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 どう考えてもこんなところに橋なんか架かってなかった。おととい部活を終えて帰るときにも確かになかった。ここでテントウ虫に噛まれて自転車を停めたからはっきり覚えている。しかし、間違いなくいま私の目の中に木造の橋が向こう岸に届いている。見たところ新しく架けられたとも思えなかった。


 私は判然としない頭のまま、幸希のもとへ急いだ。

 スーパー・マーケットは川上にしばらく走り、国道に架かる大きな橋を渡ってしばらく行ったところにある。結構売り場面積が広いので、ここに来れば食料品はほとんど間に合う。自転車置き場に停めると、カゴを手にしてまずは野菜コーナーに向かう。時間が早いせいか、店内はそれほど混んでない。ジャガイモを択んでいたとき、横で覗き込んでいた幸希がくすりと笑った。

「ん?」

「すいません。でもそういう姿見てると、ほんとに主婦ですよね。先輩、もういつでも結婚できますよ」

「やめてよ。こっちは真剣なんだから。それより、ちょっとカゴ持ってて」

 ジャガイモの次はニンジン、その次は玉葱、レタス、ブロッコリを幸希の持っているカゴにどんどん放り込んだ。

「幸希、カレーのルーを買うんだけど、あんたどういったのがいい?」

「え、そんなァ。私よりもお父さんとかお姉さんに合わせたほうがいいですよ」

 幸希は、顔の前で細かく手を振って頻りに遠慮を見せる。

「違うの。いつも同じのを造ってると変化がないじゃん。だからたまには変わったのを試してみたいの」

 調味料のラックの前で散々悩んだ挙句、結局カゴに入れたのはいつも食べているルーだった。けれど、わいわいいいながらの買い物はひとりでするのと違ってとても楽しかった。無理もないが幸希はあまり食材の買い物に慣れてない。どのコーナーに行っても終始目を丸くして商品と私を観察していた。私たちは最後に、牛肉の角切り三百グラムとデザートのプリンを買ってスーパーをあとにした。

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