第五幕 選択 - 2

 最早、自分の本音に嘘をつく事はしなかった。頰を殴り、父に手を切り落とされて尚トン族の愚民に肩入れするシーリーンと、彼女が意図せずして見つめるその男に対して湧き上がるどす黒い嫉妬という感情は、ラーの心に大きな渦を巻く。そしてそれを鎮める事など、彼には不可能だった。

 自分自身は、何の特徴も持たない中流民の男。シーリーンは貴族の娘。恋仲になれると本気で考えたわけではない……つもりだった。だが実際に赤い鷹の団員としてパートナーを組んで任務をこなす内、恋慕の情は強く湧き上がっていく。しかしその本音を口に出しても冷淡に断られる事を知っていたが故に、ラーはいつも斜に構えた。

 それでも、自分が誰よりもシーリーンの傍に立っていると自負していたのに。

 シーリーン、何故その男の傍に立っている。何故そいつに寄り添い、身を委ねようとしているのだ。汚らわしいトン族の男になど。

「頭領、どういうつもりですか」

 詰問する。恐らく、彼はラーのそうした心の内を読み取っていたのだろう。きっぱりと答えた。

「お前のその心構えと主義主張は、本来あるべき赤い鷹の理念の主柱とは異なる。お前は団員としての本来の職務を全うする器ではない」

「俺の何が分かるって言うんです」

「分かるさ。……団員は皆、私の子供みたいなものだ。情念に駆られて団員を傷付けたお前は、最早我々の何もかもから離れた、別の存在になってしまった」

 その説教は、酒に溺れて体と家庭を破壊した父の昔の口調と、とても似ていた。家族を見捨てて団員となった彼の記憶が、感情を揺さぶっていく。ラーは、工房の入り口を守っていた団員を手に掛けたそのナイフを構え、床を蹴った。

 ナイフは他の誰でもない、マルクという男にその切っ先を向けていた。そのナイフを、何の躊躇も無く突如目の前に飛び出した女が止める。ボロ服を纏った半裸の女だ。ラーの腕を握るその手は、嘘の様に冷たい。

「貴族データバンクに名前がある者とその者が従える人物へ危害を与えるあらゆる外的因子の行動は、堅く禁じられています。武器を捨てて下さい」

 涼しい言葉を口にしながら、女とは思えぬ万力を込めてラーの手の動きを封じる女の腕は、微動だにしない。その隙に、シーリーン達は反対方向へと全速力で駆けていく。素手で何度も女を殴るが、痛がる素振りは全く見せない。ただ、同じ言葉を繰り返すだけだ。

 我慢ならず、もう一振りのナイフを空いてる手で抜き、刃先を女の首元に突き立て、工房前で抵抗した赤い鷹の団員にそうした様に勢い良く引いた。しかし今回、血は流れなかった。発条や歯車、その他小さなカラクリの部品が溢れ出し、女はその活動を止めたのである。

 ラーの精神状態は、それを疑問に思う余地など無かった。彼の関心はシーリーンただ一人に向けられているのだ。ラーは廊下を走り、皆が逃げた方へと向かう。

 辿り着いたのは、とても奇妙な場所だった。恐らくは工房の一番端に位置しているであろうその部屋の一角は、軌道船の発着場に似た構造をしている。加えて、そこかしこに船を整備する為のカラクリや道具らしきものが部屋を覆い尽くしていた。そんな部屋から屋外へと伸びる発着場に、三匹の魚が止まっている。魚は外殻の鱗を剥がされ、中にあるカラクリを露わにしているが、どうやら動いているらしい。カジを始め、逃亡者達はそれぞれが魚にしがみ付き、そして発着場から離れようとしている。

 その姿を見て止めた瞬間、ラーは走った。既にカジと中年の男、イェウルとその駆け落ち相手はそれぞれ魚にしがみ付き、空を飛び始めていた。桟橋には、シーリーンとその片割れが残っている。たまらず、ラーは叫んだ。

