一章 引きこもり脱宣言  浮島編

2.浮島編


(――……?)


 何かが顔を掠めてくすぐったい。


 二度寝からの起床、おはよう世界。俺は今どこにいるのだろうか?状況があまりにもいつもと違っていてクエッションマークが脳裏で一列に並んだ。 


(…ここ…どこだ?)


 一度目の覚醒と比べ、視界がはっきりと見えた。大きな試験管のような水槽の中で漂う俺。知らない内にホルマリン漬けにでもされたのだろうか。

 それにしては痛くもないし息苦しくもない。


(そもそも俺…徹夜明けで…データ送ってからどうなった?)


 修正データをメールでぶん投げ、連絡がないからとシャワーを浴びてから布団の上にダイブを決め込んだはずだ。あまりの体調の悪さに息切れして――そこから記憶が途切れている。


 死んだように眠りこけた俺を「誰か」が病院にでも運んだのだろうか? だが、俺の部屋の鍵を渡している人物なんて一人もいない。離れて暮らす母親も、父親違いの兄や姉も、妹だって俺に会いに来ることなんてないはずだ。

 家族はみな「俺」の存在を身内の恥だと思っている。ここ十年ほど顔も見ていない上に連絡すらとっていないという疎遠っぷりなのだ。そんな羞恥の塊である次男を心配して様子を見に来るなどありえない。ならば近所の人間だろうか?

 たまに言葉を交わすだけのおじさんや挨拶するだけの近所のおばあちゃんはいた。だが、部屋に入れるなんて行為は一度もしたことがない上、俺がどこの部屋に住んでいるか知らないはずだから可能性はゼロ。

 一番可能性が高そうなのは大家さんだろうか。

 それとも都会に住んでいる同じ仕事仲間の友人が、俺と連絡が取れないと管理会社に連絡して大家さんが動いた、というのが一番にありそうだが。


(だけど、大阪に住んでるアイツに管理会社の名前とか調べられるのか?)


 まあ、調べようとしたら大体の事はネットで調べられる現代だ。やろうとおもえばできなくはないだろう。ならば、早く連絡をして安心させてやらねば。数少ない長年の友人なのだ、余計な心配をかけてしまっているだろう。


(…てか、この水槽どうやって出るんだ?)


 よくよく周りを観察するも、縦長い水槽の中から出られるような出口がなかった。水槽内にはナースコール的な物もない。普通、意識が無いおっさんを寝かせるなら点滴を腕にぶっ刺してベッドの上に放り出すだろうに。それともこれは新手の最新治療方法なのだろうか?

 水槽の中を更に見渡すと白い糸のような束がふわふわと浮いているのも見えた。


(なんだこれ…さわらんとこ…)


 筒状の水槽の下側が微かに明るく、その明かりのおかげで視界は保たれていた。この明かりは電子機器の明かりかもしれない。よくわからないが最新鋭、それもSFに見るような治療でもされているのでは…?

 

(……。…最新の治療ってどんだけ治療費かかるんだ?)


 貯金残高と給料の額を思い浮かべて血の気が引いた。誰が最新鋭SF顔負けの治療を施せと頼んだ覚えはない!

  慌てて動く両腕で水槽のガラスに触れだが、押してもびくともしないガラス。内側から出られないなんてとんだ設計ミスだ、設計者は誰だ!


(くそ、ナースさんはいないのか? ここから出してくれ! 俺、意識を取り戻しましたよ!おーい!)


 ごぼごぼと水槽の中から声なき声で主張するが水槽外の様子に変化はない。薄暗い室内には何かごちゃごちゃとした機材らしき物が見えるだけだった。


(出してくれよ! ここから出してくれ!)


 水槽のガラスを全力で押した瞬間、


【亀裂】※【与】※【振動】※※※】


 記号のような文字のようなイメージが脳裏に浮かんだ。身体の奥底から熱が駆け巡り両手へと流れ出す、ぱきん!と甲高い音と身体に衝撃が響いた。


(――は?)


