第43話【慈悲と愛と盲目の姫君】


 抱き締め合う三人を一目見ようとして、波のように押し寄せる群衆が、カメラを手に取りフラッシュの嵐で会場中が日中程の明るさになっていた。


『貴方……これからもよろしくね――――』


『ママ上もパパ上も、みんな大好きー!!』


『安心するがよい、墓場までいっしょだぞ……』


(本物の遺灰、風で飛ばされちゃったからなぁ……)


 数分程の撮影会が終わり、【竜蔦】がマイクを手に取り、スタイル抜群のプロポーションを見せびらかしながら、慣れた口調で司会進行をする。


『以上で我ら死天王と並びに魔王様のサプライズ映像を終わりにします。もう一度盛大な拍手を!!』


 大喝采の熱気と感動の渦に包まれた会場は、ほんのりとした雰囲気と表情で、200回記念日をみな楽しんでいる。


 盲目ながら聴覚のみでサプライズを存分に楽しみ、長らく放置されていた復活フェニックスお姫様プリンセスこと、【勇者国のフローラ姫】は、当たり前のように席に座りながら豪華な食事をし、【勇者と魔王】の出番を首を長くして待ち望んでいた。


【母上へ 僕の遺骨は未亡人と同じお墓になるみたいです】

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