におんなにしてきた口付けがアツかった――こんなキスは初めてだった――トロけたぜ。

「わりなぁ、棒が生えてなくて」

「いやだーぁ」


 結菜が経験した初メイク・ラブ――性交と言えねえよ。単なる求愛さ。 

好きは好き、自然な成り行き。なんも変でもなければ不自然でもない極アタリメエなことをしただけさ。どこにもうしろめたさはないぜ。寧ろ誇らしかったよ。この情愛が後後の二人の強い絆に、男と女のように、心友のように、人間対人間の関係のように深くなっていくなんてこの時は思いも寄らなかった。

終わった後に那津美が「ありがとう。デラかったよ。こんなわたしを気に入ってくれて」とそれはそれはとっても健康チックな笑顔に、朗々とした仕草に、満ち溢れていた。その気持ちが伝わってくると「ア―ァ、善かった」と一入ひとしお感慨に浸ったぜ。

だから愛欲せいよくではないのだ、人に対する純粋なおもいなのだ。


 制服に着替えた外は、心地好い風が、二人を祝うかのように――チゲ、恥ずかしがっていたのかもしれないが、身体中を吹き包んでくる。

街中が真っ赫な夕焼けで燃えていた。

那津美の顔にも真っに映って。

結菜はおとこらしく平然としていた。


 好きだから、本気だから、マジ大切な人と思うからこそ、見られて恥ずかしくても、どこもかしこも見てください、寧ろ、見てほしいの。これを露出狂と云って片付ける大人の神経が分からないわ。そこまでしてしまう女の子の心理は可愛いわ。男子には分からない心理よ。


――誰が決めたんさ「中学生は中学生らしく」 「恋は男と女でする」 「『恋の具現』した姿を云い表す言葉は『お上品に!』」 vs. 「そんなことしたら『誤魔化しよ』」 

「リアルは生生しくあって、そこから美も邪も見えてくるってもんさ」そうやって大人は型にハメ込んで、あんたより私の方がアゲよ、と自分を納得させてるだけやんか。

お父さんとお母さんが一緒になって愛の結晶をつくったように「自然なのさ。自由なんさ」誰にも有る筈、自分の顔にちょっとでもいいから自信のある者なら女が女に好かれ、男が男から好意以上の感情を持たれて。

勝手に決めんじゃねぇよ、好きな相手くらい自由にさせろってんだい。――


 むかし。

男の子と女の子が手を繋いでいると「人前でやめなさい!」

女が女に魅せられて近付いて一緒に暮らそうもんなら「魔女だ!」

男同士が手を繋いでいても「連帯感の発揚!国家の為に大いに結構!!」とした明治・大正・昭和の時代。

今じゃ、渋谷を男の子と男の子が手を繋いて行くと、キャー!ホモたん。

しかし今でも同性同士は「キモい」という。それでは、異性同士がやってる姿は見てて美しいのか? 

ではないだろ。

愛に形を押し付けるな!

本人同士の「思い遣りの発露」なんだから、二人が「美しい」と思ってやることにイチイチ口を出す方が余っ程キモいわ。

「美しい」とは見た目じゃないわ、「快い。好い」と相手に見えて自分の心が貰ったときなのよ。

「思い遣り」とは「想像力」の発露であって「感動」ということであって。相手の状況を考えてあげる。相手の気持ちをくみ取ってあげる。このように慮るおもんぱかる形こそが、愛じゃねえの。

ワンちゃんがニャん子を懐に抱き眠っている時こそ「落ち着き」を得るものはないわ。これが愛の完成形じゃねえ―の。


 結菜が小学校三年生になった頃。

父も母も云っていた「『ジェンダ・アイデンティティ』は病気じゃないわ」 「その人だけが持って生まれた宝物、アイデンティティよ」 「一過性の年頃の現象。ジェンダークィアだからいつか男性か女性に収まるわよ」と屈託なくママは云ってくれた。

男の子と遊んでるときより女友だちと遊んでいる時の方が湧々ワクワクするんよ――顔は皆んな違って当り前と云うのに、心がちょっと異なるだけで不自然と云うのさ。

皆んなと少しくらい違っても、気にするこっちゃない、神様がそうスペシャルプレゼントしてくれたことよ。


――本当は皆んな女の子はLGBTレズビアンと、後になっていろんな専門医から聴いたわ。それまでは正直変かなぁ!?って。そうそう!!オレは堂々と生きるのよ!

LGBTってBisexualバイセクシュアルだって。二刀流りょうせいあいこうしゃの女性を指すから二倍得なんですって。ザマァ―!――


 中三の合唱練習のために偶偶たまたま自習となったクラス、ガヤガヤぺちゃくちゃ。

そこへツカツカと目の前に大きな影が覆う。見上げると青海あおみが結菜の机の前にデンと立ち尽し。

「お前、彼氏おるん?」

「『オマエ』じゃね。 気安く呼ぶんじゃねえよ!」

「!!……何ぃ! 殴られてんか」男のプライドは格好付いじけだけやんか、こんなことに拘る男はホントはちっぽけなイキモノなのさ。

睨み返す結菜デッカイ目。ガン見する青海デッカイ拳。殺気が漂う二人周辺、皆んなの目が釘付け。

「青海やめとけ! ジストロフィンらしいぞ」というダチ。

「なんじゃそれ?」

「そん前、大石って湘南中の野郎が、結菜を追いかけその辺の砂場に抑えつけ馬乗りになって胸を掴んでキスができると思った瞬間、軽く投げ飛ばされたんだって。重い体重の男子をだぞ。あんな、それって、女のくせに男の筋肉なんだってよ」を聴いていた全員が半信半疑な顔になって。

青海は聞くや否や「ガオ―ッ!」と意地きせいを発し机へ握りこぶしを叩きこむ。顔を両手で囲む結菜が「馬鹿じゃね」とひと言。「お前気に入ったぜ」と応えた青海に結菜の決め台詞が「チンケ野郎!」 「…………」絶句してしまう青海――こんな美少女にそこまで云われたのは初めての女であったからだ。

かし、この時たしかな感性が二人の間に起きたことだけは確かだった。

「あなたたち何してるのッッ!? 後でノート提出して貰いますからね!」と隣のクラスの先生が飛び込んでくる。


――感性の発露がイチバン旺盛な時期は、二十歳頃。こんな真っ赤なウソを信じる大学教授らであって、4歳から中学生の間や。

豊かになる頂点は中学生。モーツアルトは5歳で「ピアノのためのメヌエット(K.1)」(他数曲も)を作曲したんだぞ。

このように大人は自分が恥ずかしいと「経験知」に勝る知はないと全く次元の違う話に逃げるんだ。知には邪も含むことから感性には劣ることも知らないで。――


 江の電の踏切が上がると、そこはフォトジェニックな江の島の海が眼前。180度一望の光景。浜の風に包まれて。

「聴いたよ。カッコ良かったって。青海ってヤツきらい!」

「いや、あれが男子の普通さがってやつさ。その前に男子に興味ねぇから」

「ねぇえ……」と那津美は、佳菜の口元に、顔を横に入れながら覗き込んでくる。そのまま停止画像となって微笑む

その表情からおねだりと気付き「云うな。真昼間ヤベェよ」とこっちまで若気にやけたツラになって。

「塾8時には終わるから電話して」と云って小走りに坂を登る那津美の後ろ姿、上へ上へ揺れ揺れするスカートから覗く、ステップしてく脚が色っぽいぜ。


 原チャのおと。結菜の背後でとまる。

「さっきワルかった」

「…………」シカトする結菜。

「俺が追って来る気がしたろ」と全力で笑顔をつくった青海。

「…………」

「なーあ! なんか云えよ」

「馬鹿ーあ」

「何だ口が利けるじゃん」

「呼出し食らうぞ。原チャ乗ってると」

「お前の顔怒るとカワタンやな」

「『オマエ』じゃね!」

「そうけ。ま、俺が居ること忘れんな」

「うぬぼれ野郎、行っちまえ!」

「心にもねえこと云っちゃたりしてよ。じゃな!」と台詞ぜりふを残し原チャを斜めに縦にブッルッルルンと騒音やかまし姿を残して往く青海。シャツボタン全開にして、どや、と裸美を魅せたつもりだろうが、なんやあのゴツゴツした体付きは、だから男子の身体はみりょくがないなんや。


 ここ湘南一帯は、海沿いと陵丘りょうきゅうに囲まれ暮らす人達の過密地帯。年中悠然ゆったりしてるのは海と山並とレトロな江ノ電だけ。

学校の数は過密状態。

江の島界隈かいわいに在る中学だけでも15校。慶應義塾湘南藤沢中、湘南白百合中、藤沢市立明治中、湘南学園中、藤沢市立片瀬中学を始め、こんな狭い一体にあるのは日本中で此処だけ。

が、立地条件だけはナンバーワン。東京までの通学通勤圏内。

品川駅まで46分・新橋49分・JR湘南新宿ライン渋谷52分・新宿58分とどれも1時間内の距離にあることからワンサカと東京から住みに来る者が多い人気エリアとなっている。

肉魚は新鮮、山菜は採れ立て、一年中温暖、酸素は高品質、どれも東京とは一味違って旨いし海岸はむろん、古都鎌倉は隣り、箱根も直ぐそこにある風光明媚なロケーションに恵まれてるからだ。この先の葉山には天皇さんの別荘があって、皇族一家が静養を兼ねて避暑や避寒で訪れるスポットにまで繋がってるこの地。

狭いエリアに中学校が過密になると、それだけひしめき合う。中学 vs.中学は「なんやねん! 俺と踊るっか!」 「番乙(番長)張ってるんや」 「すけにちょっかいだしすんじゃねぞ」は日常茶飯事。体格・気っ風の良さから青海もグループを引っ張っぱる筆頭にあった。


 サーフボード工房兼ショップの横を通り過ぎようとしたら「結菜―ァ!」と呼び止めたサラ

やはり小悪魔的な風貌のために目立つタメ学年……病欠で留年した一個上……私服はいつも座るとツンパがみ出す超ミニスカートなコーデ。

「オッス! もう慣れた?」

「ま、それなりにね」

「やるんかい?」

「うん、初めて。やってみようかと」

「だったら最初はショートボードがいいよ、トライフィンが三つ付いてないと初心者は直ぐ引っくり返るからね」

「ありがと。ところで那津美って子、東京秋葉のガールズバーでデートガ―ルして客が気に入ると大金を手にするデリヘルまでして退学になったんだって」

証拠も何も無しに、しかも同級生を、そこまで云うかね「うっせいな!」とむなぐらを掴んで突き離す結菜。

だったら云うぜ。中学生でシャネルの時計をはめてるやつはいないぜ。何処かのオヤジからのプレゼント・ハラスメントかいな!? 中学生にブランドは似合わないぜ、ミサンガがあるじゃねーの!

この咲も東京の付属中からの転校生――ウワサだと大者政府家との間に生れた私生児とかで今でもその母は昔人気女優の杵柄きねづかで依然として高収入、これにプラス大枚たいまい月々二百万円や三百万にもなるときがあるお手当を頂戴した上に彼の政治団体名義の一軒家に暮らし週末・隔週には黒塗りの高級車が車庫に入る高級住宅暮らし。しかも、美貌をよいことに、那津美と同じような経歴ありとの噂もチラホラ。

オレ的には、何をしてきたか、どんな家柄か、どうでもいいこった。見た目と魅力的な仕草さえ可愛いおんなのこならさ。

そこへ慌てて出て来た風な一個下の碧羽あおば「ちっわす」

「彼氏かよ?」

「違うよ、うちのパシリw」と草笑いする表情をした咲。

「ちげえよ。バリバリつからな」とマセガキな中1――これだから男子ガキとはやってらねえ。

「馬鹿かあ!」と股を蹴り上げるふりをした咲。

「マジ男は変態」と結菜もおもった。


 金曜の夜ともなると。

イッサヨン(国道134号。神奈川県横須賀市から大磯町に至るまで海岸沿いに走る一般国道)沿道は何処も彼処かしこも若者銀座、煌煌こうこうと明りを射すショップやき交う車のヘッドライト、空からは燦燦さんさんと降り注ぐ星灯の点る地。舞台はでき上がっていた。

クエン酸濃度、国内最強な三ツ矢サイダーを口いっぱいに含んだ結菜の口許を那津美の口奥に流し込む、ゴックンと飲みんだ後ゲップと、お返しに那津美もしてくるC.C.Lemon、共にゲップゲップとなって――二人の間では極自然な愛の交換行事に為ってて。

 砂の上の素足の感触を楽しみながらハッチャケるオレゆな彼女なつみになりきっている――月夜の下の顔が綺麗だった、射す月明かりは、胸が左右に上下に揺れ妖しいラブをいざなってくる――|ああ―ぁ、昂奮こうふんする夜の演出、やっぱオレゆなは男だったぁ。あーぁ、エキサイトする、なつみは女でよかったわ。と共に感慨を新たにする夜の浜辺。お月さんが笑っている。三日月が海原に映えてきれいだった。

 「夜の海って昼間のと全然違う」

「うんオレもそう思った。昼の顔と夜の顔――これがオレらなんかなぁ!?」

「深い……。って、どういうこと?」

「『深い』と云い切って『どういうこと?』って何じゃ」

「テッへへへへヘヘ」

「那津美、思ったことない? 暗い海は闇の世界。失敗が自分を誰かを傷つけたときもあって、星星の灯かりの下に打ち寄せる波だけが知っていて、ゆっくり洗い流してくれる……」

「ワオ―、詩人。結菜ちゃん大好き―!……いつもまでもこうしてたいなぁ」

「なるんじゃない。って、おかしいと思うんだ。付き合いってゆうと直ぐにヤるっていう男子たち。好きって形はないんだよ。形を作りたがってる連中、ホントはわかっちゃねえ。ヤらなくてもただ好きになってる、好かれてる、そこにその人が居る、だけでハッピーィになるのがラブとちがう!?」

「同感! 子供が欲しくなったら貰えばいいし、子種付けだけの結婚ってなんかむなしいかも……」

「僕と結婚する気!?」

「もーぉきらい」 「ねぇ、うち、いやらしい?」

「いやらし!」 「けんどそれがいい」 「オレは触られて弾む胸、それ顔を見て愉しむ那津美、可愛いと思うしな。これのどこがイヤらし?……いやらしくなきゃラブじゃねんだよ、いやらしさが美しく映ってこそオレらのラブなんだよ」

「うん! 胸って女の代名詞だからね」

「ん? 胸が女の顔ってことかぁ?」

「うん。男子のアレって汚い格好してるよね、よく女子がやる気になるわ」

「おまえやらしな。って触り方といいキスの仕方っていい那津美うま過ぎなんよ」

「バ―カ―ぁ―」

「つーかぁ。好きって相手を独占することじゃねえ!? 体も心も。だから僕らがやってることはエロくもないしアタリメエなことしてるだけさ。オレが守るからな」

「あ、そだ、ありがと、うちを守ってくれて。デリヘルしてたってゆ噂、皆んながしてるの知ってるよ。デマだからね」

「咲は嫉妬出やっかみだし。那津美が綺麗だから。しかしセックスワーカーかぁ。ブヨンブヨン三段腹のオヤジとだろ、金の為によくする気になるわ」

「多いよね、そんな大人オヤジも女子も。大人は一時の捌け口に。女子はアバンチュールとお金だけで」 「一旦火の点いた行為は止まらないのも知らないで」

「そんなやつは闇の海に飲まれてサメに食われちゃえ」


 134号道路沿いに出ると繋いでいた手を遠慮がちに離す二人。、近付いてきた車が「よかったらインスタバエしませんか!? 僕らは東京の大学の芸術学部写真科にいる学生だけどお二人さんモデルさんみたいに綺麗なもんで、夜の灯りが照る海をバックに写真撮りません!? ゼッタイ写真展を観た人は女優へと望んでどこかの芸能事務所に売り込むだって」と車の窓から顔を覗かせ調子よく云う二人の男子。

無視して歩く二人、付いて来る車「お礼に好きなご飯おごって文具券あげるけど」

「どうする? 結菜ちゃん」

「じゃぁ、二人の記念に撮って貰うか。ご飯はゼッテエ行かねぇけど」

「あのぉ、学生証見せて貰えますか?」

「ホイ! これ!」

サッと出して仕舞って暗くてよく見れなかったけど、まぁ一往は信じた二人はその二人の男子のいうスポットまで来ると、もう一人が車からタオルを持って出て来る、たちまち三人の男が取り囲み「先ず上脱いでくれます!? 暗いから大丈夫でしょ」――何じゃこれ?? それにそのタオル、騒いだら口に押し込んで叫べなくするよく使う手じゃんか! スマホでかよ、芸術学部なら一眼レフ持ってるのが普通じゃね、しかも何で後になって隠れてたもう一人が現れるんだよ。エチエチじゃんか!「那津美っ!走ろォ!!」とその場を逃げる。

ダッシュ! が転ぶ那津美キャーァ!馬乗りになる1人、両足掴んで脚を広げるもう一人。戻った結菜が二人に蹴り。と同時、もう一人の男が後ろから佳菜の胸を羽交はがい締め、破けそうになるブラウス(破けたらアウト!ノ―ブラだ)。倒れた結菜の髪を掴んでチャックを下ろす、思いっきり股を蹴りあげるとひっくり返る男、するともう一人の男も加勢しベルトで佳菜の両手を縛ろうと必死バタバタ揉み合い(那津美がかつて云っていた「犯すこと自体に萌える変態趣味な男結構多いよ、感化される女も女だけど」何でこの場でその言葉が過ぎるんや、コノヤロウ!)。


 ブルッ!ブルブルッル―ン!!と原チャの何台もの騒音おと。ライトが一斉にこの修羅場を射す。碧羽が二人のナンパされた一部始終を見て咲に電話、咲は青海に通報。

「テメエら殺されてえか!」 「なんやねん、チュ―ボ―が」 

そのうちの1人が特攻服の青海だった。

云うが早く五・六人が一斉に素早く、飛び蹴り、回し蹴り、ちょうパンずつき! パンチパンチ!! 逃げる大学生ら。

「ヤらてえんか、女だけが夜に出歩くからだ」といった青海の背後から咲が現れ「じゃないの。Mマゾっけ趣味なオンナも居るからね」

「テメエのこと云ってんじゃねえよ」

「あら? 結菜、それうちのこと?」

「どっちでもいいやん。お前ら、そう思われても仕方ねえぞ。夜遅くに出歩く、そうするとそうなるのは定番だかんな」

「ま、助かったわ。さんきゅ! でも咲と青海、お前らに云われたくないわ」

「何だよ、お前だって『お前』ってゆうじゃん。まぁ、気を付けるんだな」

「青海よ、気になってたというたまってこのすけか?」と横から突っ込むもう一人三年生の男子。

「いや別に」

たま入れちゃえ、女はそうすると思いのまま云う事聞くしな」

「じゃなぁ!」 「あばよー!」 「ほんならぁ」と青海、咲、イツメン一行らは云うと祁魂けたたましいマフラー音と共に去ってゆく。


――すればするほど情が湧いてますます男のいいなりになる、というオマジナイを信じてる男のなんと多いことか。 vs. お菓子のようなもんで食べたらそれまでで今度は他の物が食べたくなる女がどれだけ多いか知らないのか。

前者に落ちる者は不幸の始まりだ。

後者の女は佳き男に出会うまで闘うチャレンジャーなのだ。女を馬鹿にすんじゃねえよ。――



 「ご飯最初に? お風呂を先になさいます?」となつみのははが云うとなつみのちちは「食べてきたから」と応え継いで「リーガルサービス楽じゃね」と家に帰ってまで仕事の愚痴をぶちまけビールをグイ飲み。

「でも刑事や民事の案件は揉め事ばかりの事務所でしょ。それよりこの専門事務所の方が扱う仕事の質はハイレベル事だからいいんじゃありません」

「パラリーガル(法律に関する業務を手伝っている事務職ないし新人弁護士たち)の面倒見が大変なんだよ」と云って脱ぎ捨てたシャツを横に自堕落だらしない格好をしてゴロ寝。そのシャツに長い髪の毛が……また若い事務員とどんな仕事をしてきたことやらと邪推じゃすいする妻。

 母が看護師として、勤務が夜のときは――偶偶父母の不在が重なると「火の戸締りをしてから先に寝てなさい」

すると夜の秋葉のゲーセンやそこいらを彷徨うろつくときがあって。或る夜、ガールズカフェの前に居るお姉さんと店長が「高校生?」 「……うん」 「違うでしょ。中学生ね」 「最近のチュ―生は大きなぁ。お家は? 云々」

中の事務所に案内されてケーキや可愛いグッズを貰うと、店が安全にサポートするから、土日辺りに若いお兄さんと散歩してくれません!? 報酬は一回1時間につき特別1万円あげるから――この企画が大当たり。中学生とは知らずに(「歳は?」 「高一です」 が、と一応は云うが客の多くは信じぜず)初物の食材でも口にするかのような歓びにハマること。「まだ若い先があるからこんな仕事は早く辞めた方がいいよ!」と表ズラは一応分かったような事を諭す客も居るが格好付けだけ。

