第12話 楓ちゃんはダサい。

 パフェを食べ終え、店を出る。

 この時間にパフェを食べたのは、正直、失敗かもしれない。

 現在時刻が十二時なのに、まったくお腹が空いていない。このままじゃ、お昼ごはんを食べるのが十四時とかになって、腹時計がおかしなことになってしまう。

 楓ちゃんもおそらく同じことを思っているのだろう、ここから「お昼どこで食べる?」と言いだせない俺たちは、互いに顔を見合わせた。


「この後なにする?」


「う~ん」


 すると、楓ちゃんは思案顔の末、言った。


「洋服見たい……かもしれないです」


「いいよ」


「え? 付き合ってくれるんですか?」


 俺は頷く。特段することもないし、俺は否定しない。


「優しいんですね。名城くん」


 楓ちゃんはにっこりと微笑む。


「いや、気にしないで。どこ行く?」


「この近くに、好きなブランドがあるんです」


「あ、じゃあそこ行く?」


「はい!」


 俺たちは歩き出す。また、手を繋いで。

 人の慣れとはおそろしいもので、もう手を繋いでいるのも慣れてきた。ほんのり汗をかいていることが申し訳ないが、楓ちゃんは気持ち悪がらない。

 楓ちゃんに連れられ、五分ほど歩いたところだろうか。

俺たちは、とある小さなお店に辿り着いた。



「ここです! 私が好きなブランド」



 外から見える洋服だけで分かる。

ここは、クソダサい服専門店だ。


「う……ん」


 そういや、楓ちゃんはクソダサい洋服が大好きなのだ。だって、デートにクマのワッペンだ。だから好きなブランドがダサくて当然。

 楓ちゃんは、早速店内に入る。店内には店員以外誰もいない。きっと人気のないお店なんだろう。それでも、楓ちゃんは嬉々として洋服を選び始める。


「やっぱり、洋服って、唯一無二のものを着たいと思いませんか? だから、誰も持っていないような洋服が着たくて」


「そっ……か」


 洋服がかぶったっていいじゃん。それだけ色んな人に可愛いと思われている服なんだよ。

 ……少なからず、こんなウサギの顔がどでかく描いてある謎の服よりは。


「これとかどうかな? 可愛いよ! うさぎ!」


 ええええええええ! 俺がたった今、たとえで使った洋服じゃん。

 クソダサいって!


「……う~ん」


 いやこんなの誰が着るのさ!

いつどこでどのように着るのさ!


「このウサギさん、一万円もする! でも可愛いから、妥当なのかな?」


「……」


 …………一万円?

 このウサギが、一万円?

 本当にさ。マジでさ。

 わっかんねえええええええええええええええええ!

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