「シーリーン!」

 同時に、ナイフを投げる。「何で俺を選ばない!」

 その男よりも、ずっと良くお前を知っている。理解してやれる。傍に居てやれる。それなのに何故、その男を見ているんだ。

 ナイフは、真っ直ぐに憎むべき相手、マルクに向かっていた。ラーの絶叫に体を反応させたシーリーンは、しかし腕を切られて失血した体で即応が出来ない。

 ナイフが、マルクの右目に刺さる。瞳を壊す。ラーは、歓喜に酔いしれた。

 今度は、シーリーンが叫んだ。叫ぶとほぼ同時に彼女もナイフを投げ、喜びに体を躍らせたラーの肩を射抜く。激痛に体を捩らせながらも、尚彼は絶叫した。「何故だ!」

 答えず、ただシーリーンは拒絶し、絶叫した。

「そんな汚れた目で、私の未来を見るんじゃない!」

 言いながら、ナイフを自力で引き抜いたマルクの体を支え、シーリーンは鉤爪ロープを取り出して魚の背びれに引っ掛ける。そうして、不安定な体勢ながらもマルクの体をもしっかりと支え、魚の側面にしがみ付き、ただ魚が進むに身を任せる。

 魚に乗って逃げて、そこからどうしようというのだ、と心の中で、遠ざかるシーリーン達を蔑むラーだったが、右目を潰されたマルクは力の籠らない手つきで懐から、魚の核を取り出してラーに見せつけてみせた。


            *


 カジは、工房からの唯一の逃げ道として魚の発着場の存在に言及した。魔術師が定期的に魚から記録を抜き取り、航路や居住者の情報を更新している、その作業をする場だ。効率的な空気洗浄をする為の状況識別機能と、万が一故障が起きた際に自己、または相互修復機能が発動する仕組みが、魚の核には仕込まれている。つまり、魚が異常行動を取った場合、その周囲に魚が寄ってくるという事だ。

 マルクに指示したのは、自分がしがみ付く魚の目と鼻の先まで腕を伸ばし、所持している魚の核を乱暴に振り回す事。そうする事で、マルクの捕まる魚と周辺を泳ぐ魚は、魚の核が異常行動を起こしていると勘違いし、近付こうとする。これを操作する事で、或る程度方向を指示する事が可能なのである。端から見る分には少々滑稽な絵面であったが、最も合理的で簡単な逃走方法には違い無い。

 ゆっくりと縦穴を泳ぐ魚の横っ腹に捕まって、皆は無言だった。そびえ立つ数百階建ての居住施設から漏れる僅かな明かりが、カジ達の進む先を照らす唯一の光源である。彼らの上下十メートル先は完全に暗闇となっていて、もしも足を滑らせればその奈落の底へと真っ逆さまに落ちて行く事となる。

 空中を飛んでいるという幻想的な感覚はあまり感じる事は無く、ただ朧げな光と深い闇の対比が織りなす、生と死を彷彿とさせる淀んだ空気だけが彼らを包み込んでいる。遠くで小さく鳴る早鐘の音が、より緊迫した空気を生んでいた。

 時折カジは指示を出し、マルクに魚の核を振らせ続けた。魚はゆっくりと上昇し、やがて上層階級階層よりもずっと上の空間に辿り着こうとしている。そこは、総督府さえも眼下に見下ろす様な場所だった。光は殆ど失せ、目を凝らしてカジ達は魚を進めた。

 やがて、側壁に辿り着く。カジにとっては当然に、しかしそれ以外の者にとっては予想外に、その階段は存在した。何処から続いていたのか、側壁に沿って大きな螺旋を描く様に石が壁からせり出し、階段を作っていたのである。その終点らしき場所に、比較的広い踊り場が設けられている。当然、手摺など無い。マルクは慎重に核を操って、踊り場に魚を近付けて、シーリーンに支えられる様にして飛び降りる。タウロも、イェウルを抱き締めて飛び降りた。

