第74話【THE・英雄の帰還――――影武者の雫を添えて~】


 竜の上で駄々をこねる児戯の様に暴れまわる影武者。

 未だに落下していると思い、怖くて目が開けられない影武者。


『嫌だ嫌だっ……まだ死にたくないよ!!~!?』


 だが、その呼び声に答える者は居らず、〝絶対なる死〟を感じた――――その時だった。


 影武者の願いを叶えるが如く、再び〝覇者の証〟が空を覆い尽くす程の眩い光を放ち始める。


 目を強く閉じる影武者だが、何やら聞きなれた声と嗅いだことがある匂いがするのに気付いた。


 しかし声の主は、自身が広大な空で伝説の竜の背に乗っているのを、一切感じさせない事を発している。


『あら嫌だ。一体ここは何処かしら――――まぁ大変、買い替えたコンロの超強火で調理したら、血の池特産の魔界魚が炭になっちゃったわ……』


【母上へ 三途の川をリターンして参ります故】


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