3つの目のヘビ

武上 晴生

空が見える


そのヘビには、空が見えた。

見上げているわけではない。

顔を持ち上げる必要もない。

常に、空というものが、その目にありありと映っていた。


そのヘビは、頭に、第3の「目」があった。




そのヘビは、まだ幼かった。

空が見えることに、不思議も幸せも感じていなかった。

ただ、ああ、そういうものなんだ、と、当然を思っていた。




そのヘビは、詰られた。

お前はどうしてそんな変な顔なのか、と、大蛇に問われた。

水に映った自分の目を見て、目の前に映る大蛇の目を見て、ああ、そういうもんなのか。と、そのヘビは、うつむきながらその場を去った。


うつむいても、そのヘビには、空が見えていた。




そのヘビは、生気が薄れていった。

まだ幼いのに、脱皮をもう幾度としたヘビのように、疲弊していた。

食べ物も、喉を通らず、動くことも、ままならなくなった。

そのヘビは、目が、この身体には重すぎることを、悟っていた。


それでも、青い空だけは、ずうっと、見え続けていた。






2019/05/07

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3つの目のヘビ 武上 晴生 @haru_takeue

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