動画投稿

 今日は部活も予定も何もなかったので授業が終わって帰ろうとすると水無瀬さんが一緒に帰ろうと言ってきた。


 色んな話をしながら駅までついたところで突然、横を歩いていた水無瀬さんが僕の前に出て「じゃじゃーん」とスマホを差し出した。


 スマホには『雛鳥は青い空の夢を見る』の文字が載った僕のイラストが表示されていた。


「完成した動画を入れてきたの。見てよ」


 水無瀬さんは僕にスマホを渡した。自分のイヤホンをつけて動画を見てみる。なんだか緊張する。


 自画自賛になってしまうけれど、曲と絵が見事にまじりあってとてもいいものになったと思う。


「どう? いい出来になってると思わない?」


「うん。絵が表示されるタイミングとかもいいと思う」


 ついに僕と水無瀬さんの努力が完成した。なんだか達成感があった。


 でもなんでこんなところで僕に動画を見せたんだろうと思い聞いてみると、帰り道で言おうと思ったんだけど、言うのに緊張してここまでタイミング逃しちゃったと照れていた。

 なんだか水無瀬さんらしいと思った。


「それじゃあ、今日帰った後にこの動画をあげるね。いよいよだね」


 今すぐに投稿するわけではないのに、水無瀬さんの顔がこわばっている。


「動画を上げる前はね、やっぱりいつも不安だよ」


 一応水無瀬さんは既に3曲動画を投稿しているので、登校する前の緊張は何度も味わっているはずなのに、初めて投稿するかのようだ。


「大丈夫だよ。僕らの動画ならきっとみんなが評価してくれるよ」


 僕がニコッと笑うと水無瀬さんもこわばっていた顔をリラックスさせてニコッとした。


 お互いの電車に乗って別れた。


 水無瀬さんの前ではああいったけれど、自分の絵なんかで本当に以前よりも再生数が上がるのだろうか。すごく不安だ。


 家に帰って曲名で検索してみると、言っていた通り動画が上がっていた。パソコンの大きい画面でもう一度動画を再生してみると、学校で見た時よりも良くなっている気がした。


 結局寝る前まで、気になって何度も動画のページを確認したけれど、再生数は全然伸びていなかった。


 とはいえ、新曲が上がってすぐにはあまり再生がなくて、二、三日は様子を見てみないと分からないと、水無瀬さんが言っていた。だから、残念ではあったけれどそんなに不安ではなかった。

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