第4話 歴史に刻む

パサッ。

今は朝の7時くらい。朝に届いた新聞を机の上に広げると、気になる記事が目に飛び込んできた。

「通り魔多数…夜のひとり歩きには気を付けろ…」

その記事は連続通り魔事件の内容を書いたものだった。だが記事によると「遺体は完全に焼失された状態で見つかっている」と書かれている。

「おはよぉ…お兄ちゃん…どうしたの?」

「美子、この新聞の記事を見て。」

僕は美子にも通り魔事件の記事を見せた。

「うーん…通り魔するだけなら、わざわざ遺体を焼失させる意味あるのかな?証拠隠滅にしても完全に隠しきれてないし…」

「だとすると…妖怪が暗躍しているのか…?」

そもそも夜の道端で遺体を完全に焼失するにも時間がかかる…それならその間に目撃した人も少なからずいるはずだ。ここまでを短時間で出来るならば妖怪だけしかいないだろう。

「美子、今日は営業を休もう。この事件の犯人は妖怪で間違いない。ここは僕達の出番だ。」

「分かった。今回は私達から事件を解決しに行こう!」

机の上に「営業休み」と書かれた札を出して、ひたすらに夜を待った。夜になればこの街の近辺に妖怪が現れるに違いない…


ーその夜ー


「一応事件があったのはこの場所だ。」

通り魔が起こった通りを確認した。屋台などが並ぶ一本道だった。調査を始めようとしたその時…

「だ、誰か!!助けてくれ!!」

後ろの方向から男性の叫び声が聞こえた。もしやこれは…出たか!?

「行こう美子!」

「うん!」

走っていくと段々男性の姿が見えてくる…男性は忍者のような格好をした男に襲われそうになっていた。

「待て!!」

「むっ……」

美子は男性を逃がして、僕は男と対峙する。

「お前が、連続通り魔事件の犯人か!?」

「そう。俺が通り魔事件を引き起こしてる張本人だ。」

否定する訳でもなくあっさりと自分が犯人だと認めた…!?よほど自身があると言うのか…!?

「お前は…何者なんだ…?」

正体を聞くと、男は隠していた顔をさらけ出した。その顔は般若のような面構えをした鬼の顔だった。

「俺は「羅刹(らせつ)」。殺生を生業とする一族の妖怪だ。」

羅刹…炎を操る妖怪の一種であり、夜に忍んで現れては人々を惨殺するという妖怪…!!まさかこの時代にも潜んでいたなんて…!!

「お前の目的は何だ!!ここまで人を殺害して…一体何のために!!」

「俺は一族の歴史に伝説を残すッ!!羅刹の一族として、俺がやるべきことだッ!!」

「人を殺す伝説なんて…そんなの犯罪者と変わらない!!」

刀を引き抜き、戦闘態勢へと入る。

「これ以上の被害は許されない…今ここでやろう!玲子!」

「分かってるわ、兄様。」

「お前達を殺せば…俺は喜んで歴史に刻まれる!!」

逆手に持った日本刀を構え、素早い動きを繰り出す。

シュシュッ……

「消えた!?」

シュバッ!

「一瞬で殺ってやる。」

ガキィン!!

僕の後ろに回り込んできた羅刹を玲子が止めてくれた…

「チッ…横槍を食らったか…」

「兄様を傷つけはさせない。」

バッ…

「ありがとう、玲子。」

「礼には及ばないわ。」

ボシュウ!!

「火遁・妖火ノ太刀…」

「僕と同じように炎を…!?」

いや…羅刹の刀に纏っている炎は妖気を込めた炎…!僕が発火させる炎とは比にならない!

シュイン…ズドドドーン!!

「天地爆葬!!」

「ぐっ…」

天地爆葬の爆発を食らってはいるが、まだ浅い…もっと決定打になる攻撃をしなければ!!

「せいッ!!」

ガキィン!!

僕が羅刹と切り伏せている間に玲子がお返しとばかりに背後から居合い斬りを放とうとするが…

ササッ…

「腕は立つようだが、単調な居合いだ。」

ドガッ!!

「うぐっ!!」

「玲子ーーー!!!」

居合い斬りを避けられ、即座に蹴りを入れられた玲子は膝をついてしまった。

「これで一人やられたな。さて、残ったお前はどうする?このまま俺に斬られるか、それとも…抵抗するかッ!!」

「僕は全力で抵抗する!!玲子をやったお前は…許せない!!」

シュイン…ボシュウ!!

「猛華刀…業火葬!!」

ダメだ…こんな弱い炎じゃ羅刹は倒せない!!もっとだ…もっと…僕の炎を!!

ボシュウッ!!!

「何だ…この炎の力は!?」

何故これほど炎が大きくなったかは僕にも分からない…だけど、これなら羅刹を倒せる!!

「はぁぁぁ……」

「クソッ!!」

「でいやぁぁぁぁぁぁ!!!」

ボシュッ!!ジャキィン!!

「一族の伝説は…まだ…終わってなど……ない……」

カチャン。

無事羅刹を倒し、刀を仕舞った僕は即座に玲子の元へと駆け寄った。

「大丈夫か!玲子!」

「…お兄…ちゃん?」

目を開けた時には既に美子の人格に戻っていた。何はともあれ、美子も玲子も無事なようだ。なのだが……

「何か美子の手、冷たくないか…?」

美子の手に触れた時、異常な冷たさを感じた…今の季節は冬ではないのに、何故か美子の手は冬の気温のような冷たさだ。

「本当だ…でも何でだろう…?」

このことに関しては美子も知らない…でもこの時の僕は知るよしも無かった。この何気ないことが、玲子の「ある秘密」を呼び覚ますことになるなんて……

続く。



告予回次


ー氷の少女編開幕ー


「美子、この前のことについて玲子と話したいことがあるんだ。」


「村一つが…雪に覆われた…!?」


「私はこの光景をどこかで……?」

次回「冷たき子(前編)」


「そんな…玲子が…」

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