 手を伸ばした先に、光り輝く文字のようなものが水中に浮かんでいる。


(…なんだこれ?フォログラム…?)


 その輝く文字の向こう、ガラスに稲妻のような大きな白い線ができていた。ヒビだ、ガラスに大きな亀裂ができたのだ。 いつの間に!?やばい、弁償! 賠償金の恐怖に身を固まらせた瞬間、大きな亀裂が歪み、甲高い音を響かせて俺は外へと投げ出された。


「~~~~っ、げほっ、ごっ、お゛ぇっ」


 冷たい床に投げ出されて呼吸が苦しくなる。胃や肺を満たす液体が逆流し口からとめどなくあふれ出した。今すぐ内臓に収められている液体を全部吐き出さないと気持ち悪くて仕方がなかった。この感覚には覚えがある。何年か前にノロにかかって上からも下からも水分を放出した時に近い。あんな苦しい事は二度とごめんだと思っていたのに勘弁してほしい。


「…はぁ…はぁ…おぇ…ぐ…」


 蛇口のように水分を吐き出すこと数十秒、やっと呼吸が落ち着いてくる。

げほげほと何度も咳き込む事を繰り返して呼吸を整えたせいか、なんだか声がおかしいような気がした。いつもより声が高い? 喉がイかれたか。


「…俺、激やせでもしたか…?」


 異常はないかと自身の身体を見下ろし、そこでやっと俺は全裸だと気づけた。

 四つんばいスタイルで俺の体を支えている二本の両腕。ガラスの破片で切ったのか膝や手のひらに小さな切り傷ができ出血していた。

 その両腕や両足は細く見え、手のサイズすら小さく見える。そして指先に感じる違和感。


「…ペンだこが…ない…」


 何十年も描きづつけて変形した右手の中指、第一関節にあったペンだこが綺麗に。目の前にあるのは桜色の爪に色白でほっそりとした綺麗な指先だった。まるで子供のような手だ。


「…この白い糸みたいな…なんだこれ…?」


 視界の端や身体に何かが張り付いている感触に眉をひそめた。ちらちらと見える白い糸束を引っ張ると頭皮が引っ張られる。頭皮と繋がってる…?

 

「…は?…髪、髪の毛?これ、俺の髪の毛!?」

 

 俺の髪の毛は黒だ。たしかに白髪は多くなってきたなと最近の悩みではあったが。いや、そんなまさかの髪の毛、まさかの伸び放題、まさかのオール白髪頭に!?


「……………、……まさか」


 何年も意識不明だった、とかだろうか。


 たっぷり3分、考えた末の答え。

 ありえなくはない話だ。何年も意識が戻らず寝たきりの生活をしていたのなら筋力や体脂肪も落ち、この細い腕のようになったのかもしれない。だが、


(…ほんとうに、そうなのか?)


 じわじわと混乱してくる脳みそがありえそうな仮説を並び立てるが、冷静なのにぶっ飛んだ仮説も上げてきた。


 俺の知る「」ではないのでは?


(何を、電波なことを)


 しかし、俺が知ってる「俺」の身体とはあまりにも違っているのだ。

 幼少期からあった太ももの所にあったホクロだってなくなっている。何十年も前に犬に噛まれた跡すら消えていた。

 なんとなくだが、随分と身体の大きさや厚みすら小さく感じる。黄色人種とは違う色白な肌――白色人種に近い白い肌だ。

 そして、股間にぶら下がる小さい息子さんは随分と小さくなっているように見えた。つるんと陰毛を綺麗にそられてしまっている。誰だ、俺の下半身の防御力を削いだ奴は。


(…この体が俺のじゃないとして…じゃあ、知らない身体の中にいる「俺」の意識はなんだっていうんだよ)


