第91話【魔界に君臨せし大物達】

 結婚記念パーティー会場を今回のために、匠の手により改造したらしい。


 娘であり、次期王妃のフレデシカには〝特別審査員枠〟に入ってもらう予定だ。


 フレデシカが影武者のマントを引っ張りながら『パパ上~パパ上~、バルクスさんみたいに優しい人だといいね!?』と笑顔で言った。


 あまりの愛しさのあまり、我が敬愛する魔王様と妃様の娘に思わず心を奪われそうになる。


 しかし、影武者は首を横に振る事により〝よこしまな雑念〟を払い除ける。


『うむ。魔王軍たるもの〝武力〟だけではいかんからな。やはり〝ラブ&平和ピース〟を志す人物がいいな――――』と格好良く言ったが、年頃の娘であるフレデシカは、〝死天王選抜用紙〟で花作りに夢中だった。


パパ上の威厳……とうになし!!)


 影武者は寂しさを漂よわせながら無言で向かった……。




 ―――〝死天王選抜会場〟――――




 影武者とフレデシカの眼前に広がるのは、数百人規模となる猛者達の姿。


 一目見れば分かる程の魔力と歴戦の勇姿が脳裏に浮かぶ。


 特に今回は人材が豊作らしく〝我こそは死天王にふさわしい〟と、普段は埋もれていた腕に自信のある者がいたとか――――


『中々の顔触れではないか……』


 雰囲気に呑まれかけ、影武者は思わず呼吸をする事を忘れていた。


 そんな影武者を他所に、〝ハッ!?〟としたビックリ顔で驚いたフレデシカは、何かをポケットから出した。


『そう言えばパパ上~これ、ペコリーノおじさんから今回の注目株の写真付きプロフィールだって!!』


 影武者はフレデシカから数枚の紙束を手渡される。


『どれどれ……』



【母上へ 覇将ペコリーノが今回の参加者を尾行して個人情報を入手した〝虎ノ巻〟だって!!】




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