4-3
「麻柚先輩、せっかくのお父さんの誕生日に、私なんかが割り込んでいいんです?」
「いいの。いつも同じ顔ばっかで誕生日してると変化がないから、思い出にならないの。家にはちゃんと話してあるから、そんなことは気にしなくていいよ。ってかさあ、それってフライド・チキン?」
私は幸希が後輩ということもあって、ずけずけと思ったことを口にする。
「あッ、そうでした。すいません、気がつかなくて。先輩と一緒にお昼しようと思って持って来ました」
「いい匂いしてるからさァ、気になって……」
袋の中を覗くと、白と赤でデザインされたボックスとキャベツのサラダが入っていた。
「家に何ていって出て来た?」
私は指先でチキン・ピースを持ちながら、頬張る前に訊いた。
「麻柚先輩のところでお泊りして来るから、っていって出てきましたけど、それが何か……?」
「いや、それならいいんだ。家で何かいわれなかったかなと思って訊いてみただけ」
「別に何もいってませんでした。ただ、ご迷惑にならないようにね、とはいわれました」
「きょうは時間に制限がないから、ゆっくりと話しができるよ。女の子って話が尽きないんだよね。何でこんなに話すことがあるんだろと思うくらい」
「そうですよね。ところで、バスケ部の話ってどうなりました? やはり退部するんです?」
「いや、私自信考えることがあって、もう少し様子を見ることにしたよ」
「ほんとです? よかったァ」
幸希は、躰を揺らしながら思い切り笑い顔を見せた。
「ところで、幸希、カレシはどうなのよ。いるの? いないの?」
「いませんよ。いるわけないじゃないですか。いまのところ私にはそんな時間がありません」
「でも、恋愛って、暇があるとかないとかでするもんじゃないよ。まあ、ちゃんと神様が見てて、段取りをしてくれるから焦ることはないけどね。幸希はいい子だから、神様はきっと素適なカレシを捜してくれるって」
「ほんとにそうでしょうか? 早く現れるといいなァ。私も麻柚先輩みたいな恋がしたいです」
「ちょっと待ってよ、いっとくけど、私のは幸希が思ってるような恋愛じゃないんだからね。健斗はただのボーイフレンド」
「先輩、そんなムキになって言い訳するなんて、ますますあやしいです」
「幸希、いい加減にしないとぶっとばすからね」
私は、右の拳を顔のあたりまで上げながら冗談めかしていった。
しばらく私の部屋で恋愛の話やCDを聴いたりしていたが、それに厭きた私は幸希を散歩に誘う。
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