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 庭の隅に植えられた夾竹桃が何事もなかったかのように恥らいながら微笑んでいた。

 ママと私がやったんじゃない、あの夾竹桃がそうさせたんだ、と自分に言い聞かせる。なぜか庭の夾竹桃の部分だけがスポット・ライトを浴びたみたいに夏の陽光を跳ね返していた。

「麻柚、ママがいったとおり見なかったほうがよかったのと違う?」

 座敷に戻ったママは、私の打ちひしがれた姿を見ていった。

「――」

 私はすぐには言葉を返すことができなかった。

「ねえ、ママ。ママがいままでどおりのママに戻ってくれて本当に嬉しい。山中先輩には悪いけど――。でも、この状態をいつまで保持できるの?」

「うーん、正直なところママにもよくわからないけど、何とかしばらくは大丈夫だと思うから、お盆にいなくなるということはないわ。だからまだしばらくは麻柚とこうして一緒にいられるよ」

「よかった。麻柚さァ、このことまだ誰にも話してないよ。パパにもお姉ちゃんにも」

「そうね、ママもそのほうがいいと思うわ。これはふたりだけの秘密にしといてくれる?」

「うん、私、ママと一緒にいられるんなら、どんなことでもするからね」

 ママと少し話をしたら気分が落ち着いたのか、微笑みを浮かべられるくらいに気持が戻った。

 ふとママを見ると、ママは仏壇に向かって線香をあげたあと、小さく般若心経を唱えはじめた。

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