episode 10 告白
午前中に健斗から電話が入った。会いたいといった。しかし今日は忙しいから、と会うのを断った。私としたら会いたいのはやまやまだったが、やらなければならない家のことがうんざりするほどあったのと、会えばこの前の返事をしなければならない。正直なところ、健斗への気持は決まっているのだがどう返事したらいいものか迷っている。
それにもうひとつ理由があった。第二の実行の計画である。計画を計ることで頭が一杯なこともあってとてもそんな気分じゃなかった。
しかし健斗はどうしても会いたいといってきかない。逡巡した私だったが、家事を手伝わせることを思いつき、昼過ぎに家に来るように伝えた。
急いで掃除と洗濯をすませ、クリーニング屋に汚れ物を届け、庭の掃除を終わらせたときにはお昼をとっくに過ぎていた。動きづめでお腹が背中にくっつくくらい空腹な私は、インスタント焼ソバとスープで昼ご飯をすませる。あと、廃品回収に出す新聞紙と雑誌をまとめるのと、リビングのガラス拭きが残っている。
一時間ほどしてインターホンが立てつづけに鳴らされた。
玄関のドアを開けると、胸元に意味不明な英語が書かれたTシャツにジーンズというすっきりとした恰好をして、門扉のところでこちらを見上げている健斗の姿があった。健斗が顔のあたりに片手を上げて挨拶を送っているが、逆光で顔がよく見えなかった。
「入りなよ。私だけだから遠慮しなくていいから」
頭の上でけたたましく鳴きつづけるアブラ蝉に負けないくらい大きな声でいった。
私は玄関のドアを開けたまま中に入り、先にリビングで待っていたが、何を戸惑っているのか、なかなか健斗は姿を見せなかった。
「何やってんのよォ」
「だって、はじめて来たんだぜ、迷っちゃうよ」
「何いってんの、うちは豪邸じゃないんだからね。玄関曲がったらここまでまっ直ぐなの」
そのあと健斗は何もいい返すことなく、黙ってソファーに坐った。私は冷蔵庫からコーラを出して健斗に薦める。
「これ飲んだらちょっと手伝って欲しいことがあるの」
「手伝う? 何を?」拍子抜けした顔を隠さずに訊く。
「このところずっと例の事件のことで家のことをおろそかにしてたから、仕事がたまっちゃって、どうしてもきょう中にすまさないといけないの」
ガラス戸の拭き掃除は差し迫ったことではなかったが、町内の廃品回収は明日なので、それだけはどうしても整理しなければならない。家の作業にうんざりしはじめていた私は、健斗に手伝わせるためにわざと媚びる仕草をして見せる。
「別にィ。で、何やったらいい?」
「まずさあ、新聞と雑誌を束ねるの。そのあと、リビングのガラス戸の拭き掃除」
「わかった。じゃあ荷造りからやるとすっか」
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