第42話【最後に君に言いたいことがあるんだ】

『パパ上ありがとう!!フーちゃん旅行、楽しみにしてるね!!』


『こんな何て……私、感動したわ……』


 嬉しさで涙ぐむ、妃様と娘の喜びも束の間、魔王様のサプライズ動画には続きがあり、【覇将】はドヤ顔で再生ボタンを押した。


【動画再生】


 魔王様は緊張しているのか、手紙カンペを逆さにしたり震えて端っこを破いたりしてしまい、最終的にはなにも見ないで話始めた。


『偶然と奇跡が重なり素敵な君と出会い、娘のフレデシカが産まれて200回目の記念日がやって来ましたね。この動画を撮影している時で、家族と離れ魔王城に単身赴任と言う形で過ごしていますが、それでも仕事の合間を縫っては家族の顔を、少しでも見ようと張り切って仕事をしています。次に会えるのは記念日の時だね……とても長いですが頑張りましょう』


『恥ずかしい事ではあるのですが、歴代の魔王様みたいに残念ながら器用ではありません。でも、娘の顔や君の顔が――――頭によぎる度に、今日も頑張ろうだとか、明日会えると言う活力になります。』


 ポケットから取り出したのは、小さな1つの箱であり、ゆっくりと丁寧に開けるとそこには、銀色の素材で出来たリングに、桃色の宝石が中央で、燦然さんぜんと輝いている指輪が納められていた。


『この指輪は、君が昔欲しがっていた物です。経済力も武力もないのに魔王に就任し、子どもが産まれロクに結婚式や新婚旅行、指輪さえも渡せず200年と言う長い時が流れてしまいましたね。これはお金を貯めて君のため――――いや、愛する〝ユリシャ〟の為に特注で造りました。もう一度自分の口から言わせてください。』


 強く瞬きをし数秒の沈黙が会場に伝染し、静寂と緊張が訪れ、魔王様は重い口を開きはじめる。


『――――我と結婚してください』


 妃様は、押さえきれぬ涙で視界が歪み、震える口を両手で覆い隠しながら強く頷いた。


『長くなりましたが、最後に君にどうしても言いたいことがあるんだ――――3万回愛してるよ』


 短いようで長い動画はそこで終わり、家族三人影武者+嫁+娘は絆を確かめ合うように抱き締めあった。



【魔王様へ これが最後の遺言なんですね……僕が貴方の代わりに家族を楽しませますから、安らかに眠りください。それと、僕自身指輪持ってませんからね?】

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