第44話【伝説の勇者と最強の魔王】


 本物の娘と妃を歴代の魔王様や、その家族に紹介するため、影武者は挨拶周りで席を順番に歩き回っていた。


『お~魔王君!!元気にやっているかい?』


『嫁も娘も綺麗じゃないか~先程のサプライズは感動したぞ!!』


『あら、フレデシカちゃん!!お母様より大きくなったわね~オホホホホッ』


 自他共に認める本物そっくりの影武者だから仕方がないが、ここまで誰も気付かない事に、少しだけ怖さと喜びが半々の気持ちになっていた。


 そして挨拶周りも終盤となり、人間界代表の【フローラ姫】の席へ来てしまった。


『あら?……勇者国のフローラ姫じゃない!?わざわざ遠い所までありがとさんねぇ』


『こちらこそ、こんな素敵なパーティーにご招待下さりありがとうございます!!まるで心が洗われ、生まれ変わった気分です――――』


(先程まで【覇将】にサイコロステーキにされていたから、本当に生まれ変わってるよ!!)


 妃様がそう言うと、姫は笑みを浮かべ会釈をし、両手を差し出し握手を交える。

 人間と魔物、姿形は違えど同じ命であり、過去の凄惨な思い出は互いに捨て 、手を取り合い共存の道を歩もうとしていた。


 観客はそれぞれの王妃の歴史的な瞬間に、今日一番の拍手をしようとした。

 その時だった――――扉が突然開き、魔物とは違う人影が後光に包まれながら現れたのだ。

 影は腰にたずさえた、【剣】を天高く上げ、こう叫んだ。


『皆の者耳を澄まして良く聞け!!私は人間界代表【勇者ゼルピトス】であるぞ!!』



【母上へ ついに勇者が来たよ!!】

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