第6話 冷たき子(後編)

「はぁ…はぁ…」

どうにか街に戻った私はこれからどうしようか玲子ちゃんと相談しようとしているところだった。

「玲子ちゃん…お願い…」

目を瞑り、心の中で玲子ちゃんと二人で話をする…



「玲子ちゃん、本当に雪女のところに戻るの…?」

「それは……」

玲子ちゃんはさっき聞いたことに戸惑いがあるようだった。

「ねぇ美子…あなたは私の前世が妖怪でも私と一緒にいてくれる…?」

「もちろんだよ!玲子ちゃんは玲子ちゃん…それだけだよ!」

「あなたらしい答えね…ありがとう。じゃあ、兄様を助けに行きましょう。」

「うん!私達でお兄ちゃんを助けよう!」



元の私に戻って覚悟を決めた。お兄ちゃんを助け出してまた三人一緒の毎日を過ごすんだと……


ー翌日ー


「雫……」

「さぁ、答えを聞かせて頂戴?玲子を渡すのか、それとも凍りづけにされるか…」

「全力で抵抗して、お兄ちゃんを返してもらう!」

「フフ…面白い答えね。じゃあ私もそれに答えなきゃ。」

「玲子ちゃん…お願い!」

カチャン…

スッと刀を抜刀して玲子ちゃんの人格を呼び起こす。それと同時に私の意識は心の中に仕舞われた。

「分かってるわ、美子。私達で兄様を取り返しましょう。」

今頼れるのは自分と美子だけ…これで決着をつける!!

「妖刀・氷雪花、冬原百草!!」

バシュバシュ!!

高速で抜刀された刀から放たれる氷の斬撃を難なく弾きながら私は一気に近づいた。

「蝶月輪…」

シュバッ!!

「月花閃。」

ガチガチ……

「なっ…!?」

刀が凍っている…!?

「速いけど、惜しいわね。すれ違う瞬間に刀を触れさせて正解みたい。」

「くっ……」

妖刀に触れたら一瞬で凍らされるか…でも私の刃はまだ、折れた訳じゃない!!

ビュンッ!!

「月ノ美兎…!!」

高く跳躍した上空から一気に刀を降り下ろす。これを食らえば流石の雪女でも…!

ガキィン!!

「氷壁…」

「攻撃が全部防がれてる!?」

どこから攻めても隙が無い…一体どうすれば…!?

「所詮この程度。私を倒したとしても、前世が妖怪だと知ってあの男が妹だと認めてくれると思う?」

「たとえ前世が妖怪でも!!私は兄様の妹よ!!」

ピキッ…

何…?この感覚…まるで新しい力に目覚めるような……

シュオッ…

「手が冷たく…?」

あの時羅刹を倒した後の現象と同じだ。前世の記憶が戻った衝動で雪女と同じ能力が…?

『玲子ちゃん、今はこれで戦うしかないよ!』

心の中で美子がそう叫ぶ。…分かった、そう言うならやるしかない!!

ガチガチ……

刀に手を這わせて一気に絶対零度の温度へと下げる。

カチャン。

「力を得たところで、それが何だって言うの!?」

「あなたには分からないわ。この冷気は悪を断ち切る冷気…あなたの冷気とは違う。」

いつもの居合いの態勢となり、溜めを始める。

「なら…その冷気ごとあなたを粉砕してあげる!!」

そんな脅しに目もくれず、居合いの態勢をし続ける。

「氷刀……」

スッ…カチャン…

「雪花氷輪。」

目にも止まらぬ速さで抜刀を行い、その絶対零度の冷気による刀で居合いを放つ…この場で生み出された私の新しい技だ。

「もう…あなたは私のことを「姉」として見てはくれないのね…」

今ので大きな傷を負いながらも尚私の元へと歩んで来る雫。その悲しみに溢れた顔は、まるで家族を失ったかのように思えた…

「これ以上…人間を傷つけるのはやめて…姉様……」

「あぁ、やっと私のこと「姉様」って呼んでくれた…嬉しいわ…これでやっと私は成仏でき…」

言葉が言い終わるか、終わらないうちに雫は光の粒となって天に消えてしまった。そして…いつの間にか私の頬には一筋の涙が伝っていた…

「うっ、玲…子…?」

「兄様っ!!」

傷が癒えて目を覚ました兄様に私は思いきり抱きついた。また家族三人でいられるのが嬉しい…今はただそれだけのこと……

「二人で良く頑張ったな…ありがとう。」

「兄様…私の前世が妖怪でも、私を…妹として認めてくれる…?」

「当たり前だよ。玲子も美子も僕の妹で家族だ。」

抱き返してくれた兄様の懐で私は一言、こう呟いた…

「大好き…兄様。」

続く。



告予回次

「是非、わたくしの為に可愛い妖怪をご用意してくださいまし!」


「可愛い妖怪か……」


「嫌じゃぁぁぁ!!!妾はそんな外道の元へと行かぬぞぉぉぉぉ!!!」

次回「妖怪と令嬢」

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