ついにあのホテルのン号室に行って! そこでトークを楽しみたいというお客さんが待ってるけど若し嫌なら帰って来てもいいのよ云々(実際はその場で文句を事務所に告げると、違約金を何倍も店が払うことになるから万が一、いや、と云われても店側は説得するか、客に対しそれでは話が違うので追加料金をお願いしますとなる)と云われ、若いお兄ちゃんを信じて行ってみれば、いつもオヤジばかり。

中には80歳くらいお爺ちゃんがいたとき。手を握ったりあっちこっち見ては「少ないけど取っておきなさい」と10万円ほどをポンと置く、貰ったことが一度もない額にビックリ……これは尋常ではないことを欲求して来るのではと心配すると「脱いで裸を見せなさい。大の字に、もっと!両手両脚を開いて!」と一時間以上も数々のエロ話をし、どう感じてるの?どれどれ!とその反応を楽しみながらお茶を啜り眺めるだけだったり(老人せっくすなれ女子やんぐなことはこうも全くセンスが異なるものなのか)、もうそれはそれはいろいろ……チラッと10万円の札束が目に入ると、しないと悪いのかなぁと思い込んだり……最初は頭が真っ白、常識も飛んで、只只無我夢中やがて以降は慣れてしまうようになって。

後に捕まった客の大部分が、恋人が居る、奥さんが居る、押っ魂消オッタマゲは中には社会的地位のある者たち、に拘わらず未成年者にそのような行為を求めていたことが判明。

毎日曜・毎土曜に同じお客さんが指名してくるようになると口コミで客は増える一方。

ついに数時間貸切のお散歩デートをするようにと店から云われ、ホテルに行こう!と云われた最初のころは耐えがたかったけど、どの者ともホテルで変態もクソも無くやられ放題となって、同じようなことが重なるにつれ本人の自覚意識は薄れてこれが却って刺激的な感慨までを目覚めさせてしまった那津美の身体(オヤジの趣味へんたいにあわせる)。そうさせるでことでしか満足しないさがになると。そうされることを寧ろ望むようになってく女の|性(なれ)、両者共変態癖の循環となり易く)。

が、どこまで行っても刺激だけ、満足感ナッシング「もーぉ! 止めォ!」と次第になってく流石若い那津美のりょうしん

好きもなにも云わずに徒徒ただただ恥ずかしい格好させて楽しむだけ、もーぉ男は「獣」 「セックスマシン」と心深くに刻まれてく。

これがアバンチュールの附けおつりや。

 道理で「弾けて来るオレの胸がこうなってああなって感じちゃう」と堂々と云って卑猥な触り方して反応を楽しんでいて、云う言葉も刺激的になって「変態もくそもなくないわ、そのうち慣れるのよ、それがたまらなくなるのよ、善くなって病みつきになるのよ、結菜ちゃんもこっちも楽しければいいのよ」 「結菜ちゃんとだけがピュアなラブなの―ォ!」と那津美は結菜に云えちゃうわけだ。が、流石に嫌な男の醜い下心ばかりに接していたことからもうやめようとなってく……。


 この頃、咲は腐女子(男性同士の性愛に興味を発し、自分も妄想の行き着く先がセックスオ―プンになり易いパターン)になっていたころ、いやもう既に悦女子になってて、SNSで知り合った男子と会って、次第に、会ってみればオヤジだったり。どの者も例外無く、裸見して、ホテル行こう、これ買ってあげる、お小遣いに使って、となってるうちの1人が唯のエッチではなく「(今迄したこともないような)こんな恰好して!」 「これも!」とその手の命令に従うようになるにつれ都度タクシ―メ―タ―のように料金は上がる一方。

まぁ、相手が悦んでいるから、お小遣いも増えるし、いいっか、となって。

やめようと思ったときはいつの間にか体の方が文句を云いだしてきて……ああ、心と体は別なんだなぁと思いしらされる程になってく(えちぃ女子への始まりとなってゆく。この方が女子にとっては悦びが二倍五倍それ以上なんだ――一挙両得ラブなんや)。

が、ついに来ました。誰のどの人とのか分からないほど入れられ妊娠。

産科医に相談する。

すると警察の少年課から呼出し。訊かれるままに斯々然々かくかくしかじかと素直に説明することにした。

その時にその児・那津美の名が捜査上から浮かび上がってくる。当然、咲と那津美の学校が聞き及ばない筈はなかった、退学となる。

併行して大人の客たちも警察から次々と呼出し。

そのうちの誰かが逆恨みしてペラペラと一部始終を吐露してしまう。これが左証となって「あなたも相応に悪い」と家裁送りに――審判の結果は「初犯でもあることから今回は矯正施設送りは留保(大人でいう「執行猶予」)することにする」となった。


 こうして那津美と咲との共通項は重なる――似たりよったりを含めれば大多数の中学生女子は何らかの、例えば、直ぐに「裸見して」 「お小遣いあげるから、しよ!」的な経験をしてるんだ。いい加減にしろ、エロ集団おとな

この二人が特別なんやと云って、自分とは違人種のように言い逃れする者ほど、ドッコイ自分にも、似たようなことが起きてたからなのだ。若し「完璧に無い」という者がいれば、それは異性が相手にしない程見難いツラをしたブスってことになるんだ。

女子が生きてくのは男子よりはるかに大変なんだよ。


 結菜は聴き終わると、すでに顔が赤くなっていた。殴りたくもなった。にも拘わらず、こんな暴露話をしてきた那津美を非難できなかった、むしろ嬉しかった。

あの時、嘘と噂を否定したがやはりそうだったのか。そんな酷い話を正直に云う勇気、そうさせた思い、その気持ちが嬉しいぜ。

云わずには居られない程の心の傷を負っていたのだ、オレを頼ったのだ。何とか立ち直らせ普通の幸せを得るようにしてみせるぞ。


 いやいや他人事はない、実は結菜にも傷はあった。

幼少から、ソレは小1のころから初めて、次第に日々に始まってゆき小3のとき、お風呂に一緒に入っていたパパが「洗ってくれるか」とリンスを手渡し、そこだここだと云われ「パパの肌が丈夫になるから、結菜の体にも効くから」と口一杯になるまで……。

終わると今度は「こっち向いて。こうやって洗うと肌に抵抗力が付いて結菜は風邪をひかないよ」と洗いながら「気持ちいいだろ」と手で指で洗ってゆく。

変とはその時、くすぐかったけど、少しも思わなかった。優しいかったから。しかもパパの助けをしてその喜んでいる親の姿を目にすると良いことをしてあげてると思ったから――今にしてみればとんでもない勘違いをしていた。

 

 また、後に知ったことも。

父はA型、母はO型、わたし結菜はAB型。これを巡って父は「俺の子じゃない」(当時、外で種をばら撒いていたことから当日夫婦が営んだ種は発射したとしても僅か数滴しかと主張――後後一滴どころか全然発射してないと前言を覆すが)、ゼッタイ俺の子を妻が妊娠する筈はねえ。母は「違いますあなたの子」が宿ったの! しかし母も不倫相手の子と信じ込み夫の子としたのだ。

更に後日に至っては「(当時は遺伝子解析精度は1/1億。この後になって1億倍近くの精度に)我が子であったと」と父はり、母も安堵(一滴でも為るもの生るんだ)。更に更に遺伝子解析精度は今日でも90何パーセントだそうです、完璧ではないということだ(刑事裁判の場合は、DNAだけでなく関連する証拠が一致して、初めてDNAが確証となるのだ)。

これも父は「結菜は完璧俺に子じゃない。俺の女」と決め込んで往く。

 兎にも角にも物心がつく頃なってみると歪んだのは結菜……本人に自覚意識がなかったのが厄介。

それは、中1になるまでは、なんも抵抗はなかった。そのような翌日は必ずといっていいほど父親が優しくなっていたからだ。

当時何故か、親と児はスキンシップしてキスし合うのが普通あいじょうと極自然に受け取っていたからだ。

気付いた中1には、結果、すっかりオトコ不信になっていた。女の子が清潔に見え出した――G.I.D(ジェンダー アイデンティティ ディスオーダー)の性もあってよ! 

医者は、そのような結菜を治らない病気ではない、仮に尋常でない事をしたとしてもあなたが正常であると思えば精神的負担も少なくなるから、変に気にせずに生きなさい、と云っていたが何所まで解って云ってくれていたのかしら。精神科医者だか法律だか知んないけど、どこまで本気になって守ってくれてるか?適当な気がしてならないぜ。

中にはこう説明してくれたお医者さんも居て「女性には二つの凸凹が備わっています、子が通る凹と男のセンサーである凸の。しかし男性には凸しかありません。あなたは二倍得をしてる体だから云々」

ってやんでぇ!一度体に刷り込まれる癖は治らないんだよ!解ってんのか?大人ヤロウ!


――これは誇張しょうせつではない。

 事実のひとつが!

裁判ファイル管理簿(裁判記録文書)によれば2017年、愛知県で大人になっても実の娘と、長年にわたって、性交しまくってきたとして準強制性交(法律概念は。相手をその気に陥れて、これを心神喪失ともいって。その状態にさせて性交の膣性交・肛門性交・口腔性交の何れかに及ぶ)の罪に問われた実父に「無罪」判決が言い渡された。

ありえない! 実の娘とセックス。場合によっては小中学生から。しかしそのような数が少なくないという現実。

一体世間ほど、法律ほど、いい加減なやつらはいねぇ!

管理記録によれば、父親と実の娘19歳は勤務先の会社やホテルで性交三昧……三昧ということは両者の合意でしかあり得ない!?

父親は準強制性交の罪に問われ懲役10年を求刑された。

検察側は「中2年の頃から性的行為が常態化し、生活費及びその後の専門学校の学費を負担させて貰っていた立場から抵抗すればその二つを失いかねない」と主張。

弁護側は「ハッキリと拒否した抵抗の形跡はない、寧ろ進んで児の方も甘受しなければ長年の性交は成立せず。したがって同意と同じ」と反論。

名古屋地裁岡崎支部は「性交は娘の意に反するもので、抵抗する意志や意欲を奪われた状態だった」と娘の同意はなかったのだから強姦と認定を下した。

これはパチパチ!

真逆しかし

「中2以降に性交行為が常態化していたことは事実。この性行為は親の暴力又は恐怖心によって為されたものではない証として本当に嫌なら何らかの拒否表示はできた筈、しかし漫然と本人である児は受け入れていたというのが事実」と指摘。

このような抵抗皆無、即ち、当事者同士が長年やりまくって、また、回避する努力も見れれなかったことから「従わざるを得ないような強い支配、従属関係にあったとまでは言い難い」と断定。

つまり、娘が抵抗不能な状態だったと認定することはできないとして、長年にわたって実の娘に対し行った性的暴力は認められない――同意の上の或いは伴に欲求した普通のセックス相応であった、と。

よって、犯した筈の父は無罪判決を得る。

親が子にして無罪だぞ!そんなのでもラブなのかいな!?