 若々しい白い肌に爪をたててみた。痛い。すぐに白い肌に赤い線が浮き上がった。古来からの夢判定方法をしなくとも切り傷がずきずきと痛むが一向に覚醒しない。

 つねる事を諦めて回りの様子を見渡すと、どうやら治療室というより研究室のような雰囲気がある部屋だった。

 俺がさっきまで浮かんでいた水槽と似た水槽が三つ程並んでいる。奥のひとつは派手に壊れ、床にガラスやら汚い布切れのようなものが転がっていた。もう片方の水槽は破損もしていないようだ。

 水槽の中には謎の液体にピンク色物体が見え、…物体?いや、あれは、


 肉の塊、だ。


「…内臓…?寝起き早々、グロかよ…」


 何らかの肉のように見えた。考えたくもないが人体の一部なんてことはないと思いたい、が。似たような水槽に浮かんでいた自分を思い出し、嫌な予感が神経を逆なでる。


「…ともかく…誰か…いないのか…?」


 出会っていい人物かどうかもわからないが探すしかない。できればバスタオルか病衣がほしい所だ。水に濡れた身体がどんどんと冷えて寒いのだ。

 謎の液体でびしょびしょな上にフルチン、せめて人と出会う前に股間を隠せるほどの防御を固めたい。


 フルチンでふらふらと近場の扉へと向かいドアノブを回した。やはり身長が低くなっているのかドアノブの位置が高く感じる。それともドアが大きいのか?

 そろりとドアの隙間からは覗き見ると書斎のような薄暗い部屋が見えた。床にはおびただしい量の分厚い本が乱雑に放置されている。部屋の四隅に灯る非常灯のような小さな明かりのせいでホラー感が出ていた。


「…妙な夢だなぁ…せめて夢の中ぐらい幸せな夢をみさせてくれたっていいんじゃないか?」


 これは夢だ、そうに違いない。

 あまりの事態に夢判定を決め込んで現実逃避した。心を落ち着かせる一番効果的な方法だ。最近見た夢の中ではダントツに奇妙な夢だろう。

 申し訳程度のノックをしてドアを開けた。夢だろうがなんだろうが礼儀はちゃんとすべきだし。


「…す、すみませーん…誰かいませんかー…」


 が、俺の弱々しい声とノック音だけが響くだけで人の気配も感じられなかった。フルチン全裸で書斎に足を踏み入れる。


「…高そうな本だな…」


 部屋の床一面に散らばる本の数々は皮表紙のような光沢がある。まるで癇癪を起こしたかのような散らかし放題だ。

 壁伝いには収納場所であろう本棚が見え、分厚い本が一千冊以上は余裕で入りそうな大きな棚が十五個ほどあり、本がきちんと収まっていたのなら図書館のような書斎に見えるだろう。すげぇ散らかってるけど。


「…『魂の、捕縛と封印…』?……っ、」


 散らかった山のように積まれた本の背表紙を見つめ、


 途端、ずきりと頭に痛みが走り片手で額を抑え込んだ。なんだ、いきなり。ひどい頭痛で吐き気すら感じる。


(…なんで、んだ…?)


 純粋な疑問。だが、俺は今確かに読めたし意味も理解した。なのに、その表紙に印刷されている文字は生まれて三十五年、だった。

 日本語でも英語でもない。どこの国の文字にも似ていないようにも感じた。何語だろうが俺は語学力は日本語とわずかな英語しか知らない。それなのに何故、俺は読めたんだ? 痛む頭を押さえ足元の本にそっと触れる。


(…こっちの本は…『魔力と魂、生命の起源』…?)


 頭痛が強まる。その痛みと一緒に文字の読みや意味が理解できた。なんだこれ、なんなんだ?


 こんな知識、――!


 文字を眺めていると頭痛と吐き気が更に強まった気がした。これ以上は考えるなと思考の外へと追いやった。よくわからない文字については後回しだ、とにかく今はと服をみつけないと。


「――…あ、」


 本から視線をそらし書斎の中央へ顔をむけると高そうなデスクの脇に白い布が見えた。布か服、タオルか!?この際なんでもいい、これでフルチンから逃れられる!


