第73話【思いがけない所に解決法があったりする】


 地上では部下ペコリーノユリシャが、互いに譲らない戦いを繰り広げていたが、上空では一人で戦っている〝魔王かげむしゃ〟がいた。


 ――――上空1000M付近――――


(死ぬ、死ぬ、死ぬ……逃げちゃ駄目だ……逃げちゃダメ――――あっやっぱり死ぬかも……)


 主人公である影武者の存在を誰もが忘れ、影武者自身が完全なる〝死〟を意識した時――――首にぶら下がっている〝覇者の証〟が眩い閃光を放った。


 歴代の魔王様が次代に想いを託した代物は、偽物である影武者を救うことになる。


 空間が渦巻き状に歪み、永遠に続く様な暗黒のふちから出てきたのは、初代魔王様が3000年も戦い続け、その、先祖代々手懐てなづけたとされる〝生ける完全生物〟。


 魔王様直属の守護竜〝無骸竜むがいりゅうヒアルラミデス〟


 全長はおよそ20M、一度ひとたびでも翼を広げれば30M強とあり、漆黒の竜にして1度も眠むりに就いた事がない。

 故に全ての畏怖いふを込めて〝無骸竜むがいりゅう〟と呼ぶ。


 その両翼は――――一度羽ばたけば地は無に


 その吐息は――――一度の呼吸で全てを灰に


 その尻尾は――――万年に一度も切断されず


 その瞳孔は――――瞬きを知らず獲物を見る


 そして、その姿を見たものは皆、口を合わせてこう言うだろう――――〝生まれたのが間違いだった〟と。


 目を開けられず己の死を覚悟した影武者は、竜の背上でジタバタと、気付かずにもがいていた。



【母上へ 今までお世話になりました】

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