こんなのは一例に過ぎない。

なかには。

小学生以来、父による娘に対するエッチ行為が続いていたという事実は、むしろ児は快さがなければ続く筈はないのであるから二人の性行為は、世間体は異常と見られても、当人同士にとっては伴に望んだ性行為と言わざるを得ないとまでの学者の論考や裁判規範まである始末。

世間の良識は、裁判所の倫理判断は、狂ってる!

これだけではない。

裸に異常過ぎるほどの執着心、卑猥な行為ほど萌える、変態であればあるほどそうハマってゆく、そなおとながどれだけ居ることか、どれだけ黙認をしている社会なのか!裁判所か! 

では、その後生長した子は、異性に対する性意識はどうなるのか? 或いは、社会一般に対する信頼心はどうなってゆくのか?……声になってないだけでどれだけ多くのこのようなラブがリアルにまかり通っているのだ。

「『声を殺して家族に迷惑がかかるから!』そんな社会は『死ね!』」と泣き寝入りをしてることを、分かれってんだい!――若し、周りでしてそうなケースを知ったら即通報しちゃえ!――って、万が一その当事者同士が合意の上で為していたとするとどうなるんだ?ここが問題だ。

もし、若しもだけど、自分の愛する子が、又は自らが、父・母から、夫から又は妻から兄から姉から、そうなっていたとしたら平気でいられるでしょうか?――



 誰にも一つや二つは有るというが、青海にも自慢できないことが遭った。父は、幼少の頃すでに、実父と別れ、あとで来た義父。

学校から帰るとドアを開けっぱなしで、見たこともない二人が妙な格好に夢中になって絡み合ってて、そっと二階へ、小6の臨海学校一泊後帰ったその日は母の身体中にアザが所々、痛い筈、嫌になってる筈。流石に「逃げよう! 殴ってやる」と母をかばうと「子供の出る幕じゃない」と云い返され何が何だかさっぱり話がレタス。

以来、父に馴染めない態度をする度に直ぐにグで殴って来る父親、ケダモノ!

或る日また殴られ我慢できなくなった息子は父を掴み倒すと母が、俺ではなく、父をかばった。


 どの話も好奇心を以てしか見ないおとなは自分にそな経験ちしきが無いからだ。他人事と逃げる偽善者がはたして大人といえるだろうか? 只の屁理屈屋になってるだけじゃないか。小中学生にも劣るってやつさ。やってらねー!

 経緯は異なってもこの3人は各人各様似たような、いや、そっくりだ。万事は大人のせいだぞコノヤロウ!


――父親になりきれない男4/5以上。

母親に、妻にもなりけれない女4/5。

モテなくなる加齢に比例して諦めで其其が1/5に改善。

これがリアルってやっちゃ。これが内緒の顔ってやつだ。ダメにしてるのは、口では善い事を云うくせに、おとなという名札を付けた人種に過ぎない。――



 パーカーだ!

一目散に逃げる原チャの中学生イツメン。

住宅街の奥の奥のみちに逃げたら四輪のパーカーが入れるわけない、ヒト安心。丸帽おまわりさんが来たって俺らの方が人数は多い、囲めば威圧勝ちとなって滅多めったにに来ないし。

ここんとこ矢鱈やたら引っ付いて来るのが咲。

半グレな青海、女には格好良く映る、男のフェロモンが飛び散る。そうなると蝶々が寄って来る。中には「ケンジ命」と股に彫る者まで。就く仕事先は風俗系しかなくなる。就職先の旦那になる筈だった者の多くは逃げてく。日本ではタトゥーは異文化扱い……実は欧米でも内心では昨今異人種扱いする傾向になってる……何所かの未開の土人やばんじんだ!というように。

一時の妄想が為せるわざ。実態は、唯の意気がりはんこつしん

「ねーぇ、うちのこと好きなの?」と咲は青海の顔を繁繁しげしげと覗いていう――いつまで経っても、いくら薄着をしても、いくら胸が見えるコーデしても、抱こうとしなかったからだ「ED(ぼっきしょうがい)の筈はね」と思った。

「俺に係わってるとオメエ不良になるぞ」

「もう不良だからいいの」

「じゃ、やめとくわ。これ以上俺、不良になったら人を殺すぜ」

と、何が何だか蒟蒻問答こんにゃくもんどうのようにはぐらかしていた、自分でもどうして、そうなるか、レタスのレタス――そんときに限って「心底に思うゆなが別に入ってる」ってこっちゃ――これが男の唯一の「純情」ってやつ。Heひと is a bad musician that can sing but one song.「馬鹿の一つ覚え」ともいう。自らをmusicianえんそうさせるだけなのだ。

しかし、社会なかまうちの環境には勝てない、周りの者たちがいい加減をしていても、いい加減とは思わなくなり普通の当り前なことと映って、自らの内に演奏していた純な音色は失せていく……やがて青海も例外ではなくなって……生理的欲求には勝てない、特に男は溜まっていくのみ、そうするイライラな生理的現象が起きる、やがて一回が二回何回も咲を抱きだすようになって。その点女の方が得、大好きにならないとその欲求は起こらないからだ、男よ!ざまー。

若者の唯一の財産は「純」である。これを失ったら日から大人ずるものになるのです。


 江の電の鎌倉高校前駅。眼前に広がる大海原。そして、富士山が迫る無人駅。

偶偶乗り合わせて、途中下車した結菜と青海がそこにいる。

「俺の女にならねぇ!?」

「男の体付ききたない。肌に合わんわ」

「…………」 「そんな汚ねえかなぁ」 「オメエだって生えてるだろ」 「生えてない!」 「じゃ、見せてみろ!」 「エロ馬鹿!」 「……って、もしかしてパイパンかぁ」 「死ね!」 「いやぁ、俺れはどっちでもいいんや、お前がお前であれば」 

「オマエ、女に生まれて来いや。そしたら構ってやるぜ」

「俺なぁ、その一直線なキャラが放っておけないんだ」

「何だぁそりゃ。告りか!?」

「おめえだって、俺にそう告ってほしかったんだろ」

「…………」

「なんだぁ、赤くなってら」

「ばーかーあー」 「お前、目が充血してんぞ」

これで四台目の電車が通過。

「海っていいよな―ぁ」

「オ―、大きいからな」

「俺も大きいぞ」

「なんだこのエロ気違い」と、自分だってデッカイぞと云い掛けた結菜。

ここで初めて二人とも草笑い。

「そう! 海は広いしすべてを飲み込んで綺麗にしてくれる。だからわたし、好き」と柔和な顔付になる結菜、その瞳に海の輝きが照っていた。

ギュッと青海は結菜の手を握る。

結菜は青海の手をそのままにしておく、が、ひと呼吸すると握り返す。

するとその手を温かく包み返す青海。

「なーぁ! 困ったときはわたしに相談して」

「おいおい、逆じゃんか」

結菜は初めて男の衝動を内に感じた。青海は初めておんなに包まれた。二人とも思遣り深くやさしくなっていた。


 江の島のマックに暴走族・旧車会が集結とのニュースが青海らに届く。

代替わりしたリーダーが仕切る二十歳前後を中止としたビッグな組織。

しかしこの日も、青海は動かなかった。

時に300台もが集まって国道上でドラッグレース(直線コース上で停止状態から発進しゴールまでの時間を競うモータースポーツ)やカーレースをして50台以上のパーカーと争うのが好きな連中とTVやニュースで聞いていたからだ。一体警察と争って何の得があるかったんだい――何何族っては他人に迷惑をかけずに仲間同士が集結して楽しむ会じゃねえの。

「けんど、このまま黙っとるんか?」と最近ブンキきぶんの合うようになった颯汰そうたっていうダチがいう。

「なんでや?」

「三組の仲村がここ半年ずっと毎月喝上げに遭っててよ。生活保護所帯の母子家庭を狙うなんてサイテ―じゃん」

「マジーぃ! わかった! 伝えてくれ、タイマンで話し合いたいと」

いつでも来いやとの返事が届く。

さっそく独りで乗り込む――背後に根回をした3年や卒生らを含む隠れた16人程の兵隊と。

「お初す! チンケな青海って申します。生活保護受給者から金を脅し奪ったやつがいるのが黙ってらないんで決定けじめを付けて貰いたいと参上したす。是非ご協力をお願いす」

「チュ―ボ―がよ,よく聞け! って主、このままノガキだけ垂れて帰れるって思ってのか」

「タイマンの逃げの口上すか!? 番張る男なら1対1見せてみいよ」

「おいおいケツの黄色い猿が騒ぐんじゃねえよ」

「そうけそうけ!! 反射神経マックスが中学生っての見せてやってもいいんだぜ(保体の先生曰く「8歳から13歳までが運動神経中の反射神経はイチバン旺盛」と聞いたのを信じ切っていたのだ)。

「オイ! 誰だ?保護所帯から金を奪ったやつわ?」と猫顔のソウチョウTワンピな特攻服をまとった女子が怒鳴る。

「馬場じゃねぇ!?」

「あれ? さっきまで居たんだけど……逃げたかぁ!?」

な遣り取りを聴いてたリーダーが豹変「分かった! あとは俺らの掟があるんで任せてくんねぇか」 「が、オメエさん、マジ勝てると思って来たん?」

ヒューッッ!と口笛を吹くと青海の兵隊たちが出てくる出てくる四方八方から。

「何じゃ、パイプで叩いてもバイクに原チャ勝てると思ったんか? 追いかけたらイッパツで自滅じゃろ」

「いや、パイプの先を視てや、尖ってるだろ、燃料タンクに穴を開けて逃げるつもりだったす」

「怖えーぇ! キョウビな中学生」

「ねーさんありがとす」

「オオ! よかったな。爽歌さやかってゆうんよ」 「ところでうちらに入らねえ!?」

「いやーぁ、迷惑掛けるからいいす」

「そっか、なんか、金以外で相談事があったら又来いや」

「あざまーす」

一件落着!(が、その後、半年した頃、旧車会に内部抗争が起き、分派が生れてく。また、これが契機となって爽歌と……)。


 「なんで体育は絶対ブルマと決めたん? 見て! あのセンコウのエロ笑い」という咲。

「んだ。だからあのセン公になってから仮病と偽って見学をするやつが増えたのさ」と応える結菜。

「ところで……那津美ちゃんと仲いいよねぇ」と何やら思わせぶりな云い方。

「合うからね」

「それだけ?」

「何云いたいの?」

「いや、訊いただけ」

「思うんだ。普通、好きになると気になって。気になると思いを伝えたくなる、思うように伝えられなくなると胸が苦しくなる、これが恋愛とちゃう!? 偶偶相手が男だろうが女だろうがこれは問題外、男・女にこだわらず人して考える方がいいんじゃね」

