第11話 自然の忠誠
ー数日後ー
「本当に行くの?お兄ちゃん…」
「あぁ、今一度決着を着けよう。」
夜双の術から解放された僕は、夜双の計画を阻止するために決着を着けようとしていた。
「このままじゃ何もかもが夜双の思い通りになってしまう…止められるのは僕達しかいないんだ。」
「私はずっとお兄ちゃんに着いていくよ。これからも…この先も…」
「ありがとう、美子、玲子。」
僕は二人にそうお礼を言うと、夜双が動き始める夜まで待った…
ー夜の森林ー
夜の森はかなり暗いという訳でもなく、月明かりの下で微かに光があった。
「よう、しっかり来てくれたな。褒めてやる。」
「お前の目的は一体何なんだ!?この地を利用して何を企んでいる!?」
僕は夜双に単刀直入に聞いた。
「知れたこと。この地で百鬼夜行を行い、妖怪達が支配する地へと変える。それが俺の目的だ。」
「百鬼夜行…!?」
百鬼夜行…妖怪達が群れを成して地上を行進するという伝説の儀式…!!人間がそれを見ると、たちまち魂が抜かれて死亡するという……そんなことを夜双はやろうとしているのか!?
「お前の企みは僕達が止める!!」
「威勢が良いねぇ。でもまず戦うのは俺じゃない。緑姫、頼んだぞ。」
「はっ。」
横から緑の着物を着た女性が現れる。人間ではない…明らかに妖怪の気を感じる…!
「では、俺を楽しませてくれよ。」
ブゥン…
「お任せを。夜双様。」
その言葉だけを残して夜双は消えた。いや、まずは目の前の妖怪をやらねば!
「気を付けて兄様、相手は植物を操る妖怪よ。」
「分かった、玲子。」
植物か…なら炎で確実に!
シュイン…ボシュウ!!
「猛華刀、業火葬!!」
「樹術・木壁!」
メキメキメキ…
地面に手を置いていくつもの大木を地面から生やして身を守ろうという作戦だろう…でも僕の刀なら、斬ってでも前に進める!
「ていやぁぁぁぁ!!」
いくつもの大木を斬り裂いて、緑姫が見えたところで一撃浴びせる…
「樹槍!!」
ズシュッ!!
「ぐっ!?…」
何だ…!?固い木で出来た槍が僕の肩を貫いた…!?
「兄様!!」
「僕は…大丈夫だ…」
大丈夫とは言いつつも肩を押さえながらよろよろと立ち上がる。服の肩は血で一気に赤く染み上がる…
「どうです、私の樹槍の威力は。因みにですが、この槍を焼き斬っても、斬った部分から木が生えるので炎の効果はあまり効きません。」
「くっ…!」
「兄様は下がってて、次は私がやる。」
玲子が僕の前に出て、僕を守ろうとしてくれた。
「ごめん…玲子…こんなお兄ちゃんで…」
「兄様は頑張ってくれた…だから今度は私が…!」
ヒュオオオオ……
「なるほど、いきなり本領発揮ですか。」
「兄様を傷付けた怒り…思い知れ…!!」
ここまで玲子が感情的になるとは……
「氷刀…」
バッ!!
「雪花氷輪。」
ガキガキガキ…パキィン!!
「ぬっ……」
ダメージは浅いが、確実に通っている!
「夜双様の為に、負けるわけには…」
「あなたは何でそこまでしてあの男に尽くすの…?あなたならあの男の計画は知ってるはず…」
「あの方の為になるなら私は何でも…そう誓ったのです。」
「それじゃあ自分が死んでも良いって言うの!?」
「私は夜双様の為なら死んでも本望ッ!!例えあの方に殺されてでもッ!!」
もはやこれは忠誠などではない…!!ただの狂信者だ!!
「へぇー…じゃあ殺してやろうか。」
ザクッ…!!
「なっ…!?」
「夜双…様…?」
緑姫を後ろから刺したのは、紛れもなく彼女が絶対的に忠誠を誓っていた夜双だった。しかも平然と自分の仲間を刺すなんて…!?
「何てことを!!緑姫はあなたに忠誠を誓っていたのに!!」
「誓っていたから俺に好き勝手しても良いと言ったのはこいつだ。間違ったこと言ってるか?」
「お前だけは……!!」
無慈悲に殺され地に伏せる緑姫の顔は分からない…だけど、仲間を平然と斬り捨てるのは僕としても許せない!!
「良いねぇ。その表情…嫌いじゃないぜ。」
続く。
告予回次
「さぁ、決着を着けようじゃないか。」
「お前を…許せるものか…!!」
「妹達は僕が守る!!」
次回「猛火の刃」
「美子、玲子…こんなお兄ちゃんを許してくれ……」
「兄様ーーーーーーーーーっ!!!」
ー次回、衝撃のクライマックスー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます