第75話【何百年経っても母は我が子を間違えない】

 ジタバタと暴れまわる影武者だったが、聞き覚えのある声に思わず、『ほへぁ?』と変な声をあげて起き上がった。


 母上は焦げて炭になっている〝暗黒混沌物質ダークカオスマター〟を持って振り返る。


 すると――――数歩程歩いた後、影武者むすこを踏みつけた拍子に悲鳴を上げたのを聞いて、やっとその存在に気づいた。


 母上はで冷静に喋りかけた。


『あら……、あんたこんな所で何してるの?あっ、落ちちゃった』


暗黒混沌物質ダークカオスマター〟は影武者のお口へと吸い込まれた。


 影武者は奇跡的にも母上の料理を食べてしまった――――三途の川を渡っている様だった。

 もう少しで母上の元へ……


 ※母上は生きています。


『母上がいる――――ここは、天国か……又は地獄という奴か……』


 影武者の発言に母上は、子どもを叱る様に怒鳴り散らす。


『あんたバカ言ってんじゃないわよ!!ここはあんたの家だよ?!』


 ※――――いいえ、龍の背中です――――


 龍が〝憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんち〟上空を旋回する。

 風は髪をなびかせ、雄大な景色は瞳を通して記憶に焼き付ける……だが、影武者、母上、


 だが――――そんな二人に対し龍の怒りの様な、耳を再起不能にする程の轟音が鳴り響いた。


『ヴオオオォォォォォッ!!!』


無骸竜むがいりゅうヒアルラミデス〟の咆哮は、地を揺らし、天を割き、世界の名だたる強者を震撼しんかんさせる程だった。


 それを聞いた母上は、目を見開いて困り顔をした。


『あら大変、この音は……お風呂が沸いて、お米が炊けて、楽しみな〝魔界昼ドラ〟の時間だわ!!』※違います。


 神をも恐れる龍の雄叫びの内容はこうだ――――((我輩の背中で昼食を食うなあぁぁぁぁあ!!!)))



 その日――――世界の終末時計が、また一刻進んだとか……進まないとか……。



【影武者日記――――家族って温かいなぁ。ん?家族と言えば……早く地上に帰らないと!!】

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