第12話 猛火の刃
「さぁ、決着を着けようじゃないか。」
奴だけは…奴だけは必ず斬る!!
「お前を…許せるものか…!!」
カチャ…
「妖刀・暗夜。」
夜双は紫色に光る刀身を見せる。さっき緑姫を刺したのはこの刀か…
「行くぞ。」
ビュオオオオオ!!!
「黒旋風!!」
「ぐぁぁぁぁ!!」
「きゃあっ!!」
凄まじい暴風が刀から発せられ、僕達は強く吹き飛ばされる。
シュイン…ズドーンッ!!
「天地爆葬!!」
地面から炎を這わせて夜双に直撃させた。はずだが…
フシュー…
「オイオイ、俺に操られてた頃の力はどうした?」
「全く効かないなんて…」
いや、こんなことは以前に何回もあったはず。まだ勝機が無い訳じゃない…考えろ…!
ー街ー
「急げ酒殿!!このままでは兄妹共にやられてしまう!!」
「分かってるって!!まだ若い二人を死なせる訳にはいかない!!」
ー森林ー
「はぁ…はぁ…」
あらゆる技を試したが、夜双にはまるで全てかき消されるように効かない…私の雪女の能力も疲労で使えない…
「なぁ、妖怪退治の専門家ってこんなもんなのか?教えてくれよ。」
「くっ……」
「兄様……」
私はまだ諦めたくなかった。勝機が少しでもあるなら…まだ…!
「大丈夫…大丈夫だから…」
「んじゃ、そこの女から殺ろうかな。」
「妹達は僕が守る!!」
私に斬りかかろうとした夜双の前に兄様が立ちはだかる。
「その勇気は認めよう。だが、まだやれるって補償があるのか?」
「ある!!!」
そう言うと兄様は私の方に振り返り、こう言った…
「美子、玲子…こんなお兄ちゃんを許してくれ…」
「兄様…何を…!?」
シュイン……ボシュウッ!!!
「猛華刀……極・業火葬!!!」
今までの業火葬とは比べ物にならないほどの炎を刀身にたぎらせる…その領域は兄様全体を覆い尽くすような勢いだった…
ジャキィンッ!!!
「何っ!?」
「僕と共に……消えろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
捨て身の特攻で夜双と共に燃え行く兄様が最後、私に振り返って言ったこと…今でも私の胸に響いている……
「美子…玲子…強く…生きるんだぞ……」
「兄様ーーーーーーーーーっ!!!」
あの時、兄様が何故このような行動をとったのか直ぐには理解できなかった。しばらくしてそれが私達…妹を守るためであることを理解した。あの時はただただ、唯一の肉親である兄様を失ったことを頑なに認めたくなかったんだと思う…そして、焼けた後から見つかったのは後に形見となる兄様の「猛華刀」だった…
凛条家長男、凛条秀次
(享年16歳)
妹を守る為、決死の特攻で焼死。
彼の勇気ある行動を今ここに讃える。
次回、完結。
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