「…誰のか知らないけどお借りします!」


 姿が視えぬ書斎の持ち主に一言告げ、白い布をひっつかんで羽織った。脱フルチン、こんにちは裸マントマン。


「…コスプレ用のマントかな…」


 ひっつかんだ布は大き目のマントだった。ヨーロッパの英国紳士が装備していそうな外套、トンビコートとかインバネスコートに近い。真っ白な布地を良く見ると装飾のような貴金属や模様が施されてあって肌触りは滑らかで温かかった。


(なんだか高級品のように見える)


 デスクも椅子も本も高そうだ。うっかり汚して弁償とか言われる前にこの部屋から退散しようと入ってきたドアとは別のドアへと向かった。3つ程ドアがある、どれが正解だろう? 片方から順々に開け放つ、もちろんノックと声かけも忘れずに。


 書斎のデスクの中央から右手のドアの向こうは仮眠室のような小さい部屋、反対の左方面のドアの先は倉庫のような場所だった。背の高い棚に所狭しと大小様々な道具が並べられてある。最後にデスクから正面のドアの先には、鎖線階段が見えるフロアーのような空間へと繋がっていた。


「…出口はこっちだな」


 書斎を抜けた先、同じフロアーには扉が二つあった。

 ひとつは書斎、もう一つは位置的にさっき見た倉庫へ続く扉だろう。中央のらせん状の階段に近づくと上への階段と地下へ階段が確認できた。下のフロアーをのぞき見ると広い空間が広がってみえるが人の姿は無いなかった。上が出口だろうか。


「それにしても誰とも会わないなんてあり得るのか…?」


 ある程度の大きな施設だとは思う。なのに、あの書斎の主も、水槽に沈んでいた俺を「失敗作」だと烙印を押した男もいない。

 十中八九、時間が無いと嘆いていた男が関わっているのは間違いないだろう。治療を施したけど大失敗しちゃったとかっていう嘆きだったらどうしよ。


 上へ伸びる階段へ視線を向ける。ここはもしかしなくても地下施設なのだろうか、窓ひとつもみあたらない。悪の組織に拉致監禁、謎の手術を施された…なんてどこかのヒーローのような展開は勘弁してくれと願いつつ、階段を上がった先に扉が見えた。

 チョコレート色の高そうな扉には先ほどとは違う文字のような記号の羅列が見える。そっとドアノブを握りしめた途端、ドアに刻まれた記号が光り輝きだす。


「!?な、なんだよっ!?」


 が、光は数秒で沈黙した。

 爆発するトラップだったり警報がなったりしないよな?そっと指先で触れても妙な動作は無いように思えた。


「…なんだよ、驚かせやがって…なんなんだ、今の光…この文字も…」


 ――自動で発動する魔術式だ。ドアノブを握った瞬間、俺の「魔力」を感知し、登録されている「魔力」の一致の確認と認証が行われた。問題がなかったから鍵が開いたのだろう。


「っ、…いっ、てぇ…」


 ほんとなんだっていうんだ、この変な知識と頭痛は!身に覚えのないが頭痛をひどくするようだった。それら全て総スルーを決め込み、一呼吸落ち着かせてから勢い勇んでドアノブを握り開けた直後、俺は真っ白な光の中に包まれた。


「――は…緑…目に優しい…」


 ぼやけた視界に映ったのは葉っぱの緑色だった。

 扉の向こうには庭園のような庭が広がっていた。生い茂る葉の鮮やかな緑色がなんとも目に刺さる。太陽の明るさ度合からして真っ昼間だろう、これだけまぶしい太陽光を浴びたのは久方ぶりだ。よくよく見ると、真っ白な石畳と雨よけの天井が続く先には赤い屋根が特徴的な二階建ての家が見えた。海外風な雰囲気だ。


「…まさかの海外…?」


 古き良きレンガ作りの建築物は近所じゃ見かけない。肌触りのいい外套を握りしめ白い石畳を踏みしめる。中に誰かいるだろうか?


