第40話【魔界の諸君よ!!これこそがサプライズ中のサプライズだ!!】


 しばらく部下達のダンスが続くと、【モーセの十戒】の如く中央の動線が開き、才色豊かな大量の花束を抱え、姿の見えない、画面一杯に花を咲かせながら徐々に近付いている。


 演奏は鳴り止まず、サプライズのフィナーレが近いのか次第に激しくなる音楽と、パフォーマンスに会場の熱気は最高潮になっていた。


 観客達は突然、花に覆われた画面に目が釘ずけになりながら、首を傾げてこう言った。


『あれは誰だ?』

『きっと素敵な何かね!!』

『早くみたいなー!?』


 そう言った声が怒涛に押し寄せてゆき、大人しく、そして楽しみに待っている歴戦の猛者達は、豪華なディナーを食す手を止めている。



 花束が画面外へ投げられ後ろ姿ではあるが、生前の存在感は常軌じょうき逸脱いつだつしており、何千何万とその背中を追い求め、憧れてきた存在……魔界屈指、いや、歴代一のが現れた――――そう、魔王様ザ・ほんものである。


 この時のために妻や娘、日々お世話になっている歴代の魔王様せんぱいがたや国を良くするため働いてくれている部下達に、少しでも魔王おさとして、何か出来ることはないかと考え、この『サプライズ』に至ったのだ。


 正面を向いた魔王様の手には、とてもじゃないが、偉大な【王】のイメージとは、相当かけ離れている花柄の便箋びんせんと、幾多の戦場を駆けたその体躯、大きくゴツゴツとした右手には似つかわしくない、小さな星型の装飾をされている箱を大事そうに持っている姿が、観客の眼前に映し出された。


 久しぶりの本物に影武者は思わず拍手をしたが、 みながそれを心地よく思い、惜しみ無い拍手と歓声が響き、もれなくほんものほんもの達からも尊敬と憧れの眼差しを貰った。


【母上へ お涙頂戴のお話になるよ!!】

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