 最後にカジとイシオが飛び降りる番だったが、先に飛び降りたその四人を見ながら、イシオがふと口にした。本当に、何気無い風な話し方だった。

「いいなぁ」

 その、羨望と安堵の色が混じった声に、カジは激しく同意した。

 踊り場に飛び降りたカジは、そのまま側壁内部の廊下へ足を踏み入れる。そうして遺棄居住区へと続く小道入口に置いてあったランタンに火を灯した。そんなカジに、それまで無言だったシーリーンが声を掛ける。

「頭領……助けてくれるのは、何故ですか。何故ランタンがここにあるんですか。魚の核について、どうして知っているんですか」

 責める様な話し方ではない。ただ、彼女自身も知らないカジの側面を見て、戸惑っているのだろう。無理からぬ事だった。

 暗闇が広がる細道を歩きながら、一度だけ足を止めて振り返り、カジは答えた。

「来なさい。お前達は、喜びの壁を超える資格を手にしている」



 生活に困窮して娘を売りに出した話はしたかな、とカジは訊いた。彼の数歩先を固まって歩く中で、シーリーンが「はい」と答えた。それを聞き、カジは静かに言った。

「何故困窮したかは言わなかっただろう。……妻はね、トン族の人だったんだ」

 カジは、振り返らずにただ道を進む。背後に居るシーリーン達の顔は、分からない。「君達も理解していると思う。他部族の婚姻は、当人達にして見れば決して否定されるべきものではないが、周囲の同調圧力は『異物』を排斥しようとする。変わり種を恐れ、関わろうとしなくなる。……それでも、娘は生まれてしまった」

 今でも、それが正しい事だったかは分からない。だが、十月十日を愛する伴侶の体の中で過ごし、やっと生命維持が可能な肉体を作り上げ、そして莫大な生命力の塊として娘は生まれた。その光と喜びは、何事にも代えがたいものだった。

 喜びはやがて苦しみに変わった。生活は、あまりにも苦しかった。

 骨を、肉を、内臓を。体中を引き裂かれんばかりの悲しみと共に娘を売って得た金は、二週間の食費に満たなかった。妻は間を置かず気が触れて、縦穴の底へと身を投げた。

 先代の赤い鷹頭領が彼の前に現れたのは、そんな時だった。

 リン族とトン族で結ばれた家庭が崩壊した。そんな噂話を耳にして単身、カジの家を訪れたと言った。その頭領は、何度も繰り返し謝った。君達を救う道はあったのに、と。

「赤い鷹は義賊だ。民衆の為にこそある。……分かるね」

 はい、ととても落ち着いたシーリーンの声が聞こえた。「喜びの壁という言葉を広めたのは、民衆の為をこそ思った我々赤い鷹だった。それが実在するが故に。だが、その壁を超えるには試練を経験しなければならない。……死が二人を分かつとも、という事だよ」

 苦しみ、悲しみ、絶望して。

 それでも尚、二人で進む事を選択した者達。

「赤い鷹は観察し、そんな者達だけをこの『喜びの壁』に連れてくる。それが、赤い鷹の頭領だけが代々実践して来た仕事だ」

 複雑に入り組んだ道の行き止まりにある、その重々しい鉄扉を、カジは開けた。

 ランタンの灯りが、その空間を照らし出す。面積自体はそう広くもない場所だったが、目の前には階段がある。石造りではない、鉄で出来た階段だ。垂直方向に上へ上へと伸びるその階段は、果てしない闇に飲み込まれていくかの様だった。

