第2話 運命
「僕の……寿命が、あと23時間……?」
てっきり勘違いしていた。僕自身、人の意見に流されやすいし、順応性は高い方だとタカをくくっていた。でも、それは幻影だったと知る。
胃に激痛が走り、喉の奥が熱くなった。
「う、うう……。あ、あぶね」
思わず口を手で押さえて、呼吸を整える。
「夢なら覚めてほしおす。そう
もちろんだ。これが夢ならどんなに良かったことか。
「やけど、これが現実なんどす。アセイはんが手繰り寄せた運命であり、引き寄せた運命でもあるんや。少しずつでええさかい、受け入れとくれやっしゃ」
僕の中で徐々に募る不安な気持ちは、境内の仄暗い闇を一層深く包み込みんだ——。
「もしもーし、アセイはん。そないに落ち込まんといておくれやっしゃ」
狐面の少年は僕の虚ろな眼を見て、薄く笑みを浮かべているようだった。
はっとして、身震いした。少しの間、僕は意識を失っていたようだ……。
「アセイはんは本来、去年死ぬはずやった——」
え? それはどういう……。あまりにも唐突で、少年の声がただの音にしか感じられなかった。
「せやけどなあ……」
僕の質問を遮るように少年は話を続けた。
「ルールが変わったんやで。こっちの世界も色々あってや……」
急に狐面の少年が老けて見えた。やれやれという感じだった。
「ここ最近、成仏できんで彷徨ってる魂が悪さすることが多なって困ってるんや。そやさかい、未練残らへんよう本人に内緒で生の猶予を与えとったんや」
去年、僕が過ごした1年は生かしてもらっていた期間だったのか。
「あ! 言い忘れとったけど、ここの空間では寿命はノーカンやさかい!」
びっくりした……寿命のことを忘れかけていた矢先のことだった。
「やけど、結局何も変わらへんかった……。先延ばしにしたところで、本人は惰性で時間を
僕は何も言えなかった……。残りの人生なんて、生きていればなんとかなる……。将来のことなんてそのときに考えればいい。大勢いる希望的観測者の1人に過ぎなかった。
「そこで今回、新たな試みとして本人に種明かししてみることにしたんや。人は残りの人生を意識すると、どないな行動をとるかってや」
僕は困惑する頭を無理やり回転させて理解しようと苦しんでいると、ふとキョウカの話を思い出した。
「もし、明日世界が滅ぶとしたら何をしたい——?」
……皮肉だな。
まさに今の僕の状況とぴったり重なった。
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