第58話【欲するのなら己の〝拳〟で勝ち取ちとってみせぃ】

 それから、残り十回のチャンスを貰った影武者だが、景品に当たれども倒れぬ事に少々イライラしていた。


『ぐぬぬ……何故だ、何故景品に直撃するのにGET出来ぬのだ……』


 影武者から搾り取った、札束を舐め回すように数える店主は、良い〝鴨〟に巡り会えたと内心喜んでいる。


『お兄さんよ、景気が良いのは結構だけど全然駄目だねぇ。ヘッヘッへ』


 呆れて物も言えぬ妻〝ユリシャ〟は、いつもの可愛らしい瞳で影武者を見ると、氷のよ

 うな冷たい表情で言った。


『あなた――――私ちょっとに行きますわね』


 遂に最後の弾となり、万策尽きたかに思えた。だが――――にせものとして、そして娘のため、影武者は決心した。


(((そうか、娘に託せばいいのだ!!)))


 影武者は、娘に〝超魔導砲エターナルガン〟を手渡すとこう言った。


『我が娘フレデシカよ。これが正真正銘――――最後の〝弾〟だ。うぬの力を存分に見せるのだ!!』


 娘〝フレデシカ〟は、重量級の銃を受け取ると、高ぶる気持ちを整えるように静かに深呼吸をした。


『集中…集中…。フーッ――――』


 照準を〝MGPマジカルパンプアップユミコ〟に合わせ、ゆっくりと引き金に手をかけた。


『『ドカーーンッ!!!』』と言う地鳴りと共に、眩い閃光と鼓膜を貫く程の轟音が共鳴した。




【母上へ 天も我らの事を祝福しているよ!!】

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