「これが、喜びの壁……?」

「二千メートル上に、扉がある。……新しい世界への扉だ。種族間のしがらみを超え、新しい時代を築くのに相応しいと私が判断した者だけを、送り出してきた」

 ゆっくりと語り、カジは五人を見つめた。

「残念だがご老人、貴方は……」

「分かってるよ。私は、行く気もねえ」

 達観した様にイシオが言った。「折角ここまで来たけどな」

 そんな、と言葉を失うマルクに、心痛の面持ちでカジは言い聞かせる。

「彼は、理解をした。でも、理解しただけだ。きっと、まだ憎しみを超えた和解の心は生まれていない」

「ああ。その通りさ。理屈で、理解してるだけ。……気にすんな。年寄りの役回りってのは、子供を見送る事なんだから」

 カジは、そんなイシオの言葉を噛み締めて思う。私は、この男の様に娘に言ってやる事が出来ただろうか、と。そうして、タウロとイェウルに話し掛ける。

「もう、君達の未来を阻む人間は居ない。……自由になりなさい」

 言った途端、イェウルが口を押さえてボロボロと泣き出した。それを支えるタウロも、肩を震わせる。そんな彼らを見ながら、カジは思う。

 いつ見ても、苦難を乗り越えた人間の姿は美しい、と。

 そうして次に、シーリーンとマルクを見た。「君達も、合格だ」

 この二人は、まだ戸惑いを隠せない様子である。喜ぶよりも先に、シーリーンは縋る様な目でカジを見上げる。

「わ、私は……」

「言っただろう。君の気持ちは良く分かるし、私も君以上に昔無茶をしたと」

 娘が大きくなっていれば、この子ぐらいの背格好だろうか。思いを馳せ、声が裏返らない様に努めて、言った。「君がやってきた事は、全て私もやってきた。これから、私が君のすべき事を全て引き継ごう」

 シーリーンの力無く下がる左手を、マルクが取った。彼女は振り返り、マルクを見上げる。隻眼となったその瞳で、彼は真っ直ぐにシーリーンを見ていた。

 だが、シーリーンはそっとその手を離し、言う。

「私は、行けない」


            *


 タウロとイェウルは、渡されたランタンを持って階段へ向かおうとして、足を止めていた。イシオとカジは扉の前に立ち、ただマルクとシーリーンを見ている。

 距離感の無くなってしまった視界の中、マルクは手を伸ばしてシーリーンの左手を握ろうとした。すい、と彼女は半歩身を引き、それを拒絶する。

「何で。一緒に行けないなんて」

 言葉を続けようとして、それが出来ない。どう言葉を口にしていいか分からなかった。

 シーリーンの事を深く知っているわけではない。付き合いが長いわけでもない。それでも、イェウルの純真に涙を流し、部族の差を超えて自分達を守ろうとその身を文字通り犠牲にした彼女の事を、もっと知りたかった。目の前の少女の、まだ自分が知らない事を知りたかった。

 それでも、シーリーンは言う。

「私は、やり残した事がある。貧困にあえぐ子供を助けたい。明日を憂う者は、他部族であろうと助けたいと思うようにもなった。イェウルの侍女の身が心配だ。レイシャと夫の身が不安で堪らない。父やラーとは、もっとはっきり決別の言葉と態度を示そうと思う。それらは全て、私がもっともっと前に自分でやらなければならなかった事なんだ」

 下を向いたままで、彼女は訥々と話した。「頭領に何と言って頂いても、私は私自身が望んだ事を、私自身の手で成さなければならない」

 言い返そうとしたマルクに顔を上げ、シーリーンは少し悲しげに微笑んで、言った。

「目処がついたら、きっと私も行く。民衆が力を付けて、この縦穴が隠した全ての秘密を暴く。この縦穴で自由を掴める手助けをする。だから……」

 言いながら目を閉じ、シーリーンは左腕をマルクの首に回し、自分に引き寄せた。そうして閉じた自分の右目を、マルクの潰された右目にそっと押し付ける。彼の目に激痛が走るが、離したいとは思わなかった。続けてシーリーンは、右手を無くしたその手首をマルクの胸に当てる。彼も、自然とそれを握った。

