4-2
「うーん、それはちょっとォ――」
私は頭を痛めた。このまま黙ってママと離れてしまったら、悔いの残ることはわかりきっている。幾ら高校生でもそれくらいのことはわかった。
「それって、若ければ男でも女でもいいの?」
私は先が見えないまま、頭の中が整理されないままに訊いた。
「まあね。でも、幾らママのことを思ってくれてるとしても、これは犠牲者の出ることだから、聞かなかったことにして。いいわね、麻柚」
「わかってるって」
家に帰って部屋のエアコンのスイッチを入れ、ベッドに横たわりながら目を閉じる。目蓋の裏側が白い。気になって目を開けると、窓という額縁に切り取られた風景の色彩がすべて爆ぜて見えた。さっきから較べれば影は長くなってはいるものの、まだ勢いは落ちていなかった。
寝返りを打ってふたたび目をつむる。きょうママと会ったときのことをつぶさに思い返した。偶然か必然かは判然としないが、どういうわけか橋を渡る能力を備わった私。それがあってママに再会することができた。泪が出るくらい嬉しい。
間違いなくそこまではよかった。しかしそのあとに聞かされた話に衝撃を受け、いまだに自分が自分でない、そんな気分を引き摺ったままでいる。とにかく、ママが少しでも長くあの家にいてもらうためには、早いところ犠牲者を探し出さなければならない。
そのときふっと思いついたことがあった。がばっとベッドから起き上がった。私の口から思わず
――
夕飯を食べながら、お姉ちゃんとパパの誕生日の件を打ち合わせをする。お姉ちゃんはすでに焼肉レストランに行く計画をパパに話したらしく、予約から店の場所から、細かいところまですべて掌握していた。そんな型に嵌まってしまったスケジュールの中に、無理をいって一人追加してもらうことにした。
次の日、昼近くになって幸希が白いビニールのスポーツバッグにお泊りセットを詰め込んでやって来た。昨日の夕方幸希に電話をして、お泊りの用意をして家に来るように伝えたのだ。私が体調を崩してお見舞いに来てくれた日、一緒にカレーの夕飯を食べながらお姉ちゃんと三人で話が弾んだまではよかったのだが、帰りが遅くなるといけないということで断ち切れになってしまい、今回はそのつづきという意味もあった。
この時間に来るということは――思ったとおりバッグの反対側の手にはランチらしき手提げがあった。袋のロゴを見ただけでフライド・チキンであることはすぐにわかった。
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