「経験でもあんの?」

「無いけど動画サイト観たら判るじゃ―ん」

「だね! お互い、普通ラブしてこ―ぜ」

「フツーといや、もうやった?」

「馬鹿野郎」

「結菜タン、でっかいなぁ」(いきなり話を振るな。お前もこの胸が欲しいんか)。

「お前の胸の方が!」

「ちゃうよ」

「知ってるよ」

「あんさ、碧羽が『結菜ちゃんタイプ』なんだって」

「やだよ。お子様ランチ」

「そぉ云っとくわ」

「ね―! こんど一緒に遊ばない!?」

「ォオいいよ」

「ほらぁ! ああやってレシーブできないように投げて転んだ女子の股辺りを楽しんでるんだからなぁ。ホント男ってやらし。ブルマ好きなやつって変態多いよね。ブルマって股もケツも丸見えじゃんか」(この校則を変えない学校の先生は皆知らず知らずのうちにエロ集団になってることに気付け! 長パン、半パンのジャージで充分だろ。それでも校則を変えないなら一度男子にブルマを履かせて見ればわかる、股が露出してなんともいえない淫猥いんわいな姿に目を背けるぞ)。

「オイ! お前ら列にちゃんと入って練習せんか」と急にこっちを見て怒鳴り出した先生。先生の子可哀想と云い出す咲、自分で云っておきながらドッキとした本人咲の表情……と結菜までも。


 下校しようと下ってゆく校門を過ぎると背後から「竹田あおみ!」 「何?」

「一緒にアソボ!?」と云うと同時に腕を擦ってきたその仕草、女みたいな悦笑み浮かべたやつ。 

「ぁーあそっか。オレ、お呼びじゃねんで他当ってくんねぇか」

「原チャ乗ってるの知ってるよ」

「だからぁ?」

「見つかると呼出しだからぁ」

「テメエ脅しか。いいか!図に乗ってると玉蹴り上げんからな」

BLボーイズラブこれも愛のうち。時代はそうなってるんだ。多様な文化が生まれるようにラブの形もレズだホモだ結構、上等だと世はなってきてるんだ。

傍目には、男女ラブより、BLはストレート・露骨・分かり易い、これが却って美的にも映る。

そう映ると女子が関心を持ちだす、腐女子とは唯その手のラブに関心を引かれることだが、これとは違って「悦びあるとこは何でもあり」と当に自分もその悦楽のようなラブに参加したくなるというのが悦女子誕生の瞬間だ。その美的な格好を自分に置きかえ疑似恋愛を内に描くどころか「せずにはいられなくなる衝動」が奔る。そんな女子が増えてきたのも文化の多様性の一環だ。

多様性と数が多い、ことではない。

幅広く性質の異なる群が存在する概念だ。これがダイバーシティだ。

ダイバーシティとは、多様性だ、偏見なく受け入れることだ――数は少なくても歴とした地位を得ることだ。

しかし、世間は非難をする傾向が依然として強い。

非難の理由が曖昧、男女じゃないから子孫を残せない、自分と異なって少数派だから、道徳が乱れるから、等と云い出す。道徳とは何だ?守れ!という規準だろ、これが先入観をもたらす、差別意識を生む。旧人類ともいう。化石になっちまえ!

愛の形くらい自由にさせろってんだい!愛は悦びなんだから!……世界はその方向に進行形なのだ……事実婚と同じようにさ。

だから、青海も自分の愛の形を選んだだけっよ!

ちな、ダイバーシティとは実は日本には或る点においてだけは早くから始まっていたんだ。正室である奥さんと間の子が天皇になったのは天皇制2700年のなかで僅か数人って知ってたか?

圧倒的大多数は側室の子が天皇を継承してきたんだぞ。

ところが儀式や古い習慣が大好きな国民性がやたらに美化し過ぎるから、結婚とは!男女とは!愛とは!と手前勝手な屁理屈を並べるようになったんさ。お内裏様、二人の永遠の愛、は小学生までの物語に済ませてほしいわ。

多様性の意味をもっ回考えてみるだけでもいいじゃね。女子が女子と恋愛して、結婚したって、何所がワルい? 好きならどんな形であろうと何所が変? 愛って世間たにんが決めることじゃない?

愛をこうだ!とキメてると勿体ないぞ――そこにはどれだけ悦びがあるか知れ!ってんだい。

「愛は、倖を開放してくれる。決して他人の(云う)奴隷に終わってはならない。」 「そうかもしれない」 「そうだ!そうだ!」と時代は進化してるのだ。


 せっかくの日曜だというのに夜明け前から降り出していた大雨。庭の紫陽花あじさいが日々色を変えている最中の雨だった。

母は急な祖母の看護の為留守をしていて。父はゴロゴロと寝そべってTV。

すると突然こちらに向き直って「結菜ぶっちゃけ云うがな。娘は父親に顔が似るというの知ってるだろう。お前と俺は似てるか? 血の通ってない親子つまり分かるだろ!? 俺らは男と女ってこと。父さん、お前を作った覚えが無いんだ。母さんが先にイっておれのは出てない筈。俺が嫌いか?」ゲッもうズボンはテントだぜ。そう膨らんだズボンを見た結菜は聞こえて聞こえなかったふりをしてその場を去ろうとしたとき、ショーパンの端を握り一気に下ろした父の形相ぎょうそうにけいそう

抵抗、バタバタ逃れ、流れのままのに受け入れた小3時の行為、のこれら三つ巴が一遍に襲ってくる。

ついに観念。一枚一枚上から下まで剥がされ裸にされても変に恥ずかしくなくなった。

されるままにしてる自分一体何なんだろう? 

何所を摩られても特別善いとも感じなかったがそれを上回る悦びの声とも息ともつかない空気を吐くおとここういが覆い被っていたのが妙な安心感となっていた。

内に留まってく動作おとこをむしろ促してる風な別のもう一人の体が居て……。

ふと目を覚ます。目の前に父が立って「風邪ひくぞ」とタオルケットを掛けてくれた――やはり膨らんだズボンが目の前にあった。

ああーぁ! 嫌ダ嫌ダ!! どうしてそんな夢見るんだ……今更。

、あの昔の声が今再び「結菜ぁ、久しぶりに背中流してくれないか」と云いだした父(やはり私をヤリ女としか見てない父)。

「あ、宿題の約束してあった」と云い繕い急遽きゅうきょ家を後にす。

こんな体験、同じ目に遭った者でなければゼッテイ解りっこない。その証拠に、別格な卑猥事として処理したがり、普通の常識事として見ようとしない大人の非常識さ。


 咲の家では。

「オイお茶」と云った父に母はお茶を置くと「お昼はお蕎麦にしますか」すると、声にならない父の吐く息が「うん」

これがかつてアツアツに恋愛をして結ばれた夫婦かよ、あー、いやだ。たまにはやれよ、あ、そうだ、うちもしなくちゃ、だからイライラが何処かに宿ってモンモンとなってヒスか。と、昔のアドレスを探り出す。デートクラブ宛のが出てきた。

アタリメエだ、エッチは子を作るためじゃね、楽しむもんや、スポーツと同じや、経験したことないやつには分かりっこね。

美的なメイクラブ、TVドラマのよう、結構結構! そう思う人には百パーセント紳士淑女なラブとなるだろう。

どんなラブ格好でもいいじゃないか、見た目ではない、どんなに恥ずかしいことでも気持ちに焼き付くラブが上等。

愛は、道徳ではない、紳士淑女行為でもない、分かち合う気持ちを高め合い互いの人格を認め合う気持ちなのだ。

花火の形は消える。心に萌える歓びは見えないが残ってゆく。

あのオーガズムは一度蜜の味と知った者しか分からない。あんな虫の汁なんてと思ってるやつは蜜を知らないやつだ。愛を語る資格はねえ! 得ることもね! どれだけ蜜には栄養素があるか――両思いのラブは蜜の栄養素なんさ――肌は綺麗になるし活力は湧くし。

どんな食物ラブでも旨いと感じれば体は喜ぶ、健康になる。いちいち、ラブは、変なのはダメ、礼儀正しいのがラブ、こうだ、ああだ、と言うやつは可哀想だ。

辛くてもカレーは、キムチは、麻婆豆腐は、旨い味だと知らないやつだ。

こんな経験をしたことない人は徒の人、品行方正な御方。愉しさ無くしてどこが品行方正だ、品行方正だけで幸せになれるてっのか? 幸せって何だ? 自分を、相手を、愉しむ事だ。

反芻ハンスウする咲であった。

期せずして同時に似たような、邪か、自然か、分からないがよみが二人さきとゆな


――自分自身が楽しんでるのは過去の出来事、悩んでいるのも過去の事だけ。その喜びを、そして、その悩みを通してのみ、 自分が、何を捨て?何を求めるか?を過去は教えてる。――



 キャッ!ホッホッー!! 両手両脚広げて! 海が下に目えるから鳥になったみたい!と下り坂道を四本の腕と四本の脚を空に浮かせ、かっ飛ぶチャリ上の結菜と那津美。

そこは湘南海岸公園。

海にサーフボードに空に富士山を望む広ーい緑地、レレストランもあって。

若者同士なら芽生える筈の無いロマンスも芽生えるさ。

誰でも気軽に利用できるサーフビレッジもあって。そこにはコインロッカーが備えてあり公園や芝生が一面に広く見渡せる広場で一日中遊ぶ人たちも。

ビーチスポーツやライフセービング活動等の支援活動などを積極的に行っているスポットでもある。

具いっぱいのタコメシ600円なりはありがたい。


 「きれーい!」

「だねだね!! 綺麗じゃなきゃ何も始まらないさ」

「ねぇ、うち、綺麗?」

「いつも綺麗だよ」これでいいだろ。

「ぅん、あんさ、めちゃくちゃにして」

「えぇ、滅茶苦茶って?」

「だってーぇ、盗られたくないもーん」

「盗るって、何を? 誰が?」

「青海ってやつ好きなんでしょ」

「あーねぇ、あいつは友だち。って話してみると結構良いやつ」……かもね。

「触ってい?」というと、もう既に云うより早く那津美は結菜の腰掛けていた膝から上へ指を徐々に伸ばしていた。

「なぁ、俺ら、気持ちが一つになるから付き合ってるんだろ。と云うのは、もしかして気遣って、オレを喜ばそうとして、ムリして体を触ってくれてんのかなぁって」

「違うよ! うちが感じるからだよ! ドンカンw」

「ウレピこと云うわ。触って!思いっきり触って!」

そういうと二人の顔はゴロっと空を向いていた、互いの脚と脚が互いの所に交互に置いていた――ここが部屋なら……と妄想するほどに。

「捨てたら殺すよ」

「オイオイ、捨てるとか云うなよ。あ、オレが他の男と何するかと思ってない?」

「うん!思ってる」

「仮に、仮にだけど、そうなっても那津美は那津美、好きは好き、どこまでも」 「って、那津美も素敵な男子に巡り会えたら堂々と恋をすりゃいいよ。でもオレの気持ちが変わることが無いことを忘れないでな」

