第39話【本当は上司だけど一応部下な仲間達に影武者ながら感激100%】


「コホンッ」と一息ついて、一歩前へ出ると凛々しい顔付きの【覇将】が、普段よりも低い声を意識しながら、記録装置に向け喋りだす。


「魔王様、並びにお妃様この度は結婚200周年おめでとうございます。心からお祝いすると共に――――」


【覇将】が緊張した面持ちで祝言しゅうげんを述べる中、【竜蔦】、【死死舞】、【混沌】の三人は画面外へ消えると、何やら軽快かつ、ポップなメロディが流れてきた。


 【竜蔦】は得意の鞭を使い妖艶ようえんにドラムを叩き、【混沌】は伝家の宝刀である、魔剣【闇烏-ベルフェニックス】に、魔弦まげんを張った特製ギターを使い、目にも止まらぬ速さで演奏をし、それに合わせ【死死舞】はこの時のために、チビッ子舞踊グループを作り寝る間も惜しんで練習したダンスを音楽に合わせ披露する。


【覇将】はスピーチを止めると、真ん中でキレッキレのダンスを披露しながら、一族代々に伝わり、あの【暴虐龍カタマントス】を切り伏せた業物わざもの【秘剣-セブラティール】――――の、切っ先に特注マイクを付け、美声を放っている。


 会場では360゜の祝福ムード全開な光景が写しだされ、娘のフレデシカや妃様も笑顔で見ており、当の本人達である三獣士達には惜しみ無い拍手と声援が投げられ、みな嬉しそうに頬を赤く染めていた。

 部下もとじょうしが誉められる姿を、横目で見た影武者の口からは思わず笑みがこぼれていた。


【母上へ どうも最近、早番残業が多いと思ったらこのためだったんだね!!】

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