「…ん?」


ふと、庭園側が気になり何気なく眺める。生垣と木々の間から何か見えた気がしたのだ。昼間の青空と地平線のようなものも見える。ここは高台にある建物なのだろうか?


 ふらふらと素足で地面を踏みしめて茂みの奥へと進んだ。ありがたいことに雑草が一面に生えているから足の裏は痛くはない。距離にして七十メートルほどだろうか、草木を分け進んだ瞬間、一気に視界がひらけた。


「――う、わ………っ」


 一面に広がる青空に息を飲む。面前に広がるのは大自然だった。…語彙力が無くて申し訳無いところだが、そうとしか説明できない。


「…大地が…浮いてる…?」


 大地が、浮いていた。

 一面に広がる大自然は地球上のものとは違うと主張している。有名ラ◯ュタのように、広大な大地が地上から切り離され、空にまるごど浮いているのだ。浮いている島の大きさはわからないが、くそでっかい大樹や大きな森、湖がまるっと入るぐらいに大きな島だった。その大きな浮き島の上には動物の姿もちらほらと見える。…見える?


「視力、良くなってる…のか…」


 また、元の俺の肉体との違いに気づいてしまった。良くなった視力のおかげでよくよく見える。浮島の下、眼下に広がるのは真っ青な海だ。浮島を囲うかのように、地平線の海の上には真っ白な山々も見えた。澄んだ青空と、エベレストのような雪化粧している山脈、浮かぶ浮島はなんとも美しい。一枚の絵を見るような光景だった。


「…あ~…そーっすか…すげえ夢だな…」


 ふらりと地面にへたり込みながらひとりごちる。

 数歩先は崖だ。うっかり足を滑らしたら広大な海へと真っ逆さまで海面に叩き落ちるだろう。自分がいるこの大地も大きな浮島のひとつのようだった。

 なんてラ○ュタ、なんてファンタジー世界。しかし、某有名映画のような建造物はなく、一軒家はここだけのように見えた。ここから見える範囲での話だが。

 いくつかの浮島の中でもひときわ大きな浮島を中心に浮遊しているようだった。その中心とも言える巨大な浮島には大きすぎる大木が悠々と天に向かって葉を広げている。あれ絶対に世界樹だろ。あの葉っぱを使えば死人も蘇りそう。

 有名な映画や有名なゲームばかりに思考が奪われる。バカみたいに、いや、実際バカだから仕方がない。 面前の風景を惚けて眺めていると大空をデカイ鳥が飛んでいた。ああ、鳥じゃないわ、竜だわ。でっかい竜!


「…別の惑星か…異世界かなぁ…?」


 異世界の夢をみるなんてなんだか得した気分だ。ところで、いつ目が覚めるんだろう? ガラスで切った指先と膝の切り傷がちりちり痛い。


「……痛い、のに、なんで目が、覚めないんだ…」


 ぎちりと膝小僧に爪をたてても目は一向に覚めなかった。

 ここは俺が知ってる日本でも、地球でも、太陽惑星でもなさそうだ。地平線の近くの青空に、幻のような大きな月と小さな月が並んで浮かんで見えていた。いつからお月様は分裂したんだ、2つの月なんて見たことがない。 

 見たことがない光景。見知らぬ大地、見知らぬ星、見知らぬ浮島、見知らぬ身体に俺ひとりきり。


「…たしかに、俺…ファンタジー好きだし…フルダイブできるVRMMOがあるなら大金払って買って永久にプレイし続けて現実に戻らない自信あるけどさぁ…」


 人生は長い、色々辛い事もある。だから嫌な事を忘れて無責任にどこかへ逃げだしたいと願う事だってある。願うだけで行動はしない質だが。しかし、しかしよ神様や。


「説明もチュートリアルも無しに放り出されたら対処に困るだろうがよぉ!! せめて、事前に許可とか確認してくれよぉぉおおっ!」


 そう叫んでも誰も語りかけてはくれないし、神様もサポート案内も現れなかった。






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