第90話【ここに来てやっと魔王らしい仕事がやってきた】


 娘との、やんわりイチャイチャタイムをしていると、ノック音と共に『――――魔王様!!3日3晩掛けて出来上がった会場の準備が整いました!!』と、言いながら頭を低くした部下が入ってきた。


 すっかり〝魔王の仕事〟が板に付いてきた影武者は『誠に大義であった。後の事は我に任せて、休暇でも取るが良い』と、娘とじゃれあいながら威厳を放つ。


『しかし魔王様――――』


 部下の言葉を遮る様に『なぁに……家族サービスしてもバチは当たるまい』と、精一杯の決め顔で格好つけた。


 部下は『御意に――――』と深々と御辞儀をして、業務用タイムカードを切って出ていった。


(この感覚……懐かしいな――――影武者の面接の時は、何千何万と言う候補者の中で、〝僕〟だけが受験日を間違えたんだっけ……そして、寝坊した魔王様と演説台に立ったのが始まりだったなぁ)


 しんみりと昔を思い出す影武者は、重い腰を上げながら〝死天王選抜会場〟へと歩み始めた。



【母上へ 死天王選びとかワクワクするよね!!】

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