「えー! しないもーん」

「それで那津美は欲求不満にならないの?」

「そのときはそのとき。その手の男ならいっぱい居るから」 「いや、心じゃなく、身体が満たされる男ってこと」 「ねぇ、うち、変かなぁ? ってホントは私の事疑ってるでしょ」

「疑う? 何が?」

「いや、何でもない」

「『欲求不満のときは、云々、その手の男ならいっぱい居る』と今云ったよな、なーるほ、どうしても体がモンモンとするときはその手の性欲の捌け口にリア充となるその手の男の許に行くと云ってるようなもんじゃん」とオレに宣言したな、正直過ぎるぞ。しかしオレにはできない、が、体は満足しても気持を充実させたいときには今度はオレへかぁフムフム。

ってことは那津美は遊んでるなぁと六感が過ぎった結菜。

しょうがない、一度美味しい味を知っちゃうと又食べたくなるしね。

言わないでそっと見守るのも友情かなって――自分だって人に偉そうなこと云えない――いつなんどき父にまたブッ込まれるか……って、本当の親なのかしら?。



――「矜誇きょうか(自慢の意)、愛欲、疑惑、あらゆる罪は三千年来、この三者から発している。同時にまた、おそらくはあらゆる徳も。」……「どんな形にせよ何事もしてみてそこからしか『徳』を積むことかできない」芥川龍之介。……「生きるとは呼吸することではない。(思って考えた事を)行動することだ。」ルソー。


「もっともいやらしい男性は、自分の性的な力を自慢にし、セックスをまるで優勝カップを取る運動競技のようにみなしている人たちです。セックスを心楽しいものにするために男性が刺激しなければならないのは、女性の心です。」マリリン・モンロー(16歳で結婚。世界ナンバーの女優となり。その後恐らくは世界で一番多くのこいもけんこんをし若く半ばしてその生涯を終えた「最多の恋の実践者」)。


「セックスは体操よ。どう体操するかで体の何所が鍛えられ、どこが衰えるかなのよ! あれもこれもな体操で鍛える人は体も元気になって心は健やかになるんさ。」と、結菜に過ぎった。


「青春とは、 心の持ち方・・・・・(ひとつ仮令たとえるなら、ラブをどう捉えるか)」 サミュエル・ウルマン(アメリカの詩人)。――



 「あのさ。今度の連休に車でお泊りして白浜にサーフィンしに行かない!?って誘われてんだけど行く?」

「白浜? 綺麗な名前。何所?」

「勝浦と云う所らしいよ」

「勝浦? 浦島太郎の所みたい」

「それどこ? 誰が誘ってるの? 第一うちら車持ってないのに?」

「千葉県の南房総だって。オリンピック競技大会にも決まってて国内では最高の波らしいよ。颯汰から。そのお兄ちゃんの颯希っていう人がワンボックス持ってて」

「へぇー、そうなんだぁ、どんなとこなんだろう?」

「言うことには。海岸沿いに全国から初級から超上級者まで楽しめるサーファースポットが70か所以上も点在、凄くない。飯岡エリアってバラエティにとんで波に乗れて、夏は海水浴場としても有名なんだって。他にも吉崎浜ビーチは堤防に挟まれて波の質は揺るかで女子には安心してサーフィンが楽しめるらしいよ」

「うん! 行く行く!! うちらとその兄弟の四人ででしょ」

「車でお泊り。中学生はホテルに泊めてくれないし」

「へ―ぇ、ステキーぃ! 一緒のお泊り初めてぇ!」

「いや、違くて。青海と咲も一緒だよ」

「えっ……やめとく」

「どうして? 近くを通っている黒潮のお陰で、全国で一番花栽培も盛んで真冬の二月でもポピーって花がそこいら中に咲いてレストランの女の子は半袖なんだって。気にしないで一度行ってみようよ」

「えぇー、やだぁ。咲ってうちの悪口言ってるし、それに……」

「それにって何?」

「青海に盗られちゃう」

「そうかぁ……じゃあ! うちもやめとくわ」

「だいしゅきー!」と云って体をぶつけてくる。女の子って可愛い仕草するな―ぁあ。

「あ、そっだ。颯汰って池様をいいことにあっちこっちの女子をよく誘うんだって」

「う? 那津美も誘われた?」

「『も』って結菜も?」

「実わ」

「ウヒャヒャヒャヒャ」と云って二人とも馬鹿笑い。顔を見合わせ再び草吹く。

男ってしょうがないドウブツ。うちらはその都合のいい女にだけはならないように気をつけよっと。

だだ!! 男って可哀想、一人の女から深くたくさん貰うより、少しずつ愛を分散して貰ってるから喜びも幸せもちっぽけずつ細切れに。

ホントホント!!(と云いつつも。女もそう云い切れない。モテ期をいいことに蝶々となって花から花へと……)。


 日本初のフレンチトースト店。

青海が、そこの割引券あげる!今度一緒に行こぉ!と貰っていたが那津美と行こう!となって。

大きく螺旋状らせんじょうに広がる展望台を備えた本格的なフレンチスタイルな「カフェLONCAFE」。

江ノ島300度展望はむろん富士山も手が届きそうなサムエル・コッキング苑(明治時代の英国人貿易商「サムエル・コッキング」に由来した和洋折衷の南国の花々、四季折々様々な花や植物がニッコリと迎えてくれる植物園)の中にあるカフェ。

本場フランスの「パンペルデュ」という調理法らしいが、このフレンチトーストは、食ったこともない、絶品!

スイーツとコーヒーで潮風を感じながら口にするとそれはもう甘く、何も要らない!となっていた。

「いらっしゃいませ」

「ぁあ……これのお代わり!」

「いいのよ、これ私からのおごり。青海くんの友だちでしょ!?」

「あ、はい。ありがとうございます」

「わたし莢歌サヤカです」

「えー、あのカツアゲのときの莢歌……さん、ですか」噂はとっくに広まっていて。生活保護者の友だちが喝上げを食らったことに青海が義憤を抱き暴走族グループ旧車会に乗り込んだ際に、ガチ一瞬触発タイマンかと思いきや、そこの姐御あねご格であったリーダが一役買って青海の見方になってくれた綺麗なねーさん、その時の莢歌さんだった。

「あなたが結菜ちゃんね!?」

「はい」

「『綺麗なやつ』って言ってたけどホントきゅーとな小顔の八頭身美人、女香がただよってるわ。私が男ならイッパツで乗っかってやる冗談冗談!!」

「いえいえ、お姉さんの方こそ美肌に美脚(……グッと来そ……ヤバ!もぉ想像してら、抱いたらどんな顔になるかなぁ)」

「タメ語でいいよ。あいつ見掛けによらず純なとこがあって――三個下だけど一筋根性の入ったとこが放っておけなというか気になってさ」ゲッ惚れてんのかぁ、いや、青海が口説いた? ま、どっちでもいいわ。

「ぇえ、確かに、話してみると一本、筋の通った男前……かも」

「あ、油売ってるとヤバェから。バイト中なんで。後でよかったらアド交換しない!? じゃ」

「へーぇえ。青海ってモテモテだね。結菜ちゃんどうする?……うちを捨てたら殺すからw」

そっかぁ、殺したくなるほど俺を愛してるんか……「男は皆んなそうだから。イチイチ真に受けてたらたないって」

「あっ、見て!咲が居る」

「うん、知ってたよ」

「って何? あのオヤジとイチャイチャ――よく真昼間から堂々とやるわ」

すると目線が合って席を立ってこちらへ向かって来た咲。

「こんにちわ」

「ちょっとごめん、トイレに」と云って席を外れる那津美。


 「変な子」

「じゃねだろ。お前さ、彼女の悪口やめろ」

「してないよ。うちは普通に友だちのつもりでいるけど……誤解してるんだよ」

「ま、いい。ところであのオヤジは?」

「わたし、引っ越すかも」

「それとあのオヤジと何の関係が? あんさ、まさかと思うけど」

「言うな! エンコーオヤジと思ったと云いたいんでしょ。そんなんじゃないよ。パパの秘書だよ。世間体があるから一緒の家で住もうって話」

「一緒の家って?」

「う、渋谷の松濤ってゆんだけど知ってる? そこに来なさいだって」

「ぁあねぇ分かった! あの自民党の大幹部だもんなぁ。え? 奥さんがいたんじゃねえの?」

「別居離婚(「別居が5年以上継続している場合が離婚原因に追加。性格不一致なら別居なら二・三年で離婚理由になるという判例」民法752条の同居義務違反)になって、このままじゃ世間体にも何だからこの際離婚をして正式に暮らそうだって」

「へー、言っちゃなんだけど相当な歳じゃない。あ、わり」

「ううーん、いいの。ママと40歳以上の親子程の年齢差だけど。あのね、似た事件があったらしくて『宇野という人が首相に就任した3日後に愛人を囲っていたという理由で69日後には辞任せざるを得なかった』ってママが云ってたの。だから……」

「そんなことあったんだぁ。それより実の親子なら一緒に住むに越したことないんじゃない」

「やだーぁ、あんなお爺ちゃんと、うちが恥ずかしいよ。ところでさ、うちの事情よく知ってるね、誰から聞いたの?」

「いや、皆んな知ってるよ」

「……そうなんだぁ」

「あのぉ……ちょっと失礼します。私はこれで。車で行きますから咲さんの足が無くなると思ってこれはタクシーに使って下さい。では失礼します」とテーブルにタクシーチケット一束を置いて去る。

