第76話【どんな所でも家族揃えば団らんが生まれる】


 竜は呼ばれて早々、好き放題やっている魔王かげむしゃに苛立つ。


(魔王め、我の背中で好き放題やりおって――――こちとら、伝説の竜だぞ……貴様!!)


 地上に向かって翼を羽ばたかせると、一瞬で憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんちへと着地する。


無骸竜むがいりゅうヒアルラミデス〟は、主である魔王かげむしゃ丁寧ざつに地上に降ろす。


 そして、天を目指し空高く舞い上がる。


 その衝撃はもはや、一部の人間にとって〝天災てんさい〟や〝災厄やくさい〟と言えるだろう……。


 ――――〝黄泉送加速機ジェットコースター〟 最高秒速120kmの筈が秒速600kmと史上最高に速くなり、後に魂と肉体が分裂すると口コミで大人気となった。


 ―――マッキー像の前で写真を撮っていたカップル吹き飛んだりした。


 この日――――一番の被害者は、〝憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんち〟の園内各所にいる、全ての着ぐるみの頭が取れる程の恐風が吹いたらしい。


 魔王かげむしゃは地面に転がりながら降ろされたが、強靭な肉体を持つ母上は、魔界産〝セナカヤミまい〟の煎餅せんべいを、寝転びながら頬張っている。


 影武者は意識朦朧とする中、手を伸ばしながら母へ言葉を送る。


『あぁ、母上――――もう、天へと帰ってしまった……』


 ※――――〝恐らく家です〟――――


 竜の凄まじい風圧や威圧に耐えると言う、歴代魔王様でも、為し得なかった偉業をしているが、この時は誰も知らない。


 竜の背から顔を覗かせ、久しぶりに息子と会えた感動で、母上は両手を大きく振りながら笑顔で答えた。


『母さんは先にお家に帰るわよ~!!、魔王城に行くからねぇ!!』


【母上へ 久しぶりに(安全な)手作り料理が食べたいです。今度、遊びに来てくださいね……】

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