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ご飯も炊け、あとはサラダを拵えるだけだ。幸希とふたりでレタスを千切り、コーンの缶詰を開け、サラダ・ボールの中で和えたあと茹でたブロッコリを解し入れた。サラダができ上がったちょうどそのとき、玄関のチャイムが鳴った。お姉ちゃんが帰って来たみたいだ。
私と幸希で玄関まで出迎えに行く。
「おかえり。お疲れさま。あのさあ、この子バスケの後輩で立花幸希っていうの。夕ご飯誘ったんだけどいいでしょ」
「はじめまして、立花幸希といいます。よろしくお願いします」
幸希ははきはきとした口調で自己紹介をする。
「いつも妹がお世話になってます。麻柚は寂しがりやでわがままですけどよろしくね」
「そんなこといいから、早くご飯にしよ。おなか空いちゃった」
「わかったわ。でもちょっと待って、急いで着替えしてくるから」
「わかった」
しばらくして、わいわいと賑やかな夕食がはじまった。幸希は少し緊張気味でカレーのスプーンを口元に搬んでいる。
「これ麻柚が拵えたの?」と、お姉ちゃん。
「そうだけど、何で?」
「味がいつもと違うから。量を多く拵えたからか、それともお肉の量が多いからかなァ」
「へへっ、違うんだな、それが。きょうは秘密の材料が隠し味になって入ってるんだ。ね、幸希」
いわれた幸希は、スプーンを手にしたまま、ただ笑っているばかりで何も答えなかった。
「じつは、チョコレートが入ってる。幸希が教えてくれたの」
「幸希ちゃんはお料理するの?」
「いえ、ほとんどしないんですけど、母がそうしてるのを横で見てたことがあるので、アドバイスしただけです」
「こんなおいしいカレーを食べさせたら、お父さん喜ぶよ、きっと」
「合格?」
「うん。ハナマル、二重マルよ。これからは夕食は麻柚にまかせるわ」
「そんなァ」
嬌声を上げながらの食事とデザートがすみ、時計を見ると八時半に近かった。
幸希の家までは自転車ならものの十分で帰れるのだが、夏の夜は夜行性の若者にからまれたり、若い女性を狙った変質者が出没する危険があるので早く帰ったほうがいい、とお姉ちゃんが忠告する。そして、今度お泊りの容易をしてゆっくりと遊びに来なさいとつけ加えた。
お姉ちゃんの言葉に心配になった私は、お姉ちゃんとふたりで坂の下の道路まで一緒に行き、自転車の幸希が見えなくなるまで見送った。
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