「スゲー、10万円くらいありそ、気前いいね」

「政府関係者は皆タダで貰ってるんだよ(実際は、地方公務員の一部を含め国家公務員なら全員が支給されている)」

「そうかぁ、で、引越しの打ち合わせ、つまり、転校先の話で来たのか?」

「ちがうよ。私がゼッタイ行かない!って云ってるからそれを変えさせようとこうして」

「で、そうするの?」

「私が行かないとママが行かないって。行けば……」

「そっかぁ、『行けば……』って青海と離れることになるもんなーぁ」

「いいの! 仮にそうなっても東京からここまで40分少しあれば着くから。あ、云わせた」

「云った!w マジな気持ちをあげたら青海も咲のこと大好きになるんじゃない」

「マジマジ!!してるよ!……ってゆか、本命は結菜だよ。『あいつの傍に居ると落ち着くんだよなぁ』って云ってたし、結菜ちゃんのことをいつも訊いて来るんだよね」

「やってないからだよ。したら「釣った魚に餌をやらない」的に又他の女を探すタイプだからさ」

「アイツさ!モテるからなぁ……」

「ちょっと小耳に挟んだことがあって。颯希さんのつまり颯汰のお兄さんに当るんだけど、妹さんが真剣ラブを青海にしてことがあってその妹さん颯愛ソアっていって美人だからモテて例の武郎からもラブコールがあった頃誰の子か分からないけど『生理が来ない……どうしよ?』なって。これを知った颯希さんが「ゼッテイ殺したる!』と怒ったけど、どうすることもできず、ついに颯愛さんが1人の友だちに相談……」

「それ誰から聞いたの?」

「颯希さんから」

「えっえ!結菜、颯希さんとも付き合ってたの!?」

「ワンちゃんがぐったり死にそうになって私マッハで抱いてお医者さんの所に行こうと走っていた時に偶偶通り過ぎようとした彼の車に乗せてもらってそこへ連れってくれたことが縁で」

「へっへーぇえ!だね。根は善いやつなのにヤバいね、武郎って完璧ヤリモクじゃんか」

「武郎の子かどうか分からないけど。あーぁ、そうだね。えっと誰だっけ? ほらさっきの人?」

「莢歌さんか?」

「そ。その人武郎と青海ともやったらしいよ。で、その後もつづいてるみたい」

「まさか!」

「『年上のテクって流石』って皆んなが云ってるとか云って、本当は自分のこと云ってたりしてさ」

「ゲッ! あんさぁ。やるって、キモチがたまらなく、いとおしくなってユニセックスとしてその相手が欲しくなるときするもんじゃねえの」

「結菜さ、那津美とやった? 正直!」

「テメエ! 殴るぞ」

「結菜170超えしたっしょ!? 上背うわぜいがある上に好い体付きしてるよねぇ――うちもしてみたくなりそ嘘ですよ!」

「ならぁ、そうされたくなるよう自分を磨いたら誰かが転がリ回してしてくれんじゃね」

「『転がしまくる』う? キャ! えっちぃ」

「ばかやろ! 自分から云い出したんだろ」


 「綺麗だよーぉ」

「あれ?トイレが!?」

「ちゃうよ、南国の花の原色が光っててさ」

「あーぁ、植物園見学してたのか」

「じゃ、うちはこれで」 「あ、今度一緒にあそぼ、那津美ちゃん!誤解だよ、うち、悪口云ってないからね」

「うん、ありがとう」

席を立って……直ぐに戻って――その一束を手にすると性急そそくさと階段を下りてゆく咲。

「ね! またうちのこと色々言ってたでしょ」

「いや、そうじゃなく。東京に引っ越すらしいぞ。なんでも実の父が一緒に住もうと云って。でも本人は遠くになるから行きたくないみたい」

「あれーぇ? うそだぁ。片瀬江ノ島駅で深夜12時過ぎに改札から出てくるの今迄私何回も見たことあるよ」

「……ってことは、那津美もそこ居たんか。なんでや? そんな深夜に」

「ちょっとね。パパと大喧嘩して頭を冷やしてたら……」変じゃね、何回も深夜にか? ま、いい。

「そっかぁ……父親って親じゃなく男に躍起マッド になるときあっからな」

「男って? マッドって?」

「親らしく無くなくなってヤリモク目線になるってやつのこと」

「あのサヤカ、結菜ちゃんに興味ありありみたい。したらもうやってあげないから!」

「なんじゃそれ!」

「だってぇ……どうやってイかしてもらってんの?って訊いて来たことあったから。あの子自分もゆなかにしてもらいたんじゃないの」

「で、何んて応えたん?」

「馬鹿じゃないのするわけないっしょ。唯の親友ですって!」

「いやーぁ、バレたらバレたでいいと思うときあってさ。却って隠れてするよりもこんなラブもあり!って堂々としたくなってよ」

「それ!思った。恥じることしてないもん。当り前なことしてるのに勝手に決め付ける頭の方がよっぽど変態」

「確かに変態。あそこまでしてくる那津美わ」

「あ―ぁあ!云ったな。アノトキの声・グチャグチャな顔今度録画して見したるわ」

「オイ! まだ真昼間だぞ。それにそれって全部、那津美の強請おねだりからじゃんか」

「ねー、今度何所かお泊りで遊びに行きたーい!」

「オー! そしよ」

「もっかい鳥しよ!」

「今度はヨダレ肩に垂らすな」

「……出てたぁ!?」

「じゃぁ!行くっか」

爽歌さんの方へ寄って「今日ありがとうございました。綺麗なお姉さんにおごって貰ったの初めてです」

「今度おごれ! と、青海によろしくな! あっ、さっき云ったろ、タメ語で喋って」

「ハァーイ」

「また……心配。どうしてそんなモテモテなんだよ。今度いじめてやる」

「ハッハハハハハハハハ、もう虐楽いじめてるじゃんかS様」

「はーぃ! S様のS様」

SMじゃなきゃ男女うちらもは一心同体にならないってことよ。ラブは綺麗事じゃないからな、生生だからな」

「もーぉ、結菜って魔法使いなんだから!いつもグッサと胸に刺さること云うよね」

と、云ってみたが、ホントは相性(気持ちの合唱)なのかもしれない……とも思った結菜。


 この頃、結菜と青海の会う頻度は増えていた。

七高坂に出ると、左に住宅街、右にも人人の暮らす家家、このど真ん中に空に浮いている大海原。とてもとても不思議な光景が迫る坂の上からDEKAVITA(サントリ炭酸水)を口に自撮りする結菜と青海。

「も―お、あんなスピード出すなら乗らないから」

「わりわり。喜ぶかと思ってさ」

これより数時間前。

「触らないでよ!」

「どうしたんだよ?」

「自分で考えろ」

「妬いてるのか!?」

「日本語は正確に云え!」

「ん?……」

「鈍感エロ! 『ゆなだけ』って云ったろ」

「お前だって那津美とやってるんだろ」

「凹凹同士でどうやってやれるんだよ? 咲とは凸凹同士だろ、いつでもハマるじゃん」

「それとこれは別やーん。好きなんだよ結菜が!」

「あっちこっちの女子に手を出してるだろ。お前の本心は何処にあるんだ? いい加減しろってんだい!」

「ヤれるからだ。女子には男の生理は分かんねえだろ! 気持ちと身体は別なんだよ。気持ちはいつも結菜にあったんだ、信じてくれ!」

「よく云うわ!好きって。じゃうちだっけて証拠見せろってんだい」

「この通り! 顔見てくれ! ガチ本気だから」真剣、真面目、誠実、っぽい……もしかしたら本当かなぁ!?と思った結菜――自らにそう思わせたかった。

とまぁ、云いたいことを云って1/10ほどのつっかえがとれると、この七高坂に着いていたのである。


 由比ヶ浜の砂丘を歩くサク!サック!というおとを耳にしながら遠くを見てると、もうどうでもよくなって、「海はいつも語ってくれるよね!大きく胸を張って生きろ!と、でもでも……見た目は綺麗な海だけど実際は大腸菌の多い海。行政は何とかしてほしいよね」

「だよ!海を見てると落ち着くしな。俺らが生れたときから住んでる庭。汚してる東京の連中に住宅地が増え過ぎなんよ」

「青海!お前、いろんな女とやってると大腸菌で汚れるぞ」

「またかよ、してないって!」

「『した!』って爽歌さんが云ってたぞ」

「会ったのかぁ……あれはしょない。なりゆきってもんだった」

「ほれ見ろ! やってんじゃん!」

「ああーあ! ひっかけたな」

「だからお前はコドモってゆうんだよ」

「だって結菜はやらしてくれないじゃん――だから」

「なにそれ! やらせて下さいって云わないじゃん」

「やろぉ!」 「ちげだろ! ください!は?」 「して下さい!……」

簡易のトイレボックス内に入ると「入れるな、外に出して」と二人の行為は進行形へ。

「最初の男とはもっとロマンチックな場所と思ってたけどトイレかぁ、でも良かったよ」

「ゴメ……直ぐ終わっちゃって。同いやつでもいつもならもっと長く続いたのに」

「同じ? 誰? 咲かぁ!」

「…………」 「すまん」

「やっぱなぁ。ま、過去は過去。で、よかった?」

「色が違う、結菜みたいに真っピンクじゃなく、それにあの歳でどうやって知ったかあのテクニッシャンじゃなぁ。あ、云うんじゃなかった」

「で!? 云って」

「イきそうなると、スローダウンしながら、息つく暇もなくいろいろ攻めてきやがって。けどな、出る寸前に頭のてっぺんから足の先まで電気が奔ったのは結菜が初めてだった」

「いつまでも云ってろ!」

「もーぉ、云わない! 許せ!」

「わたしねぇ、やることより、そうしてやりたくなってどう心に残ったか、どんなふうに気持ちが通い合ったか、みたいなセックスをしたかったんだよね」

「『したかった!?』って、誰と比べてるん?」

「乙女心の妄想ってやつね」まさかパパにやれていたなんて言えるわっきゃない。

「うちのことどのくらい本気?」

「『わたし、うち』って結菜が云うの初めて聞いた」

「一応女ですから」なるほー、確かに変身したと妙に納得する結菜……でも、男とする感覚と女とする感性とはちょっとちがうんだよなぁ……。

「一途とか一筋とか云うのは簡単。二十歳になっても百歳になっても傍に居てくれるだけでいいだぁ。これが一筋ってやつだ」そう云い切った青海の横顔に波の光が反射して神々しく結菜には見えた。

「マジィ!? 青海ってちょっとキザだね。先のことは先のこと。仲良しがつづいてけばそうなるんじゃない!?」

「な! 乗れ! 背中」

「いやァアアアア! もっと走れェエエエエ!」

おんぶした青海、された結菜、まるでジェットコースターを楽しんでるよう。通行中の人たちも呆れた顔して。

「うち、中三になったら寮のある高校へ行く」

「俺、四大付属高を目指す」

「生まれて初めて、だんしと本音で語り合えたの」

「初めてだ、女子がひとに見えたの」

と、波間に声がした。


 「久し。ね! 見たよ。那津美がガールズバ―近くで散歩してるのを」

「咲ってどうゆう人かなって? ゴージャズなホテルでランチをお父さんらしき人と食べてるのを」

たぐいのメールには一切返さないでいた結菜。

いくら綺麗な光景を臨む海岸沿いだからって夏の国道イッチサヨンを走る車は馬鹿だ、百メートル行くのに一時間ってこともある。裏道・抜け道はね。最初からこいは選ぼうぜ!