 耳元で、シーリーンが囁いた。

「いつか、貴方の目になります。だからその時は、私の手になって下さい」

 成長して現実を知って尚、真っ直ぐな瞳を捨てなかったマルク。

 貴方の存在は間違い無く、私にとっての光だから。


             *


 ゆっくりと、扉を閉める。最後までシーリーンは名残惜しそうにマルク達を見つめ、そうしてやはりゆっくり、扉を完全に閉めた。

 暗闇の中でしばし間があり、ややあってカジが予備のランタンに火を灯す。

「ご迷惑をお掛けしますな」

 カジはイシオに言った。どうにも嫌味の様に聞こえてしまい、イシオは鼻を鳴らしてカジと並んで歩く。彼の方は見ないまま口を開いた。

「ああ、迷惑だね。若くない私を散々走らせて、また帰れときたもんだ」

「喜びの壁を代々守る頭領として、価値観の変革の出来ていない方をお通しするわけには行きませんでした」

「……分かってる。まあ、行っていいと言われても行かなかっただろうしなぁ」

 え? とカジが首を傾げて聞き返した。少しだけ優越感が生まれたイシオであるが、それもすぐに消え、ただ感傷めいた気持ちが心に停滞する。

「あの子達の世代は、私らが思う様に育てようとしても、皆自分なりの判断をする。過去を見つめていながら、それでいて新しいものを見つけようと必死に足掻いてる。真っ直ぐに、自分が正しいと思う感情に従った、理想的な世界を夢見て実現させようとしてる。そんな真っ直ぐな感情には、誰もが惹かれちまうんだなぁ。嬢ちゃん達の付き人さんも、危険だってのに協力を惜しまず、味方をした。あんたの部下も」

 一息に言ってから、嘆息して言葉を締める。「私ら老人は、もう若者に席を空けてやるべきなのさ。思考も、肉体も」

 しかしその言葉に対してカジは、苦笑して言った。

「老体という程でもないでしょう。まだ、私も貴方も出来る事はある筈だ」

「そうだ。私は、もっとカラクリを作る。時計をもっと量産して、行き渡らせる。皆が、他人の鐘の音に縛られずに自由に行きられる様に。……嬢ちゃんは、どうする?」

 振り返って、シーリーンを見る。彼女は、涙と鼻水を流しながら泣きじゃくり、必死にそれを拭いていた。それを優しく見守るカジの顔は、正に愛娘を見る父親の様な表情をしている、とイシオは思った。そして泣きじゃくるシーリーンを見て彼もまた、思うのだ。

 誰かを想って流れる涙は、何と美しい事だろう、と。

 シーリーンは、答えた。

「皆に……字を、教えます。数字も……知識も。……血や部族で区別されない……誰かの為の居場所も、作ります……」

 後半はきっと、自分自身にも言い聞かせた事だろう。優しく肩を抱いて彼女を支えるカジと共に、真っ暗闇の道を戻りながら、イシオは微笑んだ。

 ランタンは彼らが歩く度、新しい道を明るく照らし出していた。


            *


 階段を、登る、登る。

 休みながら、無限永久に続きそうな階段を、マルク達は無言で登った。

 悲しみはあったが、誰かを失い掛けた、あの引き裂かれそうな絶望に比べれば些細な問題だ。

 苦しみもあったが、生きる事そのものが苦痛だった逃避行を身に染みて経験した今であれば、これからどんな苦痛が待ち受けていようと乗り越えられると思える。

 決して、楽な道ではない。だが、今までもそうだった。

 きっと、昨日よりもいい明日になる。

 そんな予感を抱きながら、悲しみも苦しみも全て抱えて受け止めて、マルク達は歩を進める。

 やがて、階段が終わる。その先にあったのは、重厚な扉だった。だがカラクリの仕掛けがあり、少し工夫するだけで扉は簡単に開く事だろう。

 マルクは、扉横にあるスイッチに手を乗せる。言葉は交わさなかったが、タウロとイェウルもそっと彼の手に自分達の手を重ねた。

 呼吸を整えて、スイッチを押す。仰々しい音を立て、ゆっくりと扉が開いていく。

 光に包まれた先の世界に、彼らは心を弾ませた。

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