【香澄・マーガレット・ジェニファー編】(二)

言葉に出せぬ気持ち

               【香澄編】

     ワシントン州 香澄の部屋 二〇一五年八月八日 午前一〇時〇〇分

 マーガレットたちと久々にワシントン州の観光名所でもある、スペースニードルの夜景を見に昨晩出かけた香澄。エリノアとの一件以来何かと塞ぎこむことが多かった香澄にとって、今回の外出が良い意味で気分転換になったに違いない。


 しかしここ数日にかけて、香澄の様子がどこかおかしい。決して昨晩の外出が楽しくなかったというわけでもなければ、マーガレットたちと一緒にいることが苦痛なわけでもない。むしろ香澄は今まで通り、親友のマーガレットやジェニファー・恩師で親代わりのハリソン夫妻らと接している。

『ここ最近、以前に比べて夜に寝付けないことが多くなったわね。特に風邪をひいているわけでもないのだけど……』

 自分の体に何かしらの異変を感じつつも、その症状の正体についてはっきりと答えを出すことが出来ず、自室で一人苦悩し続ける香澄の姿が写っている。

『最後に日記を書いてから、今日で約一週間が経ったわね。そろそろ新しい日記を書かないと』


 ここ最近になって、日記を付けるという習慣を始めた香澄。特別マーガレットたちに言われたわけでもなく、香澄が何となく始めている習慣の一つ。なぜ日記を残すのか自分でも意味は分からなかったが、香澄は自分の心の声を真っ白な紙に書き記したかったのかもしれない――そんな気がした。


『……ふぅ、やっぱり今日は体調が優れないわね。そろそろ横になろうかしら?』

 いつもより強い倦怠感けんたいかんを覚えたのか、自室で日記を書き終えると同時に香澄はすぐにベッドに入り、そのまま深い眠りに入る。

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