 「今日会いたかったぁ」那津美の結菜に対する電話での第一声だった。

「何だよ、今更。いつでも来りゃいいだろ」

「ビーフシチュー好きだって結菜ちゃんがゆってたから私作ってみたの。でも風邪かなぁ。熱っぽくて、移すとイケないから持ってけなくなっちゃた」

「そらぁあかん。寝てな」

さっそく冷えピタとパイナップルのカットフルーツ、チョコレートも。風邪には効くらしいからと買って那津美んちへ行く。

ほっぺがチークでも塗ったように真っ赤っ赤「ゴッホン」

ホントだ、寝てれば治るから! ありがとー! したかった! 馬鹿じゃないの!こんな風邪どきに。 治ったら取り戻そ! うん!ゴッホホッ。 じゃねぇえ!

作って貰ったビーフシチューを片手にすいすいチャリを飛ばしてくと「よ! 姫!」と呼び止めた颯汰。振り返るとニッコリした顔に花火を持った手。

「どこでやるの?」

「ダチらと思って……けんど……もし、よかったら二人でしちゃおっ!?」

「うん!」

「ヒュー!ユルユル!!……ドン!」

「きれーえー!」

「青海に怒られるな」

「よく分かんないんだ、彼氏ってどういうのか?」

と云って、颯汰の顔を見ると哀しそうな表情をしてる、「……う? どうしたの?」

「いや、なんでもねえ」颯汰の目元が濡れていた。

「あ、お姉ちゃんのこと想い出したぁ?」自殺と皆んなは云っていたり事故だったと云っていたり殺されとか、を聞き及んでいたからだった。

「アイツさえ居なければ亡くなってなかった……」一年前の夜、出たっきりで帰って来なかった姉の当時中三の颯愛ソアが翌朝海岸に死体となって打ち上がっていた。

「アイツって?」

武郎タケオのヤロウ!」

「ぅう? もしかして……あの旧車会の? えーえっえ、どうゆうこと?」

「『付き合おう付き合おう!!』と連日電話メール待ち伏せが武郎からあって。ついにバラの花束を持ってひざまずいて『颯愛さんイノチ! 俺死んじゃう……』とまで云って来たけど『マジごめんなさい。気持ちは嬉しいけど私好きな人が居るからぁ』」と必死に拒否。そのとき武郎のダチらが腹を抱えて大笑い。その後数日して武郎らかどうか分からないけどバイク三台が颯愛姉ちゃんを囲んでいたという目撃があって……多分誘拐して何して何したんだよ。きっとそうに決まってる!でなければ帰って来た筈!」

「ウワッ! そんなことあったんだぁ」 「あ! だから生活保護者がカツアゲに遭ったとき青海に『どうする!?』って闘いを促したんだぁ」


 「でもぉ……証拠がないもんねぇ」

「間違いない! 三台のバイクとお姉ちゃんが目撃された場所の近くが断崖絶壁。江ノ島稚児ヶ淵といって急な断崖絶壁が広く下ってる一帯なんや。地元のやつじゃないと分からない場所さ」

「あぁ、知ってる。落ちたら死んじゃうよ」 「でも……それとどうゆ関係が?」

「そこら辺まで乗せってて『再度口説いた』又は逆恨みで『輪姦りんかん』に及んだ。このどっちかに決まってら」

「輪姦ってなぁーに?」

「強姦。何人もの男が立ち替わり入れ替わりヤりまくるってこと。でもその可能性はないかなぁ」ああ、何所にも居るんだぁと思い出した結菜。

「とゆ事は、追い詰められて足を滑らせ断崖から落ちた?」

「多分そ! 又は憎らしくなって、突き落とした。警察の検視で精液が無かったって云ってるから」

「とも云い切れないよ。寒さと塩水に弱いんだよ精液って。イっく寸前に抜いて体外に発射した瞬間、外の空気は体内より低いしその上落ちたときの海水塩分で消滅しちゃうらしいよ」

「詳しいな」

「常識だよ。男のソレって凶器になるしね。知って防御。知らないと損するのは女だけ」

「なるほー、知らなかったよ……えー! ヤられまくって放り投げられたってこと!? 殺したる!」

「ゴメゴメ云い過ぎました。一往想像だから」

「どーして好きなら優しくしてやらないだろう? その方が自分の方だって好かれてゼッテイ善い事がある筈。誠実味のない付き合いは恋じゃないよ、犯罪だよ」と云うと結菜から顔を横を向け。また泣きそうな顔付になっていた。

これを見た結菜は「男子にも良識あるやつがいるんだなぁ」と初めて、いや、青海との二度目のおもいとなった。可哀想になった。


 「でも変だなぁ。当時、爽歌さんが武郎の彼女って私は聞いていたけど。しかもどうなってる分からないけどその後彼女は青海とも同時にヤってらしいよ」

「ん? じゃ疑わしい犯人は誰だ? ヤキモチからお姉ちゃんが憎らしくなって殺したか? そこまで本人がしないまでも誰かにそうさせるように仕組んだとか? 妊娠させたことを隠すためにお姉ちゃんともども子も消っちゃおとしたか?」

「云えてる。かも」

「って、俺!ゼッテイ許さね! お姉ちゃんを殺したヤツわ!」

「うん、わかる!」

「あのぉ、ところで結菜さん青海のこと大好き?」

やっぱ来たぁ「だからさっき云ったじゃん。彼氏しかどうかわからないって。そもそも彼氏ってなんやねん?」

「青海とやったんだろ。それでも俺は気にしないからさ」

「気にするのはこっちだよ」

「なんで?」

「二股はヤベェ」

「いいじゃんか、どっち道今だって二股してるようなもんじゃんか。那津美とさ」

「お前殴るよ。うちらは心友。心友なら相手の為に一所懸命に思って遣るのは当然っしょ」

「体もかよ、変だよ」

「変じゃないよ。相手の為って心身の事じゃん。もうこれ以上云うなら私帰るから」

「分かったよ。じゃあ、してくれるまで俺、待つから」

「馬鹿じゃねぇの」と云った後で「マジ本気かも……こいつ可愛い」とも思えてきた結菜。


――気持ちを開かすのは心であって体力では決して開かない。いくら美辞麗句、いくら力任せ、けっして心が開くことはない。おんなの身体はそうできているのだ。

ジャスミンという花は何処の家にも見受けられるありふれた花よ。買っても僅か2・3百円、がその香りは花中でナンバーワンなじょし

この花の茎は独りでは立てません。その若葉をもう一方の枝に巻き付けてその身を立てて生きるのです。巻き付いてツルとなった我が身は相手となっているそのツルしだいで咲き行く先が決まる。

香り高いジャスミンよ、負けるな負けるな!! 自分の花を咲かせ!

我ら若い中学生。うちらはジャスミンなのさ。

それが中学生の誇りよ! 特権よ! 実力よォ!――


 と同時に過ぎってしょうがないときも。

うちって何だろう? 女かしら?男なのかしら?魅かれるのは女子へ!男子からは女のそれとは別の感性が襲ってくることも――まぁ、いい! なるようになるわ! イチバンは自分に正直に生きることだわ!


 そこへ突然「青海が死んじゃう!?」と荒々しい声が那津美から飛び込んできた。

「やめろ!冗談わ」

「やっぱ知らなかったんだ」

「ん!どうゆこと?」

「深夜に青海の原チャが、数台のバイクに追い越こされようとしたとき滑って十メートルも飛ばされたんだって」

「え?生きてるんだろ!?」

「死線を彷徨さまよって脳挫傷(頭蓋骨の骨折に入り込んだ陥没の影響で、または異物や押し込まれた骨片が原因で脳組織が裂けた状態)で危篤状態だって。意識があれば脳に溜まった水分(脳脊髄液。膨張すると脳内を破壊)を背骨から抜く手術もあるけどだって――このまま目を覚まさなければ命が消えるって病院の先生が」


 サッと一目散!病院に駆けつけていた。

那津美はじめ咲、颯汰、爽歌、等々……夫夫の関係者が一堂に会していた。「絶対安静」という張り紙があって集中治療室の青海の姿を見ることなくその場を後にする結菜。

「この一週間が山場です云々」との担当医師からの言葉が告げられたからだ。「運を天に任すしかない!」と思ったからだ。

もうひとつ「一体何故?数台のバイクが一斉に青海を追い越そうとしたか? 青海の運転技術からして事故る筈はない! が、数十メートルも飛ばされた。とっても不自然!」 「殺そうとした!?――誰が?何の目的で?」との勘が奔ってならなかった。

そいやー、颯汰のお姉さんが亡くなったのも、どうしても!不自然。奇怪と思えてしかならない。

「愛は、生と死の狭間だ」

「命を吹き込んでくれる」vs.「殺してしまいたくなる愛の裏の顔」


――恋ほど真剣勝負なものはない、闘いだ!生きるか死ぬかの戦いだ! 勝者が居れば、オワル者も死ぬ者もいる。――


 この半年後、警察が動き出した。

武郎が、児童福祉法違反の児童に対する淫行行為の容疑で逮捕される、これは別件逮捕であった。が、処分保留(期間内に十分な証拠が揃わなかっため、とりあえず被疑者を釈放すること。刑事訴訟法208条1項に基づく)で釈放される。しかし一連の案件も含めて継続捜査となっている。


 奇跡は一生に一度。

二年後、結菜と青海がかつて交わしたことのあった言葉の通り、結菜は全寮制の高校へ、青海は四大付属高へ、と伴に進学を果たし、互いにバイトと奨学金とで助け合いながらワンルームアパートで半同棲生活(この時点で全寮制高の校則に従って自主退学し転校)に入った。

併し、結菜と那津美の繋がりはその後も深まってゆく。これを知った上で青海は結菜を受け入れていた。

そして現在共に18歳、二人の間に六か月になる女の子が生まれていた。唯一つ、相変わらず二人は賑やかな云い合いをする時があってもたしか(しっかりしとした)な結婚生活を営んでいる。青海の夢はオーナーシェフになること。結菜もそうなるよう支え。今でも二人は、江の島の海と、富士山を臨む空と、温暖な空気と、共に暮らしています。

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ジイ・アイ・ディなわたし、だから何んやねん? 知りもしないで云うかな! いく たいが @YeahYu

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