第77話【大体にして奇跡ってものは向こうからくるらしい】


 りゅうの背に乗った――――母上は天井の彼方へ消えた。


 久しぶりの親子再開の感動のあまり、影武者は大事な事を忘れていた。


『母上と久しぶりに会えて良かったなぁ。そういえば、妃様と王女様どこ行ったのかな……?』


 辺りを見渡すも〝散壊さんかい〟〝崩壊ほうかい〟〝倒壊とうかい〟――――と、荒れ放題、散らかり放題の有様である〝憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんち〟。


 人の気配はなく、『ここは世紀末の荒野か?はたまた死んで異世界転生でもしたか?』と、己自身を疑いたくなるような風景。


『新しい題名は〝魔王もとい影武者が転生したら世紀末覇者となりました〟――――にしようかな……』


 そんな冗談を飛ばす役立たずの影武者だが、彼が壮大な奇跡を起こす事はない――――


 所がどっこい、またもや超常現象を起こす魔王道具〝覇者の証〟は、影武者の胸元で燦然と輝きながら、その力を解放する。


 割けた地やアトラクションは無事に再生し、倒壊した各種店舗は建設当初の様な光を放っている。


 吹き飛ばされた着ぐるみ達の頭は綺麗に元通りとなり、なかみを見たものはいない。


 唯一、吹き飛ばされた恋人達カップルは何故か戻らなかったとか……。


【母上へ 今度、魔王城でイベントがありますので是非